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5①


 萌さんは居酒屋で朝まで働いている。バイトが終わってすぐ僕に会いに来る気力なんてあるのだろうか? 恋人なら頑張れるかもしれないけど、彼女にとって僕は星の数ほどいるだろう友達の一人にすぎない。期待しないで待っていたら朝5時10分に呼び鈴が鳴った。

 僕はオーソドックスにTシャツにハーフパンツ。彼女は例によってアスルヴェーラのユニフォーム姿。いつでも走れるぜと言われて驚いた。

 「応援に来てくれたんじゃなかったの?」

 「なんで推しでも恋人でもない男を応援しないといけないんだ?」

 身も蓋もないとはこのことだ。そろそろ許してやろうかなという気持ちが粉々に砕け散った。

 「アスルヴェーラが最下位の今こそサポーターとしてともに戦わなければならないからな」

 なるほど、それで走りたいと思ったわけか。君が頑張ってもアスルヴェーラの勝敗には無関係だよ、なんて正論は言わない。どんな理由でもそれで頑張れるならそれが正解なのだ。生徒のやる気を引き出そうといつも四苦八苦している僕ら学校の教員はたいていそういう考え方のはずだ。正論なんてくそ食らえだ!

 沼津アルプス最北端、市街地にほど近い香貫山(かぬきやま)の標高は193m。ランニングコースは自宅から香貫山山頂そばの展望台までの往復。距離は往復で約6km。それを僕は毎朝40分ほどで走っている。

 「大丈夫?」

 「中学も高校も通知表は2ばっかだったけど、体育だけはいつも5だったんだ。あたしはコースを知らないからシン君についていくしかないんだから、トロトロ走ってあたしをイライラさせないでくれよ」

 通知表が2ばかりねえ……

 ドヤ顔されたけど、きっとヤンキーの世界では勉強ができる方が恥とされているのだろう。

 アパートには一部屋につき駐車スペースも一台分割り当てられている。運転免許を持ってない僕はずっとそれを無駄にしてきたけど、萌さんのワンボックスが駐まっているのを見るとそれだけでうれしくなる。ただ、ランニング中に車上荒らしに遭う危険もあるので、萌さんの荷物は僕の部屋の中に置いておくようにさせた。


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