無題
やばい
眼の前で惨劇が起きるのは見慣れているが、それは魔物であって人ではない
人と魔物の違いは面倒事が多いのが人で魔物は特に問題ないとされていることぐらいである。グラグラと沸騰するお湯のように怒気を滾らせている養子たちを見てため息が出る
「おやめ。負け犬がどんなにキャンキャン吠えようと現状は変わらないし。噛みつかれたって痛くもも痒くもないだろうに」面倒だとため息とともに私に八つ当たりをしてきた最近注目されつつある駆け出しのチームを見る
「さあ、かえるよ。子犬がキャンキャン騒ぐのに関わるのは馬鹿らしいし、そんなことに関わるくらいならゆっくり茶を飲みながら次の話をしようじゃないか」そう言って彼らを置いて歩きだすと慌てて弟のほうが後を追ってくる足音がする。兄の方は渋々だが後ろをついてくる感じがするので引き離すことができたのだろう
自分たちよりも報酬がいいのは間違いだとか言って食って掛かってきたが、そもそも報酬になる部分がボロボロとか査定ができないくらい細切れだとかそれは査定価格が落ちるのは当たり前だ
それに関して説明しても納得できないなら駆け出しチームが問題であるし。そもそもそういう説明をしてから買い取りするもんだろう?やっかみをもたせるような説明をしているならそれは店の責任である。問題を起こさせようとするなら店を変えるか。などと思いながらちょいちょい出店で買い物をしつつ宿へ向かって歩く
養子たちもそれに習い後ろで楽しげに何を買うかと話をしながら買い物をしている様子で、兄も弟も機嫌が直っているようだ
養子たちは魔法も武術も私より才能があり
触りを教えて練習させたらすぐに使えるようになった。弟はちょっと手間取ったようだが、兄が丁寧にに教えて数場を踏めば誰よりもうまくなったのだから。十分才能がある
私よりできるだろうし独り立ちしてもいいと言っているが、どちらも
「家族は一緒がいいと」離れたがらないので一緒にいる
宿に戻り荷物をまとめて出る、程々に街から離れたところに出る。後ろをつけられている感じがあるが、特に問題ないだろう。
小腹が空いたのかシャリシャリと採取して売却していなかったりんごを食べている弟ともぐもぐと同じ様に焼き鳥を食べている兄。それうまい?等と言いながらお互いに食べているものを共有しているのはいつものことである
「さあ、かえるよ」そう言って自分を含む二人の足元に発動するのは転送陣
すでに目的地は指定しているので問題ない。ふわっと足元から照らされていつも以上にキラキラして見える兄弟は離れないようにお互いを抱きしめている。弟が一度ドジって違う転送中にはぐれたことが合った。それ以来ぎゅっと抱きしめ合うのが癖になっているので仕方がないといえば仕方がない
誰の邪魔をされるわけでもなく目標地点に打ち込んでいるアンカーに無事に転送されるとほっと下した顔つきになる兄弟たちを気にせずに眼の前の我が家に入っていく
昔、養子たちを拾うちょっと前に相棒の愛犬とともに討伐に参加した報酬として荒れ地を国からもらった。
私の物となった土地に家を立て。暇なときに土地を耕し手入れをして野菜が育つ土地に戻し野菜や果物がなる木を植えた。
無論、防風林などの役目もある木も植えているが、大部分は薬効があるものや食べられるものが取れるものを植えている。
目を楽しむために花も植えているが、それらも許可なきものが入ろうとするとトゲが肥大化して剣のようになる種類のものだ
誰も出迎えることがない家であるが一応帰宅の挨拶をし入口にある魔力を伝達する板に手を置きほんの少しの魔力を流せば室内灯が灯る
外套を脱ぎ、玄関につけている外套掛けにかけ手を洗い居間の方へ。兄弟たちはお互いに帰宅の挨拶であるキスを後ろでし合っている
コンロに火を付け薬缶をかける。簡易の食事をと思って棚を開け乾燥野菜と乾燥肉を取り出し雑多に水とともに鍋に入れて薬缶の隣において日をつけ煮る。同じ様に居間に来た兄弟たちは弟が風呂にお湯を張りに行き兄は今日の報酬を確認している。お金のことはちょっとよくわからないので、そこら辺が強い兄の方に金庫番をお願いしている
土地で畑を耕し野菜などは自分たちの食べる分は収穫できるので、頻回には外に出向かなくてもいいが、本や生活に必要なものを得るために外に行くし外貨を獲得するために討伐を受けることもある。今日もそのために出てきたのだ
1週間ほど近隣の討伐などをして外貨を稼いで、さあ帰ろうかというところで
ギャンギャンと八つ当たりをされたが、自分たちより出来がいいほうが悪いということがよくわからない思考回路だなと思いつつ乾燥野菜と乾燥肉が柔らかくなり。適当に味付けをしたスープができた。
弟はパンが苦手なので、ライスをスープに入れてリゾットのような感じになっている。付け合せに出店で購入した肉やら魚やらを皿に盛り付けて出す。
すでにお湯を張り料理を作っている間に兄に丸洗いされてこざっぱりした弟と同じくこざっぱりした兄がテーブルに付いているのを確認。
「ご飯にしようか」そう言って食事を摂る
拾ったときは部屋の隅で団子になってこちらを警戒して食事を取っていた兄弟たちもテーブルに付きゆっくり落ち着いた様子で食事を摂るようになったなと思いつつ今日の討伐に関しての話もしながら食事を進めいていく。デザートのりんごを食べ終わり茶を飲みながらほっと一息ついてから風呂に入るために立ち上がる
兄弟たちは食器の片付けをするために二人揃って台所に立っている
ざっと風呂に入り寝室へ
一回の居間と風呂場に近い部屋は兄弟たちの共有の寝室である。2階は私の部屋である。兄弟であるが恋人でもある子供達が気にせずに風呂に入れるようにしている
家全体に色々と仕掛けをしているので大体のことは魔力で行うことができる便利な家になっている。必要なのは登録した人間の魔力くらい。一般人でも使うことができるくらいに改造しているので私も使えるし。魔力が芳醇な兄弟たちは些細なものである。
拾ってきたときは本当にズタボロで。弟は両手を杭で打たれて貼り付けにされて。兄は助けようとしたのだろうボロ雑巾のようになって地べたに転がっていたというのに
ちょっと手を貸して実を守るための技術や知識。行きていくための知識や技能を身に着けさせて小綺麗にさせたらすごく育ったな〜と思いながら眠りにつく
目覚め着替えてのんびり茶を飲みながら買ってきた本を読みつつ1時間ほど。ある程度朝日が昇りきったところで畑に出て水をやったり収穫するものを収穫し買っている鶏から卵を回収する。留守にしていても卵は回収されるようにしているし保存もかけられているので安全に食べられるようになっている。
買ってきたベーコンを切り卵焼きを焼きつつベーコンも焼く。回収した野菜を切りサラダやスープにしているとぬるっと起きたてきたのは、身だしなみをしっかりしてきっちり目覚めている兄と同じ様に身だしなみはきっちりしているが眠たそうにしている弟。
テーブルに付き茶を入れている兄に甘えている弟を見ながら更に料理を盛り付けてサーブする。
兄は弟の食事を手伝いつつ食べているのを見ながら自分もモクモク食べる。兄が食べさせないと旨味が感じにくいらしく。人目がないところではというか、どこかに呼び出されて食事をする以外はこうやって食べさせているのである。
ま、それでいいとお互いが納得しているので気にしていないが
食事を終え
各自好き勝手に過ごそうとしていると手紙がすっとテーブルに
何かあれば連絡してくるようにと伝達魔法を交換している人間からだ。兄が手紙を読みそれを弟に渡して読ませてから私に回ってくるが、内容的には昨日の騒ぎは何だったのか
というものである
「何だったのかって言われてもな」呆れたように言う私に同意して頷く弟
「むしろ噛みついてきた理由がわからないがな。ああやって噛みついて功績を横取りしているのか?」
「ああ、金払えばっていうやつか?そういうの未だにやっているやついるんだな」逆に感心するように言えば、兄弟も頷いている
「これの返答は俺が書くが。今後、こんなことがあるなら出向かないほうがいいかもな」
「そろそろ違うところに行くか。行き過ぎて目をつけられたのかもしれんしな」それに了承した兄弟たちに次はどこへと話しながら茶をすする
ざっと経緯を説明し次は違うところに出向くので問題ないとした手紙を送り返す兄。
内向的な弟と社交的な兄と感じるが、意外と繊細なのは兄の方である。ま、数ヶ月のんびりしたらいいかと。購入した日用品をまとめてしまったり畑作業をしながら思う
外で遊ぶのが好きな兄であるが、弟といっしょにいることも好きである。二人で購入した本を読みアレヤコレヤと話をして暇つぶしをするだろうし。
まあ大丈夫だろう




