第一童 Christina melody
二作品目!
「おい健太。お前最近ノリ悪くね?」
1人の齢11の悪ガキは髪のタバコをふかしてタバコの先をこちらに向けてくる。
「…え?そ、そうかな…」
「健ちゃん疲れてる?呑んで回復っしょ」
もう1人の悪ガキが肩を組んでコツンと缶チューハイを置いて差し出す。
「あ、うん…ちょっと二日酔いかも…」
「は?今!夜だよなぁ?俺の酒が飲めねぇつうのかよっ!あぁ!?」
怒り上戸な悪ガキはブチギレて健太の胸ぐらを掴みかかる。
「まぁまぁ、みんなコレやれば疲れも吹き飛ぶよ!…そんなことないか…死ねばいいんだ…俺なんか…あは、あははははは!!!」
どこからともなく現れた3人目の悪ガキはふらふらと注射をぷらぷらと揺らしながらこっちまで来た。
「ちょっ…おまっ…情緒バグってんだろ!あひゃっひゃっ!」
「くくく」
「あ…あはは…」
「うっしゃ海辺走ろうぜ、健太と俺が運転するわ」
タバコをポイっと放り投げた悪ガキ1はバイクに跨り、皆も後に続いてく。
後ろに薬中をのせてバイクのぶるるんっ!とあうエンジン音を鳴らしながら走り去ってゆく。
慌てて自分も後に続く。
「うっひょぉぉ!!!!たまんねぇな!!」
エンジンを盛りに空回しさせてどでかい音を撒き散らしながらそれを抑えるほど大きな声で後ろのバイクの運転手が叫ぶ。
「…健ちゃん足洗おうとしてる?」
ぎくり
後ろに二人乗りした怒り上戸の悪ガキが自分の心のうちを見透かしてきて思わず背筋が凍る。
「だったらどうなのさ…」
「お前のその開き直る癖、図星だな?…くぞが!!てめぇ…!!!んなもん許すわけねぇだろ!!!!」
ばごっ!
後ろから後頭部に本気の拳が飛んでくる。
それで大きくバランスを崩して大いに減速し後ろに走ってる悪ガキのバイクにぶつかった。
「ちょっ!!!やばっ!!!」
後ろのバイクが焦って海側に方向転換してしまい俺たちはバイクもろとも海に飛び込んだ。
「ちっくそが!!!がぶっ!誰か助けや…ぶば!…っがれ!!!」
俺を含めた3人が必死にもがいて喚いている中、薬中だけがそのまま沈んで行った。
だんだん疲れてきてなすすべなく海に沈んで行く…
これはきっと天罰なのだろう。
クソで生きる価値のない俺たちへの天誅だ。
あぁ、願わくば、もし生きることができるなら、俺は、必ず、更生し、て、か、な、ら、ず、
深く深く落ちていく…意識も感情も水深も…深く、深く…
瞼の奥に灯りが籠る。瞳を開けると半透明のカーテンに包まれたベットに横たわっていた。
「あれ…ここ…病院…?…なんでもいいや。眠い…」
「お嬢様ー!?朝ですよー‼︎」
耳に少し高めの声が入ってくる。
「起きて下さーい‼︎」
自分の体をユッサユッサと揺らす。…お嬢様?ふざけているのか?
「んー…なんだよ…」
「大変申し訳ございません。本日は早朝の茶会があるゆえ、いつもより早く起こさせていただきました。今し方、お食事をご用意させていただきます。」
「は?なんなんだよ…おい、そこのお前。ここはd」
「おっはよ〜!アーーリースーー!!パパ今日から出張だけど寂しくない〜〜?」
そう言って体をぐるぐる回転させながら俺のいるベットに押し寄せてきた。
「ちょっ…」
「さっ、ご飯食べいこっか!」
俺は流されるまま部屋から出て食事処についた。
道中、メイド服を着た女性がかなりいて、ここは俺が住んでる所じゃないなぁとか思いつつ病院でもないことは明白だった。
多分夢?
うーん…なんで寝てんだっけ?
下を見るとカーペットの道ができていて、靴越しでもふかふかする。ここの家?はデカすぎて、あんまり靴を室内で履く違和感がなかった。
出てきた食事は、まぁ美味かった。ふっつうな味だった。
献立はスープ、パン、謎肉…かな?
んで、食後の運動として庭園を歩き回った。
薔薇とか青い薔薇とか黄色の薔薇とか…
あと…薔薇とか?
が咲いていていい香りではあったかな。その後、髪をブラッシングすることになり
鏡とメイドがやってきた
何にも考えずに鏡をちらっと見ると美少女の壁画が見える…
いや鏡だったよな…?
体の位置を少し動かすと、連動したように壁画が動く…壁画じゃない?
やっぱり鏡?
…うーん…まじかーよりにもよってアリス・アルデモンドになる夢かよ…
悪役令嬢じゃん…
俺は乙女ゲームが結構好きなんだが、このゲームは11歳の男女からなる物語で、主人公のクリスティア・フォルテマンドが立場とか関係なくズバズバ意見を切り出していくところがマニア層で一定の支持を得ている。
そして俺、アリスは、主人公に完膚なきまでにやられ、引きこもりになってしまうのだ。悲しきかな俺は夢でこんな貧乏クジを引かされたわけだ。さっさとほっぺた引っ張って起きよう。
………
「お嬢様!何をしていらっしゃるのですか!?ほっぺたなんか引っ張って!」
あれ?
ちゃんと痛いぞ?
「い、いや、なんでも、無い。続けてくれ。」
「はあ…」
んん?
おかしいなぁ。もしかして…転生?あ、思い出した。そういえば俺は他の奴らと連んで盗んだバイクで走り遊んだ挙句全員海に落っこちたんだっけ。最近奴らの度が過ぎてきて怖くなってきたんだよなぁ。タバコもノリで吸って吸わされ、タバコとか吸うために親から借りた金返したっけ。
あ…
父さん母さんに何かしてあげたっけ…
暴言ばっか吐いて感謝したっけ…
俺は…いや…僕は…一体何をしてきたんだろう。目頭が熱くなり頬が濡れていく。
あぁ…!僕は、僕は…!!
「…!…きっととっても悪い夢でも見たのでしょう。かわいそうに…大丈夫ですよ、私がついてます。」
そう言ってぎゅっと抱きしめてくれる。
目頭がさらに熱く頬全体が濡れていく。
「ごめんなさい…ごめんなさい…!ごめんなさいごめんなさい!」
「大丈夫…大丈夫よ」
僕はしばらくなきぐしゃった。
恩返ししなくては
父さんに、母さんに。
これは…試練なのだろうか。神様が僕に与えたチャンスなのか。僕はここで何をすれば良いのか。
分からない…
でもっ!!
僕はこの世界で正しく生きよう。これが試練でなくても。
「…私はお嬢様が大好きです!お嬢様が笑ってるお姿が大好きです!お顔、拭かして頂きますね。」
「ありがとう…」
「ふふっ、今日のお嬢様まるで太陽みたいに暖かいですね」
「あははっ、何それ〜」
「ふふっ、やはりお嬢様の笑顔はお美しいですね」
その後、僕たちはドレスに身を纏い馬車に乗りパーティー会場へと向かった。
この世界を乙女ゲーム、Christina ・melodyだとするなら、試練の制限時間は四年と考えていいだろう。
だとすると…
多分このパーティはこのゲームの舞台となる学園、アンスワルツ学園の入学祝いで間違い無いだろう。つまり主人公のクリスとの初対面になる
…と、な、れ、ば、選択肢は1つ!仲良くなることだなっ!
よーし頑張るぞー!
また読んでっ!!