第二童 害虫撤退
じゃんけん…しません?
第二童
馬車のガラガラとする音が止んでいきついにピタッと
止まった。緊張する。上手くいけるだろうか
いや、上手くいかなければならない。落ち着いて一旦落ち着いて…よし…あれ?…猫背できない…さらしきつい…うぅ…いか仕方なく僕は良い姿勢のままで落ち着きを取り戻すよう努めていると…
「お嬢様。どうやら着いたようですね。さぁ、行きま
しょう‼︎」
そう言うと侍女なのかな?向かいに座っていた僕を慰
めてくれた女性が手を取り馬車の扉を開けて導いてく
れた。
「わっ眩しい…。…っ!」
先に広がっていた光景に思わず絶句した。美しい…!
穏やかでどこか幻想的で何かを包み隠しているような
陽の光で包まれた庭園そして白いレンガを基調とした
そびえ立つ城。
いいなぁ…
かっこいい…
いいなぁ…
「?お嬢様?いかがなさいましたか?」
「ん、ちょっとね。でももう大丈夫だよ。」
さてと、僕が自分で考えたクエストNo. 1、友情
クリスと仲良くなる!頑張るぞー‼︎さーてまずははじめ
の一歩だな。…?…はじめの一歩に使った右足を再度使
おうとした所…う…動かない…?
あ、あーーー!!!!
ハイヒールのかかとが床に引き詰められた
タイルの隙間に挟まってるぅーーーー!!??
やばいやばいやばい!
抜けない!抜けないよー!
侍女も踵を抜こうとしてみるが…
「んっ、よいしょっ…抜けませんね…」
まずくないか?
どうしようどうしようと悶々としていると…
コツコツと誰かがこっちに向かってやってくる。誰だと思って顔を上げるとそこには…クリスがいた。意外にも彼女はこのような経験があったらしく周りのタイルを気休め程度かわからないが踵とは逆の方向に蹴り、クリスの執事らしき人も協力してくれた。
するとスポッとタイルから抜けた
「わっ抜けた…あ、ありがとうございます」
僕は貴族の挨拶の仕方なんて分からず、腰から上をペ
コペコした。
「いいのよ全然。…あなた平民よね?」
「わ、わ、お嬢様その挨拶ははしたないですよスカー
トの裾を摘んで頂かないと。」
どうやらそれがルールらしい。つまむつままないでな
にが変わるのかねぇ。
「クリス様この方は…」
と隣の男執事がクリスに何かを囁く
「申し訳ございません。公爵家の令嬢だとはつゆ知ら
ず…無礼な物言いをお許しください」
おっとまずい急にクリスの態度がしおらしくなった。
いや、別に彼女の心情が変わったわけでは無いのだろ
う。おそらくこれは貴族階級の挨拶の壁。恐ろしいね
ー、なんとか好印象を…
…ま、普通に接せばいいか。
「別に気にして無いよ。…ちょっと緊張してるから一
緒に来てくれるとうれしいな」
「えぇ、分かりました」
ひょいと僕の右後ろに立った。なんで後ろなんだ?横
どなりがいいのにそう思った僕は彼女の手を取って僕
の隣に立たせた。
「いいのですか?この名前も知らない私で。」
「それもそうだね、名前を聞こう。ぼ…私はアリス・
アルデモンドよ貴方は?」
「…?私の名はクリスティナ・フォルテマンダです」
やはりこの子はクリスで間違いないね!ヨシッ!
「じゃあ名前も聞けたし行こっか!」
彼女と横並びで歩き城の門をくぐり、パーティを催し
ている庭園の入り口をくぐろうとしたした時、
…てかクリスずっと無言だなぁ。
「ご機嫌麗しゅうアリス様。隣の方はどちら様で?」
数人の女の子たちが僕たちの前に立つ。誰ー
「あぁ、この子はクリスティナ・フォルテマンダよ」
「誰かしら」「さぁ」
など、ザワザワと彼女たちが話し合っている。
ちょっとばかし迷惑だなぁ。いやだから誰ー
「あ、こいつ平民だよ多分。うん絶対そうだ。」
その一言で空気が変わった。
「退きなさい、アリス様の近くに立つだけでおこがま
しいのよ。この虫!」
虫ぃ?どう育ったら人に虫って言えんの?え、怖。
「…アリス様の道を阻むなんてとんだ害虫ね。ご機嫌
麗しゅう、害虫さん?」
「ッ…この…っ!」
あ、ああ!めちゃめちゃ毒舌!ここは止めに入るべきか
「まぁまぁお二方、」
「…ふっ、オホホホホ」
オホホホホ!?
「申し訳ございませんね、アリス様。いやちょっとね
言い得て妙すぎて、お邪魔虫ね…ぷぷっ。ほら貴方達
さっさと退きましょう」
…?よく分からないが目の前に現れた女の子達は去っ
ていった。
どこいくんだろ?
そうしてクリスと終始無言で会場の中央のようなところに立っていると…
「皆様、此度はお越しいただきありがとうございま
す。本日は入学前の友好パーティとなっております。
どうぞ、お楽しみくださいませ」
…友好パーティ。
これはキャラクターとの親睦を深めるイベント。ゲームでもここでも敵作るかぁ…
言葉の意味知ってんのかな?あの子たち。
…目の前に広がる甘くて美味しそうなケーキ見てると腹減ってきたな。
クリスもケーキにチラチラと目線を送っている。
だよなぁ 美味しそうだよなぁ。でも実はパーティのケーキは手をつけるのはあまり素行が良くないとされてる。
ゲームでは攻略対象の公爵家の金髪イケメン王子
が優男だから食べたそうにしてるクリスを見かけて、誰かなんて関係なく食べさせてあげたくて前例を作ったんだっけ。
…ん?
前例を作った優男は公爵家、僕も今の肩書は公爵家。つまり僕も食べても問題ない!
そうと分かれば、とコツコツとケーキの近くへと行き小分けにされたいちごのケーキをフォークでさらに分け、口に放り込む。
…うん!うまい!僕は次々に食べていく。おっとクリスも誘わないと。
「クリスちゃんも食べようよ。」
するとぱぁぁと今日初めて嬉しそうな顔をしてこっちにトコトコ近づいて食べ始める。
「えへへ、おいしぃねぇ」
とろけた笑みをこっちに向けてきた。
か、かわいっ!
え、ちょっと待ってかわい過ぎるぞ?え?天使か?
ケーキを笑みをこぼしながら食べていたらザワザワとし出した。すると何人かまた別の貴族部隊がやってきて、
「アリス様。いささかマナーがなってないように思いますが… 」
まぁ…そうなるわな。だって今やってることは、はしたないことなんだから。
さぁて、あの優男はなんて言ってたっけなぁ。
とか言い訳を考えていると、その優男がやって来た。
おぉーいいタイミングだ。
こっちにやってくると、おもむろにケーキを食べ
「んん〜!このケーキ美味しいなぁ。こんなに美味しいケーキを食べずに帰るなんて作った人に失礼だと思うな。出された物を食べないなんてマナー違反だ。そうだな!僕は今度から毎回出された物を食べよう!」
なんて言った後僕らに向かってウインクをした。
…女の子だったらときめくんだろうか?
よく片目だけを綺麗にできるな、としか思えない
そう思ってクリスを見たら…
もそもそとケーキを頬張ってる…
おぅ、見てすらいないのね…確かゲームでも見てなかったっけ。見てなかった気がする。そしてパーティ食べない文化はこの一件で廃れていったんだっけな。
「皆様方、此度はお越しいただきありがとうございました。友好パーティはこれにてお開きにさせて頂きます。」
お、もうそんな時間か。
結局あの後別部隊の貴族組がそそくさと去っていった。
…なんで一言だけ言われただけで去っていくんだろう。もっと食い下がればいいのに。
…さ、帰るか!アリスの屋敷の内装も見たいしね。
「アリス様少しいいですか?」
っと、クリスが話しかけてきた。
「どうしたの?クリスちゃん」
「!…私もアリスちゃんって呼んでもいい?」
おっこれは友達枠ゲットか?親密度も上がってハッピーだね。
「いいよー よろしくねー」
そのあと何個か言葉を交わし、バイバイとだけ言って帰った。
よっしゃ!クエストNo1クリア!
No2があるかどうかは未定だが、このまま頑張ろう!
僕は馬車に乗りアリスの屋敷へと帰った。
帰宅後昼食を取ったのだが
うえぇ、
ケーキ食いすぎてお腹が空いていない。
いや、もはや満腹に近い
ただ、出されたものは食べ切る人間なのでなんとか食べ切った。
食事後、
侍女の名前がど〜しても知りたくなったから、なんとか職員名簿を父親にあたる人から貰えた。
「さぁてと、なっまえ〜 なっまえ〜…お!あったあった、えーと?アリス様の侍女 ベレッタ ルート 男爵 ルート家の五女…五女!?」
すげぇなよくそんなに子供授かれるな。
子育て大変だっただろうなぁ。
他の人たちも確認して、大方大丈夫だろう。
…眠いな…
今座ってるソファ柔らかいしここで寝ちゃお。
……………………………………………………………………
「やっほーーー起きてるーーー???」
声が聞こえて目を開ける。
あれ?どこ?ここ
…なんか目の前にちょっと発光してるおっさんいるんだけど…
あれ…?
このおっさん、顔が靄がかかってるみたいに見えない。
「おーーーきーーーーーてーーーーーーーるーーーーーーー???ちょっと今バク転できそうだからやってみる!見ててー?」
そう言うと頭を思いっきり床にぶつける…
「何してんだ…」
「痛った〜〜〜〜〜〜!!!!あっ!起きた起きた!おはよっす!」
「……あんた誰?」
「ん?俺?…神」
は?
最初はグー
じゃんけん…
…
グー!