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鴉の騎士  作者: 詩から歌詞
6/43

【6話】 ダンジョンへ

 

 およそ一時間後。

 待ち合わせ場所であるギルドに遅れてきたのはアイシスの方だった。

 走ってきたのか息は荒く、心底申し訳なさそうにネルに頭を下げている。


「ご、ごめんネル!準備してたら遅くなっちゃった。待ったよね?」

「全然待ってないわ。私も今来たところだから」


 笑顔でそう言うネルだが、それは嘘。

 彼女は集合時間の十五分前には来て待っていた。

 アイシスの遅れた十分を合わせて二十五分は待っていたことになる。

 入口でずっとそわそわしていたものだから、不思議に思った他の冒険者達から声をかけられたくらいだ。

 それなのに、彼女はアイシスをちっとも責めようとはしない。単純に嬉しかったのだ。

 アイシスが約束通り来てくれたことが。

 これがダリスならブチ切れて帰っていただろう。

 どうやら人は恋をすると寛容になるらしい。


「それで、ダンジョンなんだけど。アドの奥に割と新しめのやつがあったわね。あそこでどう?」

「うん、それでいいんじゃないかな?距離的にも近そうだし」

「じゃあ、そこで決まりね。早速行くけど、忘れ物は無い?」

「うーん、多分大丈夫」

「よし、じゃ行くわよ」


 ネルは意気揚々とアドの森に向かって歩き出した。揺れる栗色の髪と、大きな剣が人目を引く。

 美しい剣士の後ろ姿を見て、アイシスは自分が大きな忘れ物をしていることに気づいた。

 気づくと同時に、慌てて彼女を呼び止める。


「あ、ネル!」

「……ん、何か忘れ物?」


 くるりと振り返ったネルに向かって、アイシスは頬をかきながら忘れていた言葉を告げる。


「あー、うん。その、えっと。その服似合ってるね。すっごく可愛いと思う!」


 女の子と一緒に待ち合わせをした時は、必ず服を褒めろ。

 それはダリスがかつて彼に送ったアドバイスだ。

 もちろんお世辞では無い。

 動きやすさを重視した、しかしどこか女の子らしさを感じさせる赤い刺繍の入った灰色の騎士礼装。

 その上に真っ赤な羽織を着込んだ彼女の姿は十分にお洒落と言えるだろう。

 思いもよらず、賛辞の言葉を受けたネル。

 何が起こったのか理解が追いつかず暫くぼーっとしていたが、やがてその言葉を飲み込むと。

 ……ボフッと。案の定赤面した。


「あ、ああああ……あ、りがと……」

「ど、どういたしまして!」


 慣れないことをしたからか、アイシスも恥ずかしそうだ。二人の間に微妙な空気が流れる。

 ネルに至ってはあまりの嬉しさに思考停止、その場で固まってしまっている。


「ネル?」

「……あ、うん! アドの森よね。わかってるわ、行きましょ!」


 アイシスの声で再起動したネルは、アドの森に向けて速足で歩き出した。

 アドの森まではここから徒歩で五分もかからない。

 街を出て、道なりに進んで行くと、アイシスがいつも狩場にしている場所に出た。

 冒険者はおらず、モンスターがちらほらと見える。

 敵意を向けなければ襲ってこない敵ばかりなので、ネルもアイシスも無視して森の中へ入っていく。


「ネル、今日はどこまで潜るの?」

「うーん、そうね。最深部までは二時間くらいで着くらしいから、一応最後まで潜るつもりだけど。迷いそうなら途中で引き返すわ。アイシスもはぐれないよう気をつけて」

「うん、了解」


 アイシスも一人でダンジョンに潜ることはあるが、経験はネルの方が豊富。

 ここは彼女の指示に従うのが正しいと判断した。

 ダンジョン攻略をする際は、最も経験が豊富なものが先導するものだ。

 そこに歳や階級は関係ない。

 未知のダンジョンなら尚更。

 罠や強敵、気にしなければならないものは山ほどある。

 それはD級といえども、同じことだ。


 人の通らないけもの道を歩き続けて約十分、二人はようやくダンジョンの入口に辿り着いた。

 遺跡のように石が積み上げられた入口。一体いつ誰が作ったのか。

 ダンジョンの歴史は謎に包まれている。ダンジョンとは気がついたらそこにあるものだと、古くから冒険者たちは口を揃えて言うのだ。

 神が作っただの、自然現象だの。兎に角色々な説があるが、どれが正解なのか、それを知るものはいない。


「じゃあさっき言った通り。最初は私が先頭で行く。後ろは頼んだわよ、アイシス」

「うん、何かあったらすぐに教えるよ」


 狭い入口を抜け、ダンジョンへ踏み込む二人。

 中は薄暗く、壁にかけられた炎がほんのりと辺りを照らしていた。

 広い廊下が、視界の限り続いている。

 ダンジョンはいつどこからモンスターが飛び出して来てもおかしくないので、常に警戒が必要だ。

 早速、ダンジョンラットと呼ばれるモンスターが数匹、廊下の脇道から湧き出てきた。

 一メートル程の巨大ネズミがわらわらと群がり、あっという間に二人の行く手を塞いでしまう。

 チューチューと甲高い声で泣きわめき、敵意剥き出しでこちらに迫ってくる大量の巨大ネズミ。

 嫌悪感の塊のようなモンスターだが、ネルが臆するわけもなく。


「どきなさいよ」


 彼女は静かに、だけど豪快に。先頭にいたダンジョンラットを一撃で叩き潰した。

 身体が左右真っ二つに割れ、内蔵が嫌な音を立てて飛散する。

 舞い散る血飛沫の中で、ネルは休まず次の敵に狙いを定めた。


 ネルの戦闘スタイルは豪胆という言葉がよく似合う。

 師匠譲りの馬鹿力はとても女の子の筋力とは思えない。

 それもそのはず。

 彼女は戦気を腕に集中させることによって、剣の威力を底上げしているのだ。


 真っ赤に染まった大剣が、次々とダンジョンラットの身体を肉塊に変えていく。

 ネルは苦戦すること無く、あっという間にネズミ共を一掃してしまった。

 その圧巻の戦闘シーンに、アイシスはただ口を開けて見ていることしか出来ない。


「……相変わらず、凄い剣だね」

「ふんっ。こんな雑魚、斬った気がしないわ」


 折角褒めてもらえた服も、汚いモンスターの返り血で染まってしまった。

 だが、それを気にして進めるほどダンジョンは甘くない。

 冒険には、常に生死が付きまとうのだ。

 その事は二人とも、重々承知していた。


 ダンジョンラットが全滅したのを確認して、死体の転がる廊下を再び歩き始める。

 ダンジョンで殺したモンスターは、焼く必要がない。

 何故なら、ダンジョンが死体を「喰って」くれるから。

 観察していればわかるが、死体が段々と地面に埋もれていくのだ。

 まるでダンジョンが美味しそうに食事をするように。

 その死体がどこへ行くのかは定かではないが、消えていく以上、わざわざ焼く必要もあるまい。

 それに魔力が勿体ないので、死体は放置するのがダンジョン攻略でのセオリーとなっている。


 奥に進むにつれ、道は入り組んで行く。

 ネルは感を頼りに進んでいるのだが、不思議と迷わない。

 彼女の研ぎ澄まされた神経が、自然と奥地へと続く道を引き当てているようだ。

 ちょくちょく襲いかかってくるダンジョンラットをネルが片っ端から潰していくので、アイシスはすることがなくて暇なくらいだった。

 ダンジョンの奥地に辿り着くまでは、この状態が続くだろう。

 生死が付きまとうとはいえ、所詮はD級。

 普通に暮らしている一般人でも攻略出来てしまう程の難易度なので、雰囲気以外はデートスポットとして機能している気がする。


「ねぇ、アイシス」

「ん?どうかした?」


 モンスターを倒せずに退屈そうにしているアイシスを気遣ってか、ネルはネズミを蹴散らしながら話題を振った。


「アイシスは私の師匠のこと知ってる?」

「そりゃあもちろん。首断ちのエグリードといえば、彗星の使者でもトップレベルの冒険者だからね。

 噂はかねがね聞いてるよ。ギルドで見かけたこともあるから、顔も知ってる。

 エグリードさんって滅茶苦茶渋い顔してるよね。かっこよかったなー」

「ふーん。あのジジイ結構有名なのね」

「じ、ジジイって……確かに年はとってるけど。あの人をそう呼べるのはネルだけだよ」


 ネルの師匠である首断ちのエグリード。

 彼は御歳七十歳になる白髪の老人だが剣の腕は未だ衰えず、龍の首を一撃で切り落としたことからついた「首断ち」の異名を持つ超一流の冒険者だ。


 またこの他にも「スーパームキムキおじいちゃん」という異名があるが、これはネルが六歳の時にふざけてつけたもので、この異名を使う者は居ない。

 ただ一人、本人を除いて。

 なんと、エグリードは二つ目の異名を弟子が付けてくれたと喜んで名乗っていたのだ。

『ふははっ、スーパームキムキおじいちゃんが来たからもう大丈夫じゃわい!』

 と、ドラゴンに向かって言い放つ様はなんとも滑稽だったが。

 他の冒険者から顔と異名のギャップが凄いからやめろと諭され、使うのを諦めたとか。


 そんなエピソードからわかるように、彼はネルを実の子供並に溺愛していた。

 いわゆる、師匠(おや)バカというやつである。


「あの人私に対して信じられないくらい甘いんだけど、剣の腕は確かなのよね。

 ホント、いつか死ぬなんて信じられないくらい元気なんだから。

 いつまで経っても越えられなくて、困っちゃうわ」


 その言葉とは裏腹に、師匠のことを語るネルはどこか嬉しそうだ。


「……いい師匠だね。家族みたいで、羨ましいよ」

「家族ねぇ。確かに師匠はお父さんみたいだけど、ちょっと家族とは違う気がするのよね。上手く言えないんだけど。ほら、やっぱ血の繋がった親子って特別じゃない」


 ネルはそう言って遠くを見つめる。その何かを懐かしむような顔に、アイシスは彼女に両親がいないと教えてくれたことを思い出した。

 美しい横顔はきっと、顔も知らない両親のことを思い出そうとしているのだろう。


「そういえばネルは師匠に育てられたんだっけ」

「うん。両親は私が小さい時、私を森に捨てて旅に出ちゃったわ。ホント、信じられないわよね。まだ二歳の子供を置いていくなんて、とんだ人でなしだ、わっ!」


 べちょっ。現れたネズミを潰しながらネルはそうボヤく。


「やっぱり、恨んでる?」

「……どうかしらね。自分でもよくわかんないのよ。師匠に拾って貰えたから普通にここまで生きてこれたし。だから別に憎いとは思わない。でも一発殴りたいとは思ってるわ」

「ははっ、ネルらしいね」


 ネルは親がいないことを悲観してはいないようだ。

 その証拠に殴りたいと言った時の彼女はとても清々しい顔をしていた。

 きっと彼女なりの冗談なのだろう。


「ね、アイシスの家族はどんな人なの?」

「……僕の家族?」

「うん。そういえばアイシスから家族の話を聞いたことがなかったなって思って。いつも家の用事があるって言ってるから、なんの用か気になってはいたのよね」


 それはネルにとっては本当に何気ない質問だったろう。

 軽い世間話、暇を潰すための話題のひとつに過ぎない。

 でも、アイシスにとっては違った。

 その質問は彼にとって、とてつもなく重い意味を持っていたから。


 人は皆、他人には明かしたくない過去がある。

 アイシスにとってのそれは、兄たちに虐げられてきた幼少期の記憶だ。

 自分が本当は弱くて、みすぼらしい人間だと。それを知られてしまうのが怖くて、ずっと自分の弱さを隠してきた。人との戦闘をなるべく避け、実力がわからないよう隠してきたのだ。


 ネルは自分の本当の姿を見たらどう思うだろう。

 実の兄たちに頭を垂れひれ伏している、情けなくて弱い自分を見たらどう思うだろう。

 きっと、軽蔑する。

 軽蔑して、兄のように自分を虐げるに違いない。

 自分が弱い人間だと知られたら、もう仲良くしてはくれない。


 冗談ではなく、アイシスは本気でそう思ってきた。

 人間というのは恐ろしいもので、幼い頃に植え付けられた先入観を簡単に忘れることは出来ない。

 アイシスは兄たちに「弱者」のレッテルを貼られ、それを信じ込んでしまった。


「弱い人間に、生きる価値などない」


 口癖のように聞かされてきたこの言葉が、彼にそう思わせるのだ。


 ……だけど、今は少し違う。

 エールとダリスのくれた言葉がふと頭をよぎった。

 兄の言葉ではなく、自分を必要としてくれる人がくれた肯定の言葉だ。

 信じるべきはどちらか。考えなくともわかる。

 ネルもきっと、自分を軽蔑することは無い。

 ありのままの自分を受け入れてくれる。

 そんな気がしていた。


「……アイシス?」


 突然黙り込んでしまったアイシスを心配して、顔を覗き込むネル。

 やはり、彼女には話しておくべきだと。アイシスは覚悟を決めて、彼女の目を真っ直ぐに見る。


「ネル。君に話したいことがあるんだ」

「……話?」

「うん、大事な話なんだ。ネルに聞いて欲しい、大事な……」


 アイシスの真剣な表情。

 めったに見せないその顔はいつもの数倍凛々しく、ネルの目にはさぞ新鮮に写ったことだろう。

 そして、彼の言い方も相まって、彼はまたここでも誤解を生んでしまうのだった。


(大事な話って……もしかして、こ、告白!?)


 とまぁ、ネルがそう思ってしまうのは無理もない。

 ()()のことを聞かれたあと、真剣な顔で『大事な話がある』と言われたら。

 恋する乙女は勘違いしてしまうだろう。

 悪いのは天然で勘違いを生んでしまうアイシスだ。


(せめてもうちょっとロマンティックなところで……ああでも、せっかく勇気をだしてくれたんだから……)


 うじうじと悩んで狼狽えるネル。

 自分が思い違いをしていることに気づかず、顔を赤くしている。


「ええっと……その話、い、今じゃなきゃダメかしら? ほら、ネズミが……」


 辺りを見回すと、いつの間にか二人は大量のダンジョンラットに囲まれていた。

 キューキューと、獲物を見つけたぞーと鳴きまくるネズミたち。

 危険かどうか以前に、煩くてまともに話が出来そうにはない。


「あー……いや、後でも大丈夫。先にこいつら片付けちゃおっか」

「うん、うんうん。そうしましょ!」


 ぶんぶんっと音が出そうなほど頷いて、ネズミ叩きが再開される。

 十匹前後居たネズミは二人の手によって葬られた。

 ネルは辺りを見回してもう生き残りがいないことを確認したあと、再びアイシスに向き合う。


「ダンジョンの奥までいけばどこかに安全な部屋があるはずよ。とりあえず、そこを目ざしましょ。大事な話も、そこで聞くわ」

「……うん、わかった」

「それじゃ、探索を再開するから。後ろをお願いね」

「大丈夫、任されたよ」


 ネルの頭の中は告白に対する返答のことでいっぱいだったが、焦燥感をなんとか隠して再び歩き出した。

 アイシスの勘違いを産む体質にも、困ったものである。


 ダンジョンは奥に行くにつれて幅広くなっていく。

 まるで冒険者達がモンスターと戦いやすいよう、ダンジョン側が配慮してくれているようだ。

 心なしかネズミの数も減ってきているような気がする。

 初期のモンスターの数が減っていくのは深層へと潜っている証だ。


 そして深みへ進んでいることを裏付けるように、新しいモンスターが顔を出した。

 左手に剣、右手には盾を持つ二足歩行のトカゲ。

 全身が緑の鱗に覆われており、黄色に輝く水晶のような瞳がギラギラと光っている。

 あれは冒険者達に『カルドリザード』と呼ばれているモンスターだ。

 武器を持ってはいるが知性は低く、ただ力任せに剣を振るう獣。


 アイシスやネルの敵ではないが、ダンジョンラットよりは数段手応えのあるモンスターだろう。

 カルドリザードは無防備に後ろを向いており、まだこちらには気づいていない。

 二人は急いで柱の影に隠れ、小声で作戦会議を始めた。


「ようやくそれっぽいのが出てきたわね。アイシス、まずは私が初撃で盾をぶっ壊すから。あいつの動きに応じて連撃を入れてちょうだい」

「うん、わかった」

「じゃ、行くわよ!」


 柱の影から飛び出し、ネルは駆け出した。

 その足音に、カルドリザードは気づいて振り返る。

 奴は目標を見つけたと短く吠えた後、盾を構えてこちらに走ってきた。

 ネルは少し離れた位置で立ち止まり、剣を両手持ちにしてぐっと腰を落とす。

 そして走ってくる奴に狙いを定め、前へ大きく飛びこんだ。


炎狼剣(えんろうけん)ッ!!」


 空中でそう叫んだネル。

 すると彼女の腕に炎の形をした戦気がまとわりついた。


 ─────バキッ!


 炎を纏った大剣は軽々とカルドリザードの盾を砕いた。

 その刃は本体に届くことは無く、地面に深くめり込む。

 地面に刻み込まれた傷跡が、この恐ろしい剣の威力を物語っていた。


 【炎狼剣】は戦気を使った技の一つ。

 戦気を炎の性質に変化させ、一撃の威力を上げる技だ。


 戦気は使用者のイメージによって性質を変化させることができる。

 もっとも、習得するには血のにじむような努力と類稀なるセンスが必要だが。

 ネルが天才と呼ばれる所以の一つが、この年で()()()()()()()を身に着けたことである。


 この技に欠点があるとすれば、今の彼女のように打った後は完全に無防備になってしまうことだろう。

 今のネルのように、カルドリザードの刃を避けることも出来ず、ただ見ていることしかできない。

 だが、今回はもちろん策あっての一撃。

 襲いくる刃を前にして、ネルはニヤリと笑った。


「アイシス、今よ!」

「オッケー!」


 襲いかかる刃がネルに到達する直前。

 彼女の後ろから飛び出したアイシスの剣が、この時を待っていたとばかりにその刃を迎え撃った。


「シィッ!」


 短い吐息を漏らし、アイシスとカルドリザードの刃が交わる。

 甲高い金属音と共に火花が散り、カルドリザードの剣が宙を舞った。


 アイシスはそのまま流れるように首を切り落とす。

 頭を失った体は崩れ落ち、緑色の血が飛び散った。


「よしっ、うまく決まったわね!」


 ネルは作戦通りの戦闘に、ガッツポーズして喜んだ。

 本来ならカルドリザードごときネル一人でも蹂躙出来てしまうはずだ。

 それなのに、わざわざコンビネーションを決めたのは技や立ち回りを練習するため。

 C級やB級の敵を想定した攻撃で、スキルを積むのだ。

 アイシスも手応えを感じたのか、何度かその場で素振りを繰り返していた。


「この調子で一気に最下層まで駆け抜けるわ。ペース上げるからしっかり着いてきてね」

「あ、うん。待ち伏せに気をつけてね!」

「わかってるわよー」


 今の戦闘で勢いづいたネルはずんずん奥へ進んでいく。

 時折現れるカルドリザードを同じような手順で次々と片付け、二人はダンジョンの深層へと潜っていった。



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