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処刑請負人  作者: Tタカ
1/1

絶望の世界で死神は何を想う。

初投稿なので文章とか構成とか色々未熟です。

暖かく見守ってください。

「人間は死ねなくなった・・・」


20年前、ブラジルを発生源に<不死ウイルス>が世界中に広がった。

不死ウイルスに感染した者は<不死病>と呼ばれ、大怪我負っても、空腹で飢えても、 大病を患っても、 

人は死ねない・・・


 不死病は急激な人口増加を招き、社会システムが崩壊していく。

各国の研究機関は<不死ウイルス>に対抗するため、とある武器を開発する。通称<グリムリーパー>と呼ばれ、この世界で唯一、人間を殺す武器であり、方法である。

 日本政府は社会システムの維持のため、20歳以上の国民に向けて<生存権>を高値で販売する。購入できた者は生き残り、購入できなかった者は<グリムリーパー>を用いて執行(処刑)される。

 その執行を担当するのは法務省管轄の<執行局>である。そこに所属する者は<執行官>と呼ばれ<グリムリーパー>の使用を許可された唯一の職種である。


香山悟は執行官だ。彼はこれから人間を処刑する・・・


----------------------------------------------------


貧民街のとある家屋、家の中はボロボロでカビや蜘蛛の巣が散らばっている。


「そろそろです・・・ 最後に言い残すことは?」


香山は目の前にいる、痩せこけた男に問いかける。


「何もありません・・・ なにせ生まれてからずっと空腹だった。」


男は頷きながら答える。


「最後に美味しいご飯を食べさせてくれありがとう。香山さん、ようやく私は楽になれる。ずっと空腹で、ナイフに刺された事もあったな。 なんだったんだろ俺の人生・・・」


男は安堵に満ちた顔をしていた。

よほど苦しかったのだろう、この人の顔を見ればわかる。


「それは良かった。ではこの辺にして・・・」


香山は神妙な顔をして、ポケットから銃型の<グリムリーパー>を取り出し、銃口を男に向ける。


「では、20歳の誕生日おめでとうございます。あなたの次の人生が幸福である事を祈ります。」


男の頭に<グリムリーパー>を打ち込む


この人にとって死は希望だったのだろう、死を迷いなく受け入れていた・・・

どうか安らかに・・・


「コツン、コツン」


後ろから足音が聞こえる。


「終わったか?」


香山に声を掛けたのは<石田 英司>、執行局課長で香山の上司である。

石田さんは普段はふざけた人だが職務になると切れ者になる。俺を執行官として拾ってくれた人もこの人だ。つまり恩人だ。


「えぇ、終わりました」


「安堵に満ちた顔をしてるな。よほど生前は地獄だったのだろう・・・」


石田さんも俺と同じ事を言ってる。


「石田さん、俺この人埋めて来ます。彼の要望です。母と一緒の場所に」


石田さんは俺を不思議そうな顔で見てる。

それもそうだ、他から見れば俺の行動は職務から逸脱しており、不思議なのだろう。


「律儀な奴だな、俺たちの仕事は執行対象者の要望を叶えること、そして執行時間がくれば処刑すること。死後は職務外だ。」

「お願いします。石田さん」

「優しんだな。まぁいい」

「ありがとうございます」


------------------------------------


香山と石田は移動して車に乗り貧民街を移動する。


「相変わらず、酷い匂いだな・・・ この街は」


確かに酷い匂いだ。それもそのはず、この街の社会基盤は崩壊している。排泄物やゴミはそのまま街に垂れ流しだ。とてもじゃないが人間が住む場所ではない。


「空腹に耐えかね自分のうんこを食べる奴も居るみたいだぜ。俺らとは住む世界が違う。」


石田さんの話を聞いて、過去の記憶が脳裏に浮かんでくる。

俺も貧民街の出身だ。幼少期はここの住人みたいな生活を送っていた。

俺の母親はヤクザ経由で大富豪に売られ、そこで働いていたらしい。働いた金で俺の生存権を買ったらしいが・・・

どんな仕事をしていたかは想像したくない。


「生き地獄ですね。早く死なせた方が良い」

「上はそうは思っていない。弱者を食い物にする業者もいる。そんな奴らのために20歳までは生かす。それが上の方針だ」


汚い商売だ。貧民街出身だからこそ、そのような人種が大嫌いだ。


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ナイフに刺された男性が路上に倒れている。


「ナイフで刺されてる」

「助けましょうか」


香山は思わず石田に問いかける。


「やめとけ。俺たちの仕事はあのような人間を殺す事だ。下手に関わり情でも抱いたらどうする?」


その通りだ。反論できる余地がない。しかしそれでも助けたいと言う思いが湧いてしまう。それは俺が貧民街の出身だからだろう。


「でも・・」

「でもじゃない!」


思わず石田さんに反抗したが、すぐに話を遮られた。。


「プロとして自覚をもて!」


石田さんは凄んだ声で俺を嗜めた。その威圧感に押され口の筋肉が硬直したのか、何も喋れない。


「すいません」


ようやっと開いた口で力なく答える。


-------------------------------------------


ようやく執行局事務所に帰ってこれた。

ここは貧民街の家屋とは違って清潔だ。


「誰もいない」

「緑ちゃんはいるはずんんだけど・・・」

「お疲れ様です。石田さん  香山」


後ろから大巻先輩が話しかけて来た

大巻さんは26歳の気の強い女性で、誇りを持って執行官という仕事についている。


「今日もかわいいね緑ちゃん」

「セクハラですか。キモいです。死んでください」


石田さんと大槇さんの関係はいつもこんな感じだ。立場上石田さんの方が上なのだが・・・たまにどっちが上司かわからなくなる。


「香山! 今から現場に行くけどついて来い!」

「了解です。 大巻さん」


大巻さんに指示をされたら、断れない。この人の気の強さは鬼だ。


--------------------------------------------------------


車で現場へ向かう大巻と香山


やはり大巻さんと2人きりで車に乗るのは慣れない。ずっと大巻さんの逆鱗に触れないように気を使っている。


「お前、今から行く現場の資料には目を通したか?」

「あぁ、すいません。読んでないです。」

「テメェ、なめてんのか!」

「すいません。」


クソ!俺のばか! なんで読んでこなかったんだよ!

なんとか大巻さんの怒りを鎮めなければ・・・


「大巻さん、石田さんが褒めてましたよ。普段の業務について、優秀だって・・・」

「話そらしてんじゃねぇよ!」


だめだ収まらない。もう受け入れよう。怒りを・・・


「まぁ良い、とりあえず今から説明する。」


よかった〜 とりあえず助かった。


「執行対象者は大山早苗という女だ。<石倉 一>という同性相手がいて、子持ちだ。ちなみに石倉は3ヶ月後に執行予定。」

「子持ちですか・・・」

「あぁ、厄介なことにならなければ良いが」


子持ちの対象者の執行は、子供を理由に執行直前で駄々を捏ねるケースが多い。

俺はまだ子持ちの現場に居合わせた事はない。子供を残して執行されるとは、どんな気分なのだろうか。

考えたくもない・・・ 考えたところで執行することに変わりはない。


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香山と大巻は執行対象者の自宅前に着く


「ここですか」

「そのようだな」


執行対象者の家は綺麗に整理されていた。

貧困街とは思えないくらいに整理整頓されている。しっかり者の対象者なのだろう。


「失礼します。執行事案の通告に参りました」


大山早苗が玄関まで迎えに来た。

早苗はショートのサラサラ髪で、清潔感のある顔をしているが、服装は貧民街の住民らしく汚れている。


「そうですか・・・ ようやく」

「どうした、 早苗!」


早苗の同棲相手の石倉が姿を現す。石倉も早苗同様、清潔感がある顔をしているが服が汚れている。


悲しげな表情を見せる大山に対し、申し訳なさの気持ちが湧いてくる。

だが仕方がない、これが俺の仕事だ。


「大山早苗さん、あなたは一週間後に執行予定です。単刀直入に聞きます。死ぬ前にやりたい事はありますか?」


「そうですね・・・ 最後に美味しいご飯をいっぱい食べたいです。 家族3人で・・・」

「私も同じ意見です」

「よかったな早苗 ようやく楽になれる・・・」


早苗を労う石倉の顔は寂しさを含んだ表情だ。悲しくないわけがない。大切な人が死ぬのだ。


「食べたいものは?」

「ちょっと待ってください。 美紀!」


美紀とは彼らの子供の名前だ。一体どんな子なのだろうか。資料には5歳の子供がいると聞いていたが・・・


「なぁにママ?」


美紀は服装も綺麗で両親2人に大切に扱われている事がわかる。


「食べたいものはある?」

「いつもの飴玉でいいよ!」


飴玉か・・・ 

彼らの悲惨な生活が手にとるようにわかる。


「違うのよ、美紀。今回はもっと美味しいものでいいの。」

「じゃぁチョコレート! 小さいのでいいから。」

「みき・・・」


石倉と大山は涙を流す。

右を見ると大巻さんはなんとも言えない感じの、やるせない顔をしている。

俺だってそうさ・・・ この状況を見て、できる事なら助けたい。


「ごめんなぁ みき・・・」


そう言った石倉は美紀を抱きしめる。

美紀は泣いてる両親を見て、不思議そうな顔をしていた。

おそらく、この子は両親が執行される事を知らないのだろう。


「あの・・・ 色々な食べ物が食べれる店がいいです。いろんなものを食べさせたいです。」

「わかりました。そのような店を手配します。期日は執行日前日の6日後でいいですか?」

「はい。」


もう見てられない、これ以上は考えたくない。


「帰るぞ 香山」

「はい」


---------------------------


大巻と車で帰路に着く


「お前、下手な同情はするなよ・・・」

「わかってますよ。一週間後に対象人を執行して終わりだ」


そう言いながらも、子供の笑顔が脳裏に浮かぶ。

チクショー、救い用のない世界だ。


------------------------------


執行前日


大巻と香山は対象者をビュッフェに連れていく。


「つきました」

「ここか・・・綺麗な店だな」


石倉は物珍しそうな顔で呟く


「ラーメン! ステーキ! 寿司!」

「楽しみだね! 美紀」

「うん!」


美紀の表情は嬉しそうだ。

その顔を見ると、少し罪悪感が湧いてくる。

明日には、この子の母親がいなくなる。そして3ヶ月後には父親も・・・・


「では、楽しんできてください。大山さん、石倉さん」

「あぁ、感謝しなきゃな君たちには、店だけではなく、こんな綺麗な服装も用意してくれた・・・ ありがとう」


店に入ってく家族3人

その後ろ姿は、中の慎ましい理想の家族だ。


「香山! 警戒を怠るな。」

「警戒?」

「あの家族は愛情深い。だからこそ生にしがみつく可能性がある。 例えこの先が生き地獄だとしても、死を前にすると失うものの深さに絶望するのさ。」


そうだ、その通りだ。気を引き締めよう。

そう思い、俺は2回頬を叩いた。


「もし、逃げ用とした場合は、その場で射殺だ!」


「わかりました」


------------------------------------


食事を囲む3人


「美味しいか美紀?」

「うん」


石倉は美紀が頬張っている姿を見てニッコリと笑う。

その表情はは明日に早苗が死ぬ事を感じさせない・・・


「ねぇママ! なんで今日はごちそうなの?」

「ママね、頑張って働いたの。これからもいっぱい食べましょ!」

「ホントに!」

「ホントよ。」


早苗と美紀の会話を聞いた石倉は寂しげな表情を浮かべる。

もっと生きたい・・・ 早苗と美紀と・・・

明日に早苗が死ぬなんて考えられない。

けど、これ以上早苗がこの世界で苦しむ姿を見たくはない。

俺はどうすればいい・・・


「美紀大事な話があるんだ・・・」

石倉は神妙な顔で美紀に話しかけた。


------------------------------------------


「美味しかったかお嬢ちゃん」


香山は美紀に尋ねる。


「美味しかった!」

「それはよかった」


美紀の表情は屈託のない笑顔だった。

よかった、取り敢えず何もなくて。


「あれ、奥さんがいないようですね・・・」


大巻が石倉に尋ねる。


「あぁ、今ちょっとトイレに行っててな、後から来ると」


大巻は石倉を怪しんでいるようだった。


大巻の問い詰められる石倉だが、急に瞬きの数が増える。

それを見た香山は怪しさを感じる。


動揺している・・・ まさか・・・


「香山! この男を監視しろ! 私は女を探す。」


大巻が声を荒げて指示をする。


「くそが!」

「大巻さん!」


石倉は持っていたスタンガンで大巻を襲いかかる。


大巻は石倉の攻撃を避け、すぐにカウンターの蹴りを入れて瞬く間に石倉を取り押さえる。


さすがだ・・・ 大巻先輩


「香山! お前が女を探せ!」

「はい!」


香山は店の中に入ってく。


「大人しくしろ! 執行対象者の逃避幇助は重大違反だぞ!」

「知ってるさ・・・」


石倉は不適な笑みを浮かべて答える。

何かがおかしい・・・ 何かを企んでいる・・・


石倉の不適な笑みをみた香山は漠然とした不安に襲われる。


「ごめんね・・・ おねぇさん」

「!」


美紀はスタンガンを大巻の背中に当てる。


「ガァ! スタンガン・・・」


大巻は倒れて、石倉は美紀の手を握る。


「行こう! 美紀」


走って逃げる石倉と美紀


「生き残る。3人で」

石倉と美紀は南の方向へ歩みを進めた。


----------------------------------


香山は店の中を探している。


「どこだ・・・」


店の中にいなければ、大山早苗は逃げたことになる。そうなるとこの場で夫も殺さなければならない・・・

そんな不安を抱えながら香山は店中を探す。


突如、香山の携帯がなる。


「私だ!」


電話は大巻からだ。

大巻は焦っている様子だった。


「石倉が逃げた! そっちは」

「マジですか! こっちもまだみつかっていないです。」


「おそらく、もう女は店にいない。一回戻れ」

「はい」


香山は絶望した。

こうなる事は考えたくもなかったのだろう。

今日この日あの家族は犯罪者として汚名を着せられる。


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「大丈夫ですか? 大巻さん。」

「情けない・・・ 自分が嫌になる。 子供にまで意識を裂けなかった。」


大巻は悔しがり、何度も自分の膝を叩いていた。

それだけ、この仕事に誇りを持っていた事がわかる。


香山は携帯を取り出し、石田に電話をかける。


「石田さん 対象者が逃げました。」


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街中を走って逃げる大山早苗

綺麗な服装とは逆に青ざめた顔で、汗だくだった。


「みんなで生きる・・・ この残酷な世界を・・・ 家族一緒ならどんな世界でも生きていける・・・」


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30分前の家族3人での食事シーン


「美紀大事な話があるんだ・・・」

「なに?」


石倉は深呼吸して間を置く。


「ママは明日死ぬんだ・・・」

「え!」

「この国ではね。20歳以上の貧乏な人は死ななければならないの。」

「嫌だ! ママとパパと一緒に暮らすの!」


石倉は涙を浮かべる。

オレは・・・ なにもできない。 無力だ。

石倉は涙で溢れ、まともに口を動かせない。


「美紀、パパもね3ヶ月後には死ぬの。だから最後に美味しいものを食べて欲しくて・・・」

「いらない! そんなものはいらない!」


大山は美紀の返答を聞き、何かを決断した様子だった。

子供を1人にはできない・・・ 親としては当然の感情、それが彼女を決断させるには容易だった。


「ねぇ美紀、これからいっぱい苦しい事がある。お腹も空くし、こんなご飯二度と食べられないかもしれない。それでもパパとママと一緒にいたい?」

「飴玉でもいい! 文句も言わない! だから一緒にいたい!」

「一さん・・・」

「あぁ」


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石倉が計画を立てる


「オレが執行官の2人を引きつける。早苗は、その間に逃げろ。」


「美紀にも大事な役割がある、スタンガンだ。」


美紀にスタンガンを渡す石倉


「使い方は前に教えたよな。」

「うん」

「執行官は美紀のことを子供扱いしている。執行官が油断している隙にそれを使うんだ。 できるか?」

「頑張る。」

「よし、 いい子だ」


石倉は美紀の頭を撫でる。


「早苗、合流地点は河川敷の橋でいいか?」

「わかった」


「生きよう! みんなで。」


石倉は覚悟を決めた・・・ 家族を救うため。


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合流地点の橋で早苗をまつ石倉と美紀


「早苗まだか・・・・」


「あっ ママ!」


早苗が2人の元へ駆け寄る。


「ごめん、遅くなった。」


早苗は走り疲れた様子だった。


「まだ、走れるか?」


早苗を労う石倉


「この先アテはあるの? 本当に大丈夫なの私たち・・・」


彼女は不安げだった。生き残りたいとの欲求の反面、自分の家族まで一瞬にして失ってしまうのではないかという恐怖との狭間で、今更ながら後悔の念を少しだけ抱いていた。


「ない、それでも行くしかない。」


石倉は早苗の感情を察して言う。

彼も今更戻る事はできない。


「そうね・・・」

「行こう! 美紀 早苗」


再び足を進める家族3人


「動くな!!」


香山が家族の前に現れる。


「テメェ」


石倉が香山を睨みつける


「これは重大な違反だ。違反を犯したものはその場で射殺だ。」


香山は自責の念に駆られていた。

もっと警戒していればこんな形にならずにすんだ・・・


「なにが悪い!家族を守ろうとしてなにが悪い!」


石倉が声を荒げる

なにも悪くない。香山自身もわかっている。むしろ人として当然の行為なのだ。

しかし香山は答える。


「人を増やさないためだ。」

「そんなもののために、上が勝手に作ったルールのために死ねってか!」

「しょうがないだろ、それがルールだ。」

「しょうがないだと・・・ それで済ますのか? 俺たちの人権はどうなる! そんなもののために人の命がどうなってもいいのか!」

「それで済ますしかないんだよ、石倉さん。 人は死ねない体になったんだ。増え続けるんだよ人間が・・・ 

どこかで歯止めをかける必要がある。それがあんたらだ」


「子供がいるんだ・・・ 美紀には寂しい思いをして欲しくないんだ。 だから、頼むよ・・・」

「だったらなんでその子を産んだ! こうなる事は分かっていたはずだ」

「あんたには分からないだろ! 美紀は光なんだ! 地獄の世界で生きる俺たちとって、唯一の・・・ あんたみたいな<生存権>を持つものには分からねぇだろうがよ。」


香山はグッと唇を噛み締める

香山はわかっている。彼自身も貧民街出身で地獄を経験した身として、何かに縋らなければ生きる意欲をなくすことを・・・


早苗が香山に近づいてくる。


「香山さん・・・ もう逃げません。だから2人を見逃してくれませんか・・・」

「無理です・・・ 。」


早苗が土下座をする


「お願いします! どうか・・・」

「早苗・・・ お前・・・」


石倉が不意に口を出す


その直後、香山は銃を構える


「石倉さん。これがオレの仕事です。」


香山は早苗の眉間にグリムリーパーを打ち込む。


「早苗!!!!!」

「ママ!!!!!」


「くそ! なんでこんな事に」


石倉は青ざめた顔で地面に自分の拳を叩きつける。

相当な強さで地面を殴り、石倉の拳は血だらけになっていた。


「次はあなたです・・・ 石倉さん。」


香山の声は若干震えていた。


石倉に銃口を向ける


「やめて!!」


美紀が石倉の前に立つ


「どけ!」

「やだ!」

「どけ!」

「やだ!」


美紀の必死な姿を見た香山。

オレがここで石倉を殺して、この子はどうなる。誰も見てない、今見逃せば、2人にとってはいい事なのかもしれない。

どうすればいい・・・ 何がベストな選択だ? オレは・・・


銃を下ろす香山。

これでいい・・・ 少なくとも今は・・・・


「撃て!!!! 香山!!!!」


大巻が香山に怒号を飛ばす


「大巻さん・・・」

「お前、舐めてるのか。 私たちは執行官・・・ 人口バランサーとしての使命を受けている。規則に背いたやつは即死刑。人助けじゃねぇんだよ、ボケが。」


再びゆっくりと石倉に銃口を向ける香山

甘かった・・・ プロとして・・・ オレは執行官、苦しむものを<死>という希望を与えるためにこの職業についた。


「どけ。お前も撃つぞ、ガキ。」


香山は美紀を威圧する。

美紀は香山の威圧に少し怯んだ様子だった。


「美紀、どきなさい」

「パパ・・・・・」


石倉が美紀を手で退ける。


「美紀、必ず希望はある。成り上がるんだ・・・ このクソみたいな世界を・・・ お前なら必ずできる。」


石倉は立ち上がる


「さぁ撃てよ・・・・ <死神>」


香山はじっと石倉を見つめる。

誰かが言っていた、執行官はこの世界で唯一<死>を与えられる存在であることから<死神>だと・・・


「じゃぁな、お前の次の人生が幸福であることを祈ってる・・・」


石倉の眉間にグリムリーパーを打ち込む



















































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