『有国、道隆に官職を奪われ、国平、関白別当として速記者束ねること』速記談2069
関白藤原兼家公が、関白職を、御子息のどなたに譲られるべきか、周囲に意見をお聞きになった。蔵人頭藤原有国は、御次男道兼卿がよろしいでしょう、と、花山院御出家のことを踏まえてか、申し上げた。内蔵頭平惟仲は、御兄弟の順に従い、道隆公がよろしいでしょう、と申し上げた。関白政所別当多米国平は、どうして兄を捨てて弟をとるなどということがありましょうか、と申し上げた。ちなみに関白政所別当とは、関白の秘書の頭のような役職で、速記なんかもそれはもう、あれである。関白殿下は、惟仲と国平の意見をもって、道隆公に関白職をお譲りになった。
関白となった道隆公は、私が関白になったのは、嫡男だからであって、当然のことである。喜ぶべきことでも何でもない。ただ、有国が道兼を立てようとしたのは許しがたい、とおっしゃって、有国ばかりか、子の貞嗣もほどなく免職された。
道隆公が薨去されて後、有国は大宰大弐に任じられ、大宰権帥に任じられた伊周公が配流あそばされたときには、丁重にお世話申し上げたという。
教訓:人事に私情を挟む者に大人物はない。