バカみたいな運命
誰かの特別に慣れたらどれだけ幸せなことだろう。
この世界では女子が男子の特別になるために生きている。
特別と言っても運命と呼ばれるものととあんまり変わらない。
ただ女子は誰かの特別になると1st胸が締め付けられる(定期的)2nd幸せになる3rd死ぬと言われている。
詳しく言うと1stは運命感じた瞬間、胸がドキドキして苦しくなるらしい。
2ndは人によるが付き合うor結婚したときらしい、心が温かくなって頭がふわふわすると言われている。
3rdはその人とキスをしたときだ。
原理はわかってないが幸せのキャパーオーバー?になってキスした奴らどっちも死んでしまうらしい。
女子はこれをしないと死ねなくて誰の特別にもなれなかった女の死ぬ手段は殺されるか自殺しかない。
歳を取ってもキスすれば死ねるけど死ぬが若い方が結ばれやすかったりする。
しかも男はキスして死ななくても寿命で死ぬ。
ひどい思いして死にたくないため女子は若いうちに男の特別になるために運命を求め、男を魅了するための努力をする。
一軒家の1番奥の部屋のドアには舞の部屋と書かれたプレートがぶら下がっている。
「今日もビジュよ」
鏡の前で髪を巻きながら独り言を呟いた。
156cmの僕の腰上まである長い黒髪だけど濃い青色のインナーを入れているからか少し傷んできた。
こう見ると清楚系というよりギャルって感じの分類だ。
ピアスも開いてるし。
お気に入りのチョーカーだってつけてる。
誰かの特別になるために今日も生きる。
学校に行く道を自分の体にしては大きいスクールバッグを左肩にかけて歩く。
中学校に入学して約1年と数ヶ月、特に運命を感じるような人はいない。
というか運命ってこの人のためなら何でもできるみたいな感じらしいけど普通に考えてそんなことあるわけないじゃん。
だって自分が一番大切だし自分が一番可愛い。
だからそんなことあるわけない。
ある時から自分はずっとそう思ってる。
教室で友達とお弁当を食べている最中だ。
「ねぇ聞いて!最近ある人に運命感じちゃったんだよね」
自分を含んだ4人の中の1人がそう言った。
この手の話題は苦手だ。
苦手な話題だからっていつもなら普通にはなすことができるが今日はなんだか無理そうだ。
どうにかして抜け出すか。
「ごめん!そういえば自分弓道部の集まりがあるの忘れてた」
両手を自分の前で合わせ、勢いよく立ち上がる。
「も〜マイチー、またー?」
グループのさっきとは違う友達が言った。
この学校で多分1番モテるやつだ。
「だからごめんって!授業始まるまでに3人分のレインボーブルーム買ってくるから」
そういうとほっぺをぷくーっとしていた友達も口元が晴れ始めた。
レインボーブルームっていうジュース毎回買ってけど本当に美味しいのか?、、、
そんな事を思いながらも舞は教室を出た。
結局ここに避難してきたちゃった。
外だけど季節が相待って日が当たっていても暑いより寒いが勝つ。
周りには木やベンチがあるから暇を潰すのにはちょうどいい。
正直さっきは部活の話を出したけど今日は弓道部の集まりも活動もない。
どうしようかと考えながら中庭をぼーっと歩いている。
すると目の前で水色の四つ折りに折られたハンカチが落ちていくのが目に入った。
ハンカチを拾い上げ、頭を上げると茶髪で髪が全体的にカールしてる自分より少し身長の小さい女の人が前を歩いていた。
その人を走って追いかけた。
「ハンカチ落としましたか?」
そう話しかけ、ハンカチをその人が見えやすいように前に出す。
話しかけた人は一発で声が届いたのかすぐに振り返ってくれた。
自分はその人のことをひと目見てきれいだと思った。
その人はハンカチを見るとハンカチを持っている手を両手で握って喋りだした。
「ありがとうございます!このハンカチはとても大事なもので、本当にありがとうございます!」
その人にハンカチを渡した。
「大丈夫だよー」
ハンカチを受け取った後、その人はこっちをむいてぺこっとお辞儀をし、またさっきの方向に体を向けて歩いていった。
いやー自分ほどじゃないけどあんなにきれいな人がいるなんて。
「あの、、、」
何か後ろから声が聞こえた気がするが、もう少し女の人を見ていたかったのでスルーした。
それにしてもなんであんなにキレイなんだ。
「あの、すいません」
やっぱりもう一段落高い美容液に変えようかな。
「あの!すいません」
そろそろ無視できなさそうなので自分は振り向いた。
自分のことを呼んでいた人は髪が短くサラサラで全体がパステルカラーの黄色のような髪色にデカ目の白色のリボンがついた髪ゴムでハーフアップをしていた。
髪型がハーフアップなのはかわいいな。
身長は自分より14cm高いぐらいだろうか?
なぜだろうこの人を見ていると少しというかどんどん胸が痛くなってくる。
さっきまではこんな事なかったのに。
ちょっと待って意味わかんない。
なんで。
とりあえず止まれ止まれ。
そんなことを思っていると自分は倒れてしまった。
最後の意識が途切れる瞬間で声だけが聞こえた。
「あの!大丈夫ですか!」
「うる、、さ、ぃ」
そこで意識が途切れた。
目が覚めると保健室のベットで寝ていた。
起き上がると隣で椅子に座っているサラサラ髪のやつが寝ていた。
「おい、起きろよ」
そういってすこしつつくとその人は起きた。
「あっあ、あの、た、たったっ体温計持ってきますね!」
そういってベットを囲うカーテンから出ていってすぐに戻ってきた。
「先輩これ使ってください」
「あ、ありがと」
そう言って体温計を受け取り自分の制服のボタンを上から3つぐらい開け体温計を脇の部分に指した。
「なんで後ろ向いてるの?」
体温計を渡してくれた後輩の方を見ると体ごと自分とは反対方向に向けていた。
「なんでもないです」
「そ、そう?」
そんな会話をしていると体温計がピピピ、ピピピとなると左脇の体温計を抜き自分の体温を確認した。
「まぁこれくらいなら」そんな独り言言うと後輩はあっちを向いたまま腕だけこっちに向けて言った。
「体温見せてください」
別にいっかと思い体温計を渡す。
後輩が体温を確認している間に服のボタンを付けているとすごい勢いでこっちを向いた。
「39度ですよ!なんで来たんですか!?」
いや熱だって知らなかったし。
「大丈夫かなって思っちゃって」
知らなかったなんて言ったらなんかゴチャゴチャ言われそうだったから軽い嘘を付く。
てか熱ってことはさっきの動機も熱のせいだったのかな。
そうだよ、そうしよう。
自分の中で納得して時間を確認するともうすぐで授業が始まりそうな時間だった。
「えっと、心配してくれてありがとう!もうすぐ授業始まっちゃうから教室戻っても大丈夫だよ」
できるだけ優しい口調にして言うとすぐに「サボります」とマイナスな返事が帰ってきた。
こういうときはなんか適当に話をそらして、、もう一回授業に行かせようとしてみるか。
名付けて一階話しを逸らしてみる作戦。
「そういえばさっき自分になんかいいかけてなかった?」
あの時、自分が倒れてしまったので聞きそびれていたがなにか言おうとしていた気がする。
そう聞くと後輩は顔を赤らめてどうしよっかな〜みたいな表情をしていた。
なんなんだこの人。
するとふわふわは自分の肩に手を置き急に押し倒してきた。
そして耳近くに後輩の左手を付き、右手で自分の左手を掴みながら僕の頭の上ら辺に押し付けこう言った。
「ひまを殺してくれませんか?」
「え、、、あの、今殺してくれって言いましたか?」
「はい」
意味がわからないが後輩は純粋な眼差しでこっちを向いてくるのでもう作戦なんて無視して一回今日は家に帰ることにした。
暫く話してと押し倒されてる状態を考えて一つわかったことがある。
多分この人は関わっちゃいけないタイプの人だ。
だって普通出会って1時間も経ってない人のこと押し倒さないもん
「うんうん、なるほどね」
とりあえず相槌をうっておいてこのまま続ける。
「じゃあ自分は今日はもう帰るね、君には悪いけど先生に伝えておいて」
そう言い自分は押し付けられている手を解こうとした。
でもなかなか力が強くて解けない。
どうしよっかなと思っていると後輩は押し付けていた手を解き体勢を起こして自分に対して馬乗りの形になった。
自分も体勢を直したいが後輩が上に乗っているせいで直せない。
今どいてくれる流れじゃなかった?
そんな事を思いながら見ていると後輩は口を開いた。
「私も帰るんで一緒に帰ります」
「は?」
やばい、素のリアクションしちゃった。
まぁでも今はこんなこと気にしてる場合ではない。
「帰るって?まだ午後の授業あるけど大丈夫そ?」
「大丈夫です!先輩のことを先生に伝えに行った時に私も帰ると伝えたので帰れます!」
「う、、、わかっ、た」
色々言いたい事はあったがもうめんどくさかったので一緒に帰ることにし、承認の返事をすると後輩はやっと自分の上からどいてくれた。
自分はベットの上から降り、上履きを履いて荷物を持って保健室のドアを開ける。
先に後輩を通してドアを閉め、下駄箱までいっしょに歩き始める。
「先輩!荷物持ちますよ!」
「お前何年?」
もう素とかそういうのどうでもいいや。
「私は一年です!」
「あーね」
せっかくだから荷物を持ってもらった。