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ウーバーイーツ物語  作者: わるタンUber
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ギルっちょ!お前の志しは俺が受け継ぐ

わるタンの幼馴染みのギルっちょ。わるタンは彼の勧めでUberを始めた。

雨降ってきたな〜

ギルっちょ張り切ってるだろうな〜


ギルっちょは幼稚園からの幼なじみだ。俺がUberを始めたのも、ギルっちょが一緒にやろうと勧めたきたからだ。あいつはカエルだ。雨の日に頑張る奴にはカエルのアイコンがつく。店の端末にもお客さんの注文画面にも。一回だけ俺にもついた。配達先で「これなんのマークwふざけてんのw」と言われ、それから嫌いになった。しかし、ギルっちょはこの称号に誇りを持っている。あいつ、昔からそうだったよな〜


小学校低学年の時だったか。休み時間の運動場でのよくある一コマ。滑り台を木の葉舞い落ちるかの如く可憐に下降してくるナオちゃんのスカートがめくれてしまった。クソガキども、こことぞばかりに、パンツー丸見えの大合唱。のち個々の嘲笑の声が辺りに響く。緑ダッセー!花柄可愛くね〜。ナオも負けてはいない。この変態どもと罵っている。このドンチキ騒ぎに首を突っ込んでいったのが我らがギルっちょ。割って入ってみんなに一括!


「緑じゃねーし、若草色だし!花柄じゃねーし、カエルだし!もっとも黄色に滲んでひまわりに見えないこともない!」


ナオが顔を真っ赤にして、泣きながら先生の所に走って行き、その後、なぜか俺も一緒に怒られた。ギルっちょに、お前しっかり見てるやんwどんだけ目がいいねんwって言っただけやのに。


でも俺は知っている。その日の下校時、予報通り雨が降り出したのに、傘を持ってこず帰れないなおに、


「俺、カエルだから。」と言って、自分の傘を、差し出したことを。


そんなギルっちょは、雨が降ると必ずといっていいほど、ウバりにでている。特に雨インセの無い雨の日に。


今日は夕方から予報に反して雨が降り始めた。雨インセはついていない。ついていても俺はやらない。危険すぎるからだ。本降りの日に稼働した際、下り坂フルブレーキで止まらず、もう少しで赤信号の交差点に突っ込んでしまうとこだった。それ以来、雨の日は苦手だ。カエルもついちゃうし。


雨の日に好んでかけるショパンの雨だれを聴きながら、ちょっとうとうとし始めた時だった。スマホの振動がガラスのテーブルに共鳴し、俺の踵の神経を伝って脳の覚醒へと連なっていく。


「おまたせしました。わるタンです。」


俺が電話を受ける時の第一声。Uber始めた頃、妻からの電話にこう応えてしまい爆笑されたが、俺のお気に入りだ。


「わるタン、手伝ってくれ。どうせ暇だろ?」


ギルっちょからだった。やっぱりウバっていた。ギャン鳴り中らしい。


「どうした?また住所不備か?最近、〒ばっかだもんな〜」


〒のみの表示は注文者の住所入力不備により発生する。っていうか入力画面わかりにくすぎだろ。この入力画面。多くの配達員がサービス開始当初から何度も何度も改善の要望を出している。未だ一向に解決されず。日本の住所表示がガラパゴスすぎるのか?俺も10回ぐらいUberの注文をしているが、未だ上手くいった試しがない。この頃はもう入力を諦め、現在の位置で注文した後に、配達メモに住所や建物名、特徴や部屋番号を書くようにしている。そうするとピンずれを防げるし配達員もわかりやすいと喜んでくれる。あと〒以外にhomeという表示もあるのだが、これも謎wよくわからん(笑)


「どうした?ギルっちょ。俺の助けが要るなんて。俺が認める猛者のお前が!」


配達回数1万回以上の、特にできる配達員を、俺は猛者と呼んでいる。彼らの何が凄いかって?配達スキルが尋常じゃ無いんですよw 配達目的地を嗅ぎ分け突き止めるあの能力は警視庁捜査一課以上かも?


ピンずれ、住所間違い、マンション名のみ、部屋番号なし。住所が神戸市しか表示されずピン位置は市役所も。そんな配達を1件1件、試行錯誤を繰り返しながら、1万回するんだから、そりゃ〜自然とアビリティーが向上していきますわw


住所がわかれば郵便配達員、建物名がわかれば宅配配達員、住所も建物名もわからなければUber配達員が最強でしょう!


そんな猛者のギルっちょからの救援要請。面白くなってきた〜

寝てる場合じゃないぞ。

パソコンの電源を入れPodsを耳に挿し戦闘準備完了。


「配達開始後、数分したら、強制配達完了。その間隔が狭まっている。俺がこの前渡した緊急対策マニュアルの入ったフォルダ、開いてくれ。」


「はいはいフォルダっと、開けるよ。ククク」


「わるタン口調はよせ。イラっとくる。」


「イライラすると事故りますよ~、フォルダ開封、ポチっとな~ ん?何だこりゃ~」


おいおい、開封したとたん実行プログラム走り出したよ。

どんどん窓でてくるよ。

やめてよ~

ウィルス?

スパム?


「俺のパソコンに何した!」


「大丈夫だ。それより対策Gをクリックしてくれ。配達開始画面を送った。その画像ファイルをそこにぶち込んでくれ。」


言われるまま送られてきた画像ファイルを指定の場所に送る。勝手に画像認識ソフト起動する。なんか格子状になっていろんなシミが発生しているマップ出てきたよ。目的地予測候補が次々でてくるよ。お前なに?いったい誰?情報通信系の大学院をでたのは知っていたが、これ個人レベルの仕事?


「なんなんこれ?お前、変態?」


「俺のことなんかどうだっていい。画面にでた最終コードを言ってくれ。」


「FA9C5」


「あ-」ガチャ。


きれやがった。続く言葉が「あほ」なのか「ありがとう」なのか気に、、、なっている場合じゃない!このコードなんなん?出てきたマップを見る限りどうも座標と配達先予測のパターンらしい。これだけで配達できるのか?こいつマジやばいやつやん。これからはちょっと距離置いて接しよう。


雨が降りやまぬ中、そんな配達が2,3件続いた。配達開始画面はもうほんの数秒しか表示されないらしい。ちょっと待てよ。それってもしかして、配達員のピック後キャンセルになってるんじゃないか?Uberのシステム上は!それを連続で!それってアカウント停止?いや永久凍結案件ちゃうん?


また、かかってきた。まだ、次の配達を受けてるのか。


「ギルっちょ。これ続けたらやばいんちゃうん?」


「ああ、わかってる。」


「知ってて配達続けてるのか!なんで?すぐやめろ。」


「ここでやめるわけにはいかない。」


「お前!そこに待ってるお客様がいるかぎり~とか言うんじゃねえだろうな?」


「いや、これは俺との闘いなんだ。ここで辞めたら俺はもう俺じゃない。わかってくれ!」


わかるか、ぼけ!と内心では思いつつ


「わかった。俺はもう止めない。納得いくまでやってくれ。何かあった時は、お前の志は俺が受け継ぐ!」


なんか知らんけど、決まったぜ!ククク(笑)


***


後日、どうなったかって?

あ~ギルっちょは、みんなの予想通りアカウント永久凍結になったよ。

いくら事情を説明してもダメなんだって。


ギルっちょがなぜ雨の日の配達にこだわっていたのか今でもわからない。


お前の志が何なのか知らんけど、俺が垢バンになったらそれを知ることもできないし(笑)

俺は、垢バンならないためにも、無理のない安全な配達を心掛けるよ。

雨の日は今も全く出る気なし。カエル嫌いやし。


*** わるタンの真の配達員への道はまだ続く



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