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我が家のメリーさん  作者: 不穏姫
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第零話

俺の名前は「桜 優多」

虹原中学校に通う、なんの変哲もない男子中学1年生。

…の、はずだった。


これは、俺がメリーさんと出会うまでのお話。


――――――――


そうだな。どこから話せばいいだろう。

俺は虹原中学校に入学して4日ぐらい立つ。

特に異能力やチートスキルと言った類のモノは無い。

あったら、今頃異世界で美少女にモテながら主人公人生が送れると思うと

羨ましい気持ちも無くはないが。


俺にとって、朝の時間は夜更かししてしまった事を後悔しながら

倦怠感と眠気に抗い起きる時間だ。


本来なら朝食の時間だが、いつからか取る事は無かった。


両親はすでに母が他界し、父親は単身赴任。

大きすぎる家で、この年齢ながら独り暮らしを謳歌してる。


「ふああ…」

朝に朝食を作る時間があるなら、1秒でも多く布団にうずまっていたい。

夜更かしをしなければいいのだが、ゲームとネットサーフィンは

止めときが分からないのだ。


昨日も8ちゃんねるのオカルト板等を眺めていた。もっぱらROM専だが。


そんな俺だが、別に寂しいといった類の感情は無かった。

むしろ一人で誰にも邪魔されず生活を謳歌出来る気持ちのほうが大きかった。


「さて…、学校いくか」


そう呟きながら、俺は制服に着替え、学校指定のカバンを背負った。



―…


俺は通学路となる道を歩いていた。

暫くは閑静な住宅街が続き、途中に八百屋や肉屋があり、

住宅街の出口の駄菓子屋の傍を抜けてしばらく歩くと学校へ着く。

入学式があったのが4日前。この通路も4日も通れば少しは慣れも感じる。


こんな所に駄菓子屋があるのも、この通学路が自分ら中学生だけのものではなく、小学生も使ってるからだろうと思う。


そんな通学路を歩いていると、

…そうだな。ここでは「Y」と呼ぶ。

そいつが声をかけてきた


「よう!優多!」


Yは自分とは似てもつかないスポーツ少年の典型的姿である。


「ああ、おはよう」


Yは入学早々、即入部したサッカー部に関する話題を出していたが、

特にサッカーを含むスポーツに思い入れの無い俺にはどうでもいい話題だった



「ふーん」や「へぇ」に等しい相槌を打っているとYが声を大きくした。


「…おい!あれ見ろよ!」


「なんだ?」


ゴミ捨て場には黒いビニールに包まれたゴミと一緒に

西洋人形と思わしき等身大…とは言わずとも、1mほどの人形が捨てられていた。


「何か珍しいものが捨てられてるな!」


その人形を見て、ふと小学校時代に図書室の怪談話の本で読んだ

『メリーさんの怪談』を思い出した。


「うわぁ…気味わりぃ」


「たしかにな」

Yはそう呟くと、人形から目線を外し、通学路のほうへと向き直した。


この人形が動き出して、俺に襲ってくるかもしれない。

そんなことを考えながら人形を眺めていると


「おい!優多!」

「あ、ああ」


その声で我に返った俺はYのところまで駆け足で歩いた。



――…


ぎりぎりではなく、難なく学校に間にあった


俺は窓際近くの、左右は左が空席、右はYの席の一番後ろの席に座ると、

今朝見た人形の事を考えていた。


きっとただの人形だろうと思う事にした。

学校が終わって家に帰った時に不審な着信が入ったりすること等ない筈だ。

現に俺のメールアドレスや電話番号は父親しか知らない。

Lineの連絡先はYだけは知っているが。


そう考えてる間に朝の会が始まり、朝の会が終わり、授業が始まる時間となった。


何の変哲もない授業だ。


授業は淡々と進んだが、頭の片隅で、今朝みた人形の事が頭にこびりついて、授業に集中することができなかった。


そんな感じで6時間の授業を終えて帰りの会へと繋がった。


――…。


下校中、朝に人形を見つけたゴミ捨て場の前を通ると、人形は消えていた。


「まぁ、気のせいだよな」


そう思う事にし、帰宅を続ける事にした。


――…


帰宅後、着替えを終えてスマホゲーをしようとスマートフォンを握ると

スマートフォンに着信の振動が生じる。


「誰だ?」


LINEだろうか。Yがなんかまたくだらない事を送ってきたのか。

そう思ったが、スマートフォンが震え続けている為、通話の着信だと思った。


「親父からか?」


俺はスマートフォンを起動し、電源を入れたが、着信者は不明。

俺は怪訝に思いながらも、通話に出る事にした。


「もしもし」


『…』

沈黙から3秒後。


『私、メリー。今、駄菓子屋の近くにいるの』


という無機質な女の声が響いた。



瞬時に俺は通話を切断した。



一瞬、心臓が止まりそうになった。



件の、あの人形だと察した。


駄菓子屋と言えば、学校の通学路に行く途中にある駄菓子屋の事だ。


どうしたものかと破裂しそうな心臓の鼓動を抑えつつ考えていると、

再度、携帯が震えた


新たな着信だ。


「!?」


俺は振動を続けるスマートフォンにかかる、その電話を着信拒否にした。

効果があるかは分からないが、連絡手段を断ってしまえば

メリーさんがこちらに近づいてくる事は無いだろうと思ったからだ。


俺はスマートフォンをそのへんの机に置き、いつものネットサーフィンに興じようとしていた。

PC版のツイッターを開き、TLを眺めた。


これが間違いだった。


「ん?」


滅多に反応が無い俺のツイッターに1件の通知が来ていた。

それを見ると、



―――――



メリーさん@merry3


私、メリー。今、魚屋さんの前にいるの



―――――


俺は速攻でそのユーザーをブロックした。


「っ…」


最近の怪異はツイッターすらやるのか。



俺はツイッターを閉じ、Googleの検索欄に

「メリーさん 怪談 対処」という検索ワードで検索した。

あるとは到底思えないが、藁にもすがる思いだった。



―――――


_________________________

|メリーさん 怪談 対処         |

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

もしかして → 私、メリー、今八百屋の近くにいるの


―――――


ネットの検索結果にすら干渉してくるのかよ!!



俺は即座にパソコンの電源を切り、机に置いたスマートフォンに手をやった。

スマートフォンを手に取り、日課のスマホゲーをやろうとした。


「フレンド」の項目に1件の新着があった。


「まさか…」


――――――


1件のフレンド申請が届いています


名前:メリーさん

一言メッセージ:私、メリー。今、あなたの家の玄関前にいるの


リーダーキャラ:陽光の神アマテラス


――――――


フレンド申請を速攻で却下し、俺はゲームのアプリを閉じた。

ていうか奴はすでに玄関前に来ているらしい。


割れそうなほど心臓の音が頭に響く中、俺はふと

「壁を背にして対応する」という、メリーさんの怪談を語るスレで

大喜利のように書かれた対処法を思い出した。


「これだ!」


俺はスマートフォンを片手に、壁を背にしながら、奴の次のアクションを待った。


スマートフォンが震える。

俺は意を決してスマートフォンを起動すると、

標準のメールアプリに1件の着信があった。


それを開くと


――――――


from:merry3@dcm.ne.jp

to:yutayuta@izweb.ne.jp


件名:私、メリー

メッセージ:今、あなたの後ろにいるの


――――――


ついに奴が背後に来てしまった。

意を決して後ろを向くと。



下半身が家の壁に埋まった人形が埋まっていた。


「うわああああああああああああああああ!!」


思わず持っていたスマホを床にたたきつけると、

俺はその怪異と向き合いながら、座り込みながら3~4歩後ずさりした。


4~5秒ほど、その異様な光景に言葉も浮かばず見つめていた。



……


………


「…な、なんだお前は!」


一時の静寂。

1秒が1分に感じるほどに感じた後。


「私、メリー」


「知ってるよ!」


さんざんスマホ越しにアクション起こしてきたからな。

問題はこの人形の名前がメリーである事ではない。


フィラフィルディア号事件の都市伝説のように壁に埋まった人形を眺めながら、

次は何をするべきか、考えた。


「ちょっと待ってください。今から壁出ますから」


「一生埋まってろ」


「え?それはメリーがずっとここに居ていいという事ですの?」


「撤回する…消えろ!」


その一言と共に、人形は姿を消した。


目の前の異様な物体が消えてから、4~5秒ほど立った。


「え…マジで消えたか…?」


と思った束の間。


「今、あなたの背後にいるの」


「うわぁっ!」


振り向きながら、1~2歩後退した。


「まだいるのか!」


まずい。この人形が壁から抜け出して自由を得てしまった。





「逃がしませんよぉ」





これが、俺とメリーさんとの最初の縁となった。

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