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ネガティブな毒

「ん〜」

四時間目の授業が終わって一気に伸びをする。

上に上がった手を後ろの方に一気に下げられた。

「痛い、痛いwカンベイしてください」

そういうと、簡単に話してくれたから多分菜奈(なな)だ。

「どう?マイチー、気持ちよかった?」

「気持ちよかったなら最初に痛いなんて言わねぇよ!」

「確かにw」

今話してる菜奈の特徴はモテる事だ。

とにかくモテる。

多分菜奈がこの学校で一番モテるってぐらいモテる。

身長は小柄で髪型はツインテールがデフォルトだ。

やっぱりツインテールが一番可愛いのかな?

そんな事を考えながら教室にかかってる時計を見ると12時30分だった。

「あっもうお昼の時間か」

「そうだよ!手洗いに行こ!彩花も紬も待ってるよー」

そう言ってバッグハグをしてくる。

距離が近いと思う陰キャさんもいるとは思うがクラスの頂点に立っている陽キャグループの距離感はそんなもんだ。

自分はバッグハグされたまま、教室の扉の近くで待っている彩花たちの方へ行く。

ほぼおんぶ状態だったが足を抱えてはいなかったので彩花たちの所についたぐらいのときに菜奈頑張ってあげてたの足が地面についた。

それなのに菜奈は首に絡めている腕を離さない。

「首がー、死ぬ」

わざとカッスカスの声で言ってみた。

「やめて!私のまいまいが死んじゃうでしょ」

彩花がふざけながら抱きついてきた。

あ、これ本当に死ぬ。



お昼の時間になった。

今日は陸上部の朝練があったから先輩とお話してない。

寂しいなー。

机に倒れ込んで手を前の方に伸ばす。

「ちょっと、当たってますわ」

伸ばした手がお嬢に当たってたみたいだ。

お嬢と私は同じ1の2でお嬢は私の前の席だ。

「どうしたのですか?」

「聞いてーお嬢、まだ今日一回も先輩と話してないのー」

「おはようぐらい言っていけば良かったですのに」

「そうなんだけどさ、起こしたらダメかなって思ってー」

まだ体制を変えずにお嬢と話す。

手が邪魔なのかチョクチョク指先を触ってくる。

地味にくすぐったい。

(わたくし)が部活に入ったあげたのですから、もう少し頑張って欲しいもんですわ」

流石に呼吸しにくくて顔を上げる。

「それはありがとうだけどさ」

お嬢が弓道部に入った理由は実は私が頼んだからだ。

お嬢には好きな人がいるということを告白する前からすでに伝えている。

そして協力もさせている。

いつも本当にありがとうございます。

「ほら、購買に行きますわよ」

そういって手をさっきまで軽く触っていた手を今度はぎゅっと握り私の事を引っ張ってきた。

「行くか〜」

ご飯を買いに行かないともちろん無いので渋々立ち上がる。

「そういえば(かい)蒼羽(そら)は?」

いつも私はお嬢と海と蒼羽と一緒にいる。

男女2人ずつのバランスの良いグループだ。

「あいつらはどっちも補修ですわ」

「蒼羽も?」

「そうですわ」

「めずらし」


購買までは少し道のりがあるのでお嬢が手を引っ張ってそこまで運んでくれる。

私が落ち込んでいるときはいつもこうやってお世話してくれる。

今も引っ張ってくれているところを見ると可愛いなって思う。

購買につくと、混んではいたが少し遅れて教室を出たのでいつもより人はいなかった。

先輩に会いたい。

そんな事を思いながらお嬢におんぶしてもらう。

「重いですわ」

「軽い方なんですけど」

おんぶと言ってもバックハグをしているようなものだ。

足はついているし、私のほうが身長が大きいので首を絞める心配がないから思いっきりもたれかかる。

1つのパンを見てお嬢に見えるように指を指す。

「あれ、食べたい」

「わかりましたわ、(わたくし)買いに行って来ますのでこの腕を離して、隅の方へ待っていてくださります?」

「ありがと」

そう言って私は腕を外して購買から少し離れた場所まで移動する。

こうやって考えるどっちがお嬢様かわからなくなってくる。

壁にもたれかかって天井を見つめる。

今日の先輩に振られるかもしれないんだって考える。

言いたいことや、やりたいこと、知ってほしいことが先輩にはまだまだある。

押し倒したりしたんだ。

これで振られたら結構悲しいな。

計画が一気にうまくいかなくなる。

天井を見ていた視線はいつしか足下を見ている。

振られてもうまく表情作れるかなとか、泣いちゃったりしないかなとか不安なことばかりが頭から降りてくる。

泣いちゃうのは嫌だな。

だってブスになっちゃうもん。

下を向いていただけの体はしゃがみ込んでいた。

「最悪」

1つの疑問がいつしか毒に変わってく。

体が蝕まれるような、そんな感じがして気持ち悪い。

「早く戻ってきてよ、お嬢様」

弱音が口からこぼれてしまうぐらい、私って弱虫なんだなと痛感する。

まだ振られたわけでもなくて、ちゃんと知り合って3日目なのに。

「本当に最悪」

そんなときに声が聞こえた。

「大丈夫そ?」

思わず唇を噛みしめる。

今じゃない、ついさっきなら、死ぬほど会いたかった人。

2秒待って、2秒でいい、そしたら話せるから。

1,2と自分の中で考えて、ギュッと目をつぶり勢いよく顔を上げた。

「心配してくれてありがとうございます、先輩!」

先輩は立って私のことに声をかけてくれたのかと思っていたからびっくりした。

先輩はしゃがんで私と目が合うようにして、声をかけてくれていた。

顔が近くて少しドキドキする。

「先輩?」

先輩の心配に返答をしたのに先輩は私に返事をしてくれない。

「後輩さ、、、」

そう言いかけて先輩は立ち上がって言った。

「今日のご飯自分が作ってあげるよ」

先輩の顔はいつもよりかっこよく見えた。

「楽しみにしてます!」

先輩は私の言葉を聞いて3年の教室の方に歩いていった。

そうやって気づかないでいてくれる所も大好きですよ、先輩。

立ち上がって、またお嬢様を待つ。

ひまりが振られるわけないでしょと自分のことを肯定しながら。

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