幼きあの日
夏のホラー2023投稿用。
注意! 匂わせレベルですが、女性が嫌悪感や恐怖心を強く抱きかねない表現があります。 苦手な方は回避をお願いします。
ホラーらしいホラーではありませんので、期待外れになるかと思います。
自分が小学生の頃の話。
小学生が自力で遠出をしたいとなれば、手段は自転車しかない。
しかし小学生の低学年の頃は、注意力とか危険察知能力とか体力等等の理由で、保護者同伴でないと危なくて自転車に乗せられないと言われる。
それ故に学年が上がり、もう大丈夫だろうと保護者無しで自転車を乗り回して良いと、許可を得られた時にそれはもう嬉しかったものだ。
これで大人の仲間に一歩近付いたと。
そして学校から帰ってきたら早速、自転車を乗り回して色んな所へ行きたいと。
その時に友達と一緒に行ければ、知らない所でも怖がらず行けるし、絶対に楽しくなるだろうと。
友達との(気分は)ツーリング(実際はチャリ散歩程度)は、本当に楽しかった。
通っている小学校の学区外で知らなかったあんな所に、そんなモノがあるなんて! と発見の連続だったし、ペダルを漕ぎ過ぎて疲れ切った時に休むだけで楽しかった。
が、もう家に帰る時間だ。
遅くなったらしばらく、一人での自転車禁止と脅されているために、絶対に守らねばならない時間だ。
それでもまだ自転車に乗っていたいと、せめてもの抵抗を見せたくなった。
友達と別れて自宅へ帰る学区内の道で、普段は使わない遠回りの道を選ぶ。
その道は、見渡す限り田んぼばっかりの場所の、ギリギリ外にある道。
農家さんの家がポツポツと並んでいる上に、用水路にフタが無くて危ない道。
そこを夕焼けの中で帰っていた。
少し進んで、曲がると町に出る丁字路。
自宅はそっちの方なので、曲がらないといけない道。
逆にまっすぐ進むと、大きな遠回りになってしまう道。
そこで自分は見てしまった。
まっすぐ行く方の道の路肩に、ワゴン車が止まっていた。
その車のそばに家もあるが家の中は真っ暗で、家人が出かけているのだろう。
そんな所に止まっている車には、変な所があったのだ。
車が、跳ねていた。
上下左右に、跳ねていたのだ。
自分はその時は、まだ小学生。
止まっている車が跳ねているなんて理解の埒外で、車の中で何がどうなっているのか、なんて分からない。
なので自分は「なんか変な車があるなぁ」位にしか思わず、丁字路を曲がって帰った。
それから。
何もない、普通の小学生生活を一週間送った。
その途中で、ツーリングをした翌日から連続で欠席している女子がいるなぁと、ぼんやり思った位の変化しかない日常だった。
そして週が明けたある日。
ずっと休んでいた女子が登校してきていて、ああ、元気になったのかな? なんてのんきに思っていた時だ。
担任の先生が、朝の会に真面目な、神妙な顔付きで教室に入ってきて。
「○○さんが先週、大変な目に遭いました。 でも普通に接してあげて、つらそうにしたら優しくしてあげて下さい」
なんて言い出した。
自分はその女子とは接点がないので、聞き流した。
話す時なんか無いだろうし、話しても素っ気ない内容だろうから気にする必要は無いかな。
なんて思いながら。
今思えば。
あの日見たアレは恐らくソレであり、気になって車の中を覗き込んだら、近くの家に人を呼びに行けていたかもしれない。
補足として、その頃はまだ個人で携帯する通信機と言えばポケベルが主流の時代で、子供は携帯できる電話なんて知らない時代でした。
それ以前にただ偶然に自転車を乗り回した日とソレな日が重なっただけで、別の場所で起きた事件で、自分ではどうにもできなかったかもしれない。
そもそもとして、大変な目に遭ったといっても、ソレではなかったのかもしれない。
それでも、今思い出してしまうと、あの時に何かできたかも知れないと後悔してしまうのです。