4.sideセドリック
国王に即位したのは25歳の時だった。
前国王の父上が病に倒れ別れの日は突然だった。
悲しんでいる暇など無かった。
誰が敵で誰が味方なのかも分からない。
隙を見せたら攻め込まれる。
一秒も気が抜けなかった。
公務が落ち着いてきた頃から『そろそろ伴侶を』との声も出始めていたが、聞こえないふりをしていた。
どうしても気が進まなかった。
愛する人と結ばれた友人達を見ていると羨ましく思う時がある。
できる事なら心を通わせられる相手が良い。
そんな事を考えているのが知られたら大変だろうな。
王族としての自覚が無いと思われるだろう。
そんな時、彼女と出逢った。
一目見て分かった。
『彼女と出逢う為に今まで独りで生きてきたんだ』と。
誰にも渡したくない。
自分でも驚く程の独占欲が湧いてきた。
二曲続けて踊ったら困らせてしまうだろうか……。
もしも手を振りほどかれたら……。
そんな事を考えながら彼女の手を離せずにいると、周囲もざわつき始めた。
「君の手を離せそうに無いな…」
レイレナは、驚きの表情を見せたけど、すぐに2曲目を受け入れてくれた。
楽しそうにステップを踏む彼女が愛おしくてたまらない。
困らせてしまうのは分かっていたが言わずにはいられなかった。
レイレナ・ルグラン公爵令嬢に好意を寄せている1人の男として意識して欲しかった。
「私の伴侶になって欲しい」
自分でもずるいと思う。
国王に求婚されては簡単には断れないだろう。
問題も山積みだ。
まずは彼女の父親、リオネル・ルグラン。
簡単には頷かないだろうな。
リオネルの不機嫌そうな顔が脳裏に浮かぶ。
また、リオネルに嫌われてしまうな。