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鴉の騎士  作者: 詩から歌詞
10/43

【10話】 地下室にて

 

「ふわっ!?」


 とある地下の一室で、一人の少女が大声をあげた。

 部屋の中にその声が反響し続けるのは、ここが地下だからだろうか。


 少女は黒くて大きなローブに身を包んだ魔導師のような格好をしており、なかなかに奇抜だった。

 目を見開いて立ち上がり、手を上に伸ばして奇声をあげた彼女の奇行を、同じ部屋にいる二人が興味無さそうに見つめている。


 一人は女。青くて長い髪が特徴的な、ツリ目美人。腰まで伸びた長髪がよく似合っている。

 服装はシンプルな装飾が施された黒装束。

 黒と赤のコントラストが彼女の美しさを際立てる。

 耳に着けた複数のピアスと完璧な三白眼が病的な雰囲気を演出しているが、それを含めてもかなりの美人だと言えるだろう。


 もう一人は男。黒髪と赤い瞳。

 纏う雰囲気は違えど、その顔立ちはアイシスに酷似している。

 名はサロメ・クロウディア。

 先の女と同じ黒装束に身を包んだその姿はこの部屋の誰より美しいが、首に彫られた鴉のタトゥーがかなり危ない雰囲気を醸し出していた。


「……どうした、フッカ。理由の無い奇行なら、無駄に五月蝿(うるさ)いその舌を引きちぎるぞ」


 少女の唐突な奇行の理由を、男が静かに問う。

 するとフッカと呼ばれた少女は嬉しそうな顔をしてそれに答えた。


「あのねー。私の大事な玩具が壊されちゃったみたーい。頭に殺されたときの音がバリーンって響いたの!こりゃ間違いなく他殺だねぇ。あーあ、ショックだなぁー」

「玩具……ああ、あの趣味の悪い動く死体のことか」

「あ! サロメがまたフッカの悪口言った! 気持ち悪くないもん! 死霊戦気(ネクロマンス)は芸術だよぉ!」


 頬を膨らませて可愛く憤慨するフッカ。

 それを見たサロメは、また興味無さそうに視線を落とす。

 スルーされるのはいつもの事なのか、フッカも気にした様子は無い。


「えぇーっと。あ、アドの森のダンジョンかぁ。確か、殺しちゃったA級冒険者くんを使って作った子だったよねぇ。

 あんまりフッカの好みじゃないから適当なダンジョンにトラップとして仕掛けたんだんだけど。一体、誰が殺したんだろぅ?顔はイマイチだけど、結構強い子だと思ったのになぁ」

「別に誰でもいいわ……」


 今まで黙っていた病的な女が初めて口を開いた。

 冷徹でハスキーな声。興味が無さそうなのはサロメと同じだ。


「まぁまぁシャーレ、そう言わずにぃ。誰だか分かれば次会った時にあの子の仇だーって殺すことも出来るからねぇ。うふふふふふっ」

「仇だなんて毛ほども思ってないくせに。フッカはただ殺す理由が欲しいだけでしょ」


 図星だったのか少女はそれに返答しない。

 その代わりに椅子の上に片足で立って変なポーズを取った。


「……おほん。というわけで、今から上映会(じょーえーかい)をします! 鏡よ鏡、かのものの記憶を呼び覚ましたまえ。ほいっ!」


 少女は魔石がはめ込まれた鏡を取り出し、中に誰かの指を投げ入れた。

 鏡面が水面のように波打ち、仄暗い景色が映し出された。

 魔石に込められた魔力が映像を作り出しているのだ。


 シャーレと呼ばれていた女が、鬱陶しそうに顔を上げた。

 サロメもその鏡を目を細めて見つめている。


「じゃあ、見ていこーかねぇ……」


 鏡によって、そこへ映し出されたのはフッカの玩具が見ていた光景。

 つまり、アイシス達が魔物と思っていた奴の見ていた景色が流れる。

 映像に写ったのはもちろん、アイシスとネルが目を見開いてこちらを見つめるシーンだった。


「アイシスッ!?」


 バンッと机に手を着いて身を乗り出したのは、サロメではなくシャーレの方。

 その目は先程とは一転してギラギラと輝いており、その表情は喜びに充ちている。

 画面に写ったアイシスへと、熱視線が送られていた。


「うわぁーお。誰かと思ったらサロメの弟くんじゃん! ってあれ? この子ってサロメの屋敷で監禁してるんじゃ無かったっけ?」


 不思議そうに首を傾げるフッカの質問に対し、サロメはこめかみに血管が浮き出るほど怒りを露わにしていた。

 それもそのはず、外で剣を握るなと言っておいたはずの弟が。

 自分の言いつけを破って女とダンジョンへ潜っていたのだから、彼が怒るのは当然だろう。


「この愚弟め。牙は削いだが、躾が足りなかったようだな。また拷問にでもかけるか。いや、いっそ殺して……」

「おい、サロメ」


 ギロリ。ドスの聞いた声と全てを呪うような眼光。

 その声の主はアイシスへと熱視線を送っていた女だった。


 シャーレがサロメに対して尋常ではない殺気を放ったのだ。


 周囲が一気に冷え込み狂気が充満する。

 これは本気、本気の殺意だ。


「お前なぁ、私の可愛いアイシスにそんなことしてみろ。お前の五体を引きちぎって内臓を抉り出しても、私の怒りは治まらんぞ?」


 サロメの美しい黒髪を強く鷲掴みにして、シャーレは忠告した。

 アイシスを殺した時は、お前もそうなると。

 収縮した瞳が、執拗に訴えかける。


 殺されたくなければ、アイシスには手を出すな。


 そんなメッセージを網膜を通して身体に刻む込む。

 流石のサロメもその常軌を逸した狂気を目前にして冷や汗を浮かべていた。

 だが彼が持ち前の冷静さをかくことはなく、静かな目をしたままゆっくりとその口を開く。


「……安心しろ、冗談だ。殺しはしないさ」

「拷問もダメだ。大事なあの子の身体に消えない傷がついたら……マジで殺す」


 より一層大きくなった殺意。

 並の人間なら気絶するほどの狂気に当てられたサロメは、その目を閉じ大きく溜息を着いた。

 それを見たシャーレは髪から手を離し、狂気を治める。


「まったく、あんな腑抜けの何処がいいんだか。俺には皆目わからんな」

「それは……もちろん、彼の全部よ」


 狂おしいほど純粋な笑みを浮かべ、彼女は頬を赤らめた。

 その表情は乙女そのもの。なのにどうしてこんなにも歪んで見えてしまうのだろうか。


 サロメはこの女のせいで、アイシスを殺せずにいた。

 自分より強大な力を持つこの女は、自分の恋した相手のためならどんなに親しい友でも殺す。

 シャーレはそんな人間だ。


 こいつがアイシスを目にする前に殺せていれば、そう悔やんでももう遅い。

 先の言葉通り、アイシスを殺せば自分も躊躇なく殺されてしまうだろう。

 曲がりなりにもアイシスはシャーレにその命を助けられていたのだった。


 そうこうしている間に、映像はネルが敗れたところへと飛んでいた。

 彼女の身体が宙を舞い、アイシスの腕へと落ちていく。


 崖っぷちの状況を考慮しなければ、二人がイチャついてるように見えなくもない。

 シャーレがそんなシーンを見て顔を歪めたのは見なくとも分かる事実だ。


「サロメ、この女誰?」

「……俺が知ってると思うか?」

「思わないけど、一応聞いただけよ。あーあーあんなに抱きついちゃって。ムカつくわね」

「ムカつくなら、殺せばいいんじゃなぁい?」


 フッカの何気ない提案に、一瞬思案したシャーレだが。

 意外にもふるふるとその首を横に振った。


「あのねフッカ、恋っていうのはそんな単純なものじゃないの。邪魔する奴を誰彼構わずぶっ殺してたら、実るものも実らなくなっちゃうわ。それにそんな事しなくても私、この美貌だけでアイシスに選んでもらえる自信あるし」


 ふふん、と自慢げに鼻を鳴らして胸を張るシャーレ。

 確かにその美しさには目を見張るものがある。彼女が自信を持つのも当然だ。


「ふーん。フッカにはわかんない価値観だなぁ。邪魔なら壊せばいいのにね」


 ニマニマと、気味の悪い笑い方のフッカ。

 その唇には赤い糸が縫い付けられている。

 自傷癖でもあるのか、よく見るとその体は傷だらけだ。


「さぁさ、その可愛い可愛いアイシスくんの出番がやってきたよ! ほら!」


 そう言ったフッカが嬉しそうにスクリーンを指を指した瞬間、悲劇は起こった。


「あ」


 ぶすり、と。黒騎士の剣がアイシスの胸を貫いたのだ。

 剣の抜かれた穴から血が吹きでて、それが致命傷であることを物語っている。


 黒騎士はフッカが生み出した屍人だ。


 つまり、黒騎士がアイシスを刺したということは。

 間接的にフッカがアイシスを刺したということになる。


 それがどんな結果を生むのか、もはや言うまでもあるまい。


 ギギギギギ、と。固まった笑顔のまま首を横に向けるフッカ。

 すると案の定、般若の形相をしたシャーレが、剣先をこちらに向け息を荒らげていた。

 その瞳には先程とは比べ物にならない程の殺意。


 フッカも死を悟ったのだろう。

 悲しげな瞳からツーっと、涙がこぼれおちた。


「フッカ、何か言い残すことはあるか?」

「まままマママ待って! シャーレお願い待って! まだ死んだわげじゃないがら! まだこれから生き返るがもじれないがら! だがらおでがいばっで!」

「待たない、殺す」

「ひぅっ!」


 涙をボロボロ流しながら許しを乞うフッカに対して、無慈悲なシャーレの剣が迫る。

 殺意満々のその剣が待つことなく振り下ろされようとした寸前。


 ガシッと、サロメがその腕を力づくで止めた。


「サロメ、止めるならお前から殺すけど。それでいいか?」


 目線はフッカに向けたまま、シャーレは恐ろしい低音でサロメを威圧する。

 だがそれを受けたサロメは余裕の表情。彼は腕を掴んだまま落ち着いた声で彼女を諭し始めた。


「フフッ、まぁ落ち着けシャーレ。愚弟が死にゆくのは俺にとって好都合だが。恐らくフッカの玩具を殺したのはこいつだ。と、いうことはもしかすると。万に一つくらいの確率で生き残っているかもしれんぞ。フッカを殺すのはその結末を見てからでも遅くないと思うがな」

「……アイシスが死んだ瞬間に、二人共殺すからな」


 殺意はそのままに、シャーレはゆっくりと剣を納めた。

 緊張が解けたのか、フッカがへなへなとその場にへたりこむ。


「あ、ありがど……ザロべ……」

「お前のせいで俺まで殺されるはめになったら……フッカ、どう償ってくれる?」

「ご、ごべん……」


 サロメはそんな脅し文句を言いつつも、余裕の表情を崩さない。

 それもそのはず。彼はその実、アイシスが今も生きていることを知っているのだ。


 クロウディアの人間には生まれてまもなく【血盟の絆】と呼ばれる魔法がかけられる。

 血の繋がった人間が殺された、あるいは死んだ時。

 血縁のあるものにそれを知らせる効果がある魔法。


 クロウディア家の人間は義理を大切にし、家族を殺したものを許さない。

 必ず家族を殺したものへ報復するためにかけられた魔法だったが、その風習をぶち壊したサロメにとってはもう必要の無いものだと思っていた。

 それが思わぬ所でフッカに一つ貸しが作ることが出来、役に立ったのだ。

 それが嬉しかったのか、うっすらと彼の口端が上がっている。


 スクリーンは丁度【自戒律】が発動した瞬間を映し出していた。

 膨大な魔力がアイシスを包みこんだ後、彼がゆっくりと剣を振るう。

 すると画面が白い光で覆われた。【夜斬り】が放たれたのだ。


「夜斬りなんて、随分物騒な技を知ってるのね。アイシスはいったいどこで覚えたのかしら?」


 不機嫌なままのシャーレが、睨みを聞かせて問う。その問いにはサロメが答えた。


「俺の親父の得意技だ。自戒律といい、見よう見まねで出来るようなものでは無いはずだが……」

「そう、お父様の技なのね。加えて自戒律はジークレインの……流石私のアイシス。天才的だわ」

「お前のでは無いがな」

「いずれ必ず私のものになるのよ。生きていれば……ね」


 夜斬りが消え、彼が崩れ落ちるのとほぼ同時。

 シャーレはもう一度剣を抜いた。

 乾いた金属音が鳴り、結末を知らないフッカが身を強ばらせる。


「彼の心音が止まった時、お前らの命も終わる。フッカ、アイシスの心音が聞こえるようにしろ」

「う、うん。わかったぁ……」


 フッカがスクリーンに向かって手を翳すと、ドクン、ドクンと言う生々しい音が部屋の中に響く。

 だが瀕死のためその音は弱々しく、今にも消え入りそうだ。


「へぇ、そんなことも出来るのか。なかなか便利な魔法じゃないか」

「で、でしょ。えへへ……」

「クククッ、お前照れてる場合かよ。死ぬかもしれないんだぞ?」


 心底可笑しそうに笑うサロメと反対に、フッカの顔は引きつっている。

 彼らの冗談を聞いても、シャーレはクスリとも笑わない。


「アイシス、アイシス、アイシス……」


 ブツブツと、呪いのように彼の名前を吐き続けている。

 そんな彼女を見て、ここまできたら恋も病気だなと。

 サロメは他人事のように思うのだった。


「……あ、誰か来たよ!」


 フッカがスクリーンに映った人影を指さす。

 もう動かない玩具の瞳が、その姿を鮮明に映し出した。

 白の鎧を着た騎士が、彼らの元へと辿り着いたのだ。


「も、もしかして。弟くんを助けてくれるのかも!」


 突如現れた希望に、フッカは目を輝かせている。

 その予想通り騎士は懐から大きな魔石を取り出し、彼らにリレイズをかけた。

 騎士が魔石を砕き、二人が癒されていくシーンを、三人は固唾を飲んで見守っている。

 ドクンッ、ドクンッ。

 部屋の中に響く心音が明らかに大きくなり、彼が生還したことを物語った。


「よ、良かったぁ……」


 静寂の中、一番に口を開いたのはシャーレだ。

 安堵の表情をうかべ、地べたに座り込む。


 その表情から殺気は消えており、まるで別人に穏やかな顔をしていた。

 その安堵は仲間を殺さずにすんだことへのものではなく、アイシスが助かったことに対してのものだろう。


「た、助かったぁ……」


 続いて、フッカもその場にへたりこんだ。鼻水と涙でぐちゃぐちゃになった汚い顔をぐしぐしとローブの裾で拭い、生きている実感を噛み締めている。


 そんな二人には目もくれず、映像をじっと見つめるサロメ。

 自戒律込みとはいえ、夜斬りを放ったアイシスの強さに、兄として思うことがあるのだろう。

 だがそれよりも彼が注目しているのは……


「この騎士、一体何者だ? リレイズの魔石を持っているという事は、相当高名な冒険者だろうが……」

「そんなの誰だっていーよぉ! この人は私の命を救ってくれた恩人なんだからぁ!」


 パタパタと座ったまま変な踊りを踊るフッカ。

 助かったことが余程嬉しかったのだろう。

 その顔だけ見れば、無邪気な少女がプレゼントを貰って喜んでいるように見えなくもない。

 何はともあれ助かったと、三人が再び席に着こうとしたその時。

 ガチャっと扉が開いて、長身の男が顔を出した。


「どーもどーも。いやー、お休みのところ申し訳ない……ってあれ。フッカさん、なんで泣いてるんです?」


 彼の名はネクター。

 紫髪のオールバックが目を引く、高身長の青年だ。

 不気味な見た目とは裏腹にその口調は穏やか。

 サロメと同じ黒装束に身を包んだ彼は、この部屋の異常な光景に驚いていた。


「い、いや別に。ただちょっと殺されかけただけですぅ」

「そ、そうですか……まぁ解決したならいいんですけど。じゃなくて、今後について話し合いたいので皆さん席についてください」


 混沌とした空気に若干引きながら、ネクターは教師のような口調で注意する。

 三人が無事席に着いたのを見て、ネクターは改まった口調で話し始めた。


「さて、我々『戦律(せんりつ)簒奪者(さんだつしゃ)』の計画もあと半分のところまで来ました。『逢魔の姫』復活のため、()()()()()()()()()()を集め続けて早半年。想定より速いペースで進んでいます」


 ネクターは布袋から血塗れの心臓を取り出し、愛おしそうに眺めた。

 生々しいそれは高名な冒険者()()()()()

 肉塊は死して尚、強大な戦気を放っていた。


 最近アースディアで多発している()()()()()

 その犯人が彼ら戦律の簒奪者だという事は、今のところ彼ら以外知りえない事実だ。


 ネクターは真剣な顔に戻り、話を続けた。


「大変喜ばしいことですが、少しまずいことになりました。どうやら我々の活動が()()に嗅ぎつけられたようで。噂によるともうアースディアまで来ているのだとか」

「……思ったより早かったわね。こんなことになるなら、先にお姫様さらっておいた方がよかったんじゃない?」

「いや。遅かれ早かれ彼とはぶつかることになったでしょう。今は過ぎてしまったことより、目先の目標を優先すべきです」


 神童。

 思わぬ雷名の登場に、地下に重たい空気が流れる。


「それで、次の任務ですが……」


 ネクターは若干言いづらそうに、サロメに視線を送る。

 その理由はすぐにわかった。


「ギルド【黒羽の獅子隊】の殲滅、および目撃者全員の排除。それが今回の目的になります」


 サロメは眉をひそめ、ネクターの顔を睨むように見上げる。

 【黒羽の獅子隊】はサロメの弟ランスロット・クロウディアが副長を務めるS級ギルド。

 つまるところ次の標的は、サロメの肉親だ。


「ネクター、あんた相変わらず性格悪いわね」

「否定はしませんが、今回は合理性を求めた結果ですよ。神童が本格的に動く前に王都に近いギルドは先に潰しておくべきです。待ち伏せされて全滅、なんてことにはなりたくないですからね」

「サロメ、嫌なら来なくていいわ。弟が殺されるところなんて見たくないでしょ」

「……いや、問題ない。むしろ好都合だ」


 サロメの不可解な発言に首をかしげるシャーレだが、あえて深く聞くことはしなかった。


「そういえば、あとの二人はどこ行ったのよ」

「ラグナとオズワルドは別任務で動いてもらっているので、後で私から伝えておきます。話は以上です。各々、戦闘に向けて準備をしておいてください」


 ネクターはそう言うと地下の奥、荘厳な装飾が施された扉に手をかけた。

 中に鎮座していたのは、紫色の卵のようなもの。

 とても大きなそれは、禍々しい戦気を放っていた。


「サロメ君、心配はいりませんよ。友も家族も投げ打った先にこそ、我々の求める幸せがあるはずですから」


 ネクターは卵に向けて、手に握った心臓を放り投げる。

 波打つ闇色の殻。中にいる『何か』が心臓を咀嚼する音が響く。


「すべては【逢魔の姫】復活の為に─────」


 ドクン、ドクン─────

 拍動が室内にこだまする。

 

 今にも孵りそうなその卵に感じる、復活の予兆。

 ここにいる者は皆、その時を待ち望んでいた。

以降は毎週投稿にする予定でしたが。

ストックが続く限り毎日投稿いたします。


読んでくださる方に感謝を。


自己満足の小説ですが。

頑張って書きますので引き続きよろしくお願い致します。

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