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偉人に恋した  作者: 長谷川ゆう
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私が恋したのは偉人だった

「別れた」

職場で、と言うよりは家で翻訳の仕事をしているためか土橋サクラは1日50回はこの言葉をパソコンの前で口にしている。




「いつまで、ひきずるのお!」

隣の部屋でシェアハウスをしているイラストレーターの田仲由実が部屋のドアをのぞきんで、うんざりした顔をした。



「だって、私30だよ?結婚まで考えてたんだよ?それが26の途中から出てきた女にとられたんだよ?ただですら出会いもない仕事してるのに」

サクラは、ぶつぶつ言いながらもタイピングは止めない。




日本で発売されるアメリカの新書の翻訳の締め切りが、明日の午後までなのだ。



時計を見ると、すでに0時を回っている。



「サクラ、私、明日の打ち合わせ早いから先に眠るね」

由実は、なんだかんだ話を聞いてくれる。シェアハウスをしたのは確か元カレと分かれてからだから、2年目だ。



「いつも、ごめんね」

由実を見ると、由実も締め切りが近いのかくまがある。いいよ、と笑っているがお互い、周りは結婚、出産で、お金も出ていくが、虚しさも出ていく。



由実が自分の部屋のドアを閉める音が聞こえたので、静かに台所まで行きコーヒーを入れて、サクラは自分の部屋のドアを静かに閉めた。



パソコンの1番真ん中の画面に、メール着信のアイコンがある。




こんな時間に?出版社からは連絡はこない時間だ。


タイトルを見ると見たこともない言語が5文字あった。



フィッシングかいたずらメールだろうか?それにしては、添付されているものが1つもない。




英語でも、フランス語でも、ロシア語でも、ヨーロッパの国の言語でもない。




仕事と人生の煮詰まりを感じていたサクラは、もともと言語に興味があるため、仕事の原稿は、保存して、ロックし、そのメールを開いた。




200文字くらいだろうか。句読点も特になくずらずら続いて書かれている。文章の最後に「?」がついている。



その最後には、分からないが3文字だけある。メールの送り主だろう。



削除するか迷ったが、明らかに困っているような切迫した文字列。最後には「?」どこかに、送り間違えたのだろう。




英語なら、さすがに通じるだろうか?



その前に、サクラは世界の言語が載っている事典を引っ張りだし、どこの国かを調べだしてみた。



言語の形からいって、アメリカ、ヨーロッパではないだろう。残るはアジア。




日本国を除いてアジアの言語を探すと小国から大国まで、意外に多くの数の国があったが、メールの言語と合わせてもなかなか見つからない。



さすがに、仕事に取りかからないとまずいので事典を閉じようとした時だった。




「あった・・・」

とても小さなアジアの東北にある国だ。



「aekjrok?イークジロク?」

翻訳家として働いてきたが、初めて見る国だった。事典にも挨拶や少しの例文しか載っていない。



このメールが、サクラと偉人との出逢いだとサクラが知るのはずっと先の事だ。











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