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悪役令嬢にも花束を!  作者: 宮瀬ひさな
本編
1/1

生まれ変わる前のお話

「衝撃的な恋をしたことがありますか?」


 そんな問いかけをされたら、私は大声であると答えたい。

 ちょっと私の恋愛遍歴を聞いてほしい。と言っても、プロフィール帳か何かに書けと言われたら、それはまっさらな状態で終わるけど。

 華のJK十六歳。学校では一年生として学校生活に馴染み、大学入試を迎えるにはまだ程遠い時期である。つまりは遊び放題の時期。共学に通っていて中学では男女ともに幅広い交友関係を築けていたから、高校で彼氏ができてハッピースクールデイズを満喫できると思っていたのに、待ち受けていたのは想像とはかけ離れた現実で。

 高校に進級して、仲良くなった友人ととあるゲームにハマった。知り合いが少ない高校を選び心細い思いをしていた私にとって、その友人と好きなことを好きなだけ話せることが楽しかった。学校にいる時間は友人と休み時間も放課後もゲームの感想や考察で盛り上がり、家にいる時間は互いの趣味であるゲームを進めて、暇があればファンアートや小説などのプレイヤーが書いた二次創作を漁りまくった。

 高校生といえば髪型やメイクに興味を持ち始めて、ちょっとダイエットしたりスキンケアに力を入れ始めたり、長期休暇明けには夏休みデビューなんて言葉が流行するくらい、自分で磨くことを覚えたダイヤの原石たちが輝き出す期間だ。

 それに比べて私の方は、自分の容姿よりゲームの存在が何よりも大事だった。髪も体型も、まあ後ろ指を指されなければいいだろう程度の加減で、強いこだわりを持っていなかった。適当に整えられた髪と、極端に細くも太くもない体型。顔のパーツはどれも平凡で、探せば世界のどこかに三人以上のそっくりさんがいるのではないかという普通顔。

 そんな女がどうだろう。自分磨きもしなければ、学校の休み時間はずっとオタク話に花を咲かせている。彼氏ができるどころか、異性の眼中に入ることすらあり得ないのだ。


 それで、ここからが本題だ。

 私がどんなゲームにハマっていたのか。そしてそれがなぜ衝撃的な恋の有無に関わるのか。

 もちろん大いに関係ある。答えは簡単、私がゲームのキャラクターに恋をしたからだ。

 お相手は乙女ゲームに登場する攻略キャラクターで、作中のヒロインと恋をするために生まれたのだから、プレイヤーである私のハートが射止められてしまったのも当然といえば当然。


「グレーフィン様かっこいい〜!」


 私の作中最推しキャラことグレーフィン・オルティエ。

 赤薔薇のように鮮やかな髪と瞳が印象的で、左目の泣きぼくろがちょっとセクシーなそのお方は、『メイリリーと祝福の花束』という乙女ゲームの中ではメイン攻略キャラとして作中ナンバーワンの人気を誇っている。人気の理由としては甘いルックスだけでなく、ひたすらに甘いラブストーリーが展開されるのも一因だろう。私にとっては一目見た時点で稲妻に撃たれたような衝撃が走り、これは沼だと確信した。

 グレーフィン様はヒロインが暮らす国の王子様で、学園恋愛を主軸とした作品の中では一つ上の先輩として登場する。ゲーム内では一国の王子だが、王子様設定に恥じない見た目と性格の持ち主で、眉目秀麗、才色兼備等々、どれだけ賞賛の言葉を集めてもグレーフィン様を称えるにはいくつあっても足りない。紳士的でみんなから頼られる王子様であり、裏表がなく几帳面でちょっと天然なかわいい一面もある。そんなギャップとヒロインを一途に愛する糖分高めのラブロマンスが摂取できるのだ。グレーフィン様の沼は深かった。

 ちなみに『メイリリーと祝福の花束』は乙女ゲームとして庶民であるヒロインがイケメンキャラと恋をするという王道ストーリーであるものの、ストーリーやスチル、BGMなどどれをとってもクオリティーが高く、発売されて以降、女性向けコンテンツの中でも大きな支持を得ていた。


 オタク界隈の中ではもうすぐ続編が出るだろうという噂をSNSで目にした十六歳の冬、私の人生はあっけなく終わった。

 死因は交通事故で、通学の途中で事故に遭って死んでしまった。横断歩道を渡ろうとしたタイミングで信号無視した車に撥ねられたのだ。撥ねられた瞬間に痛みがあったかなんて覚えていないし、気がついたらもうすでに死んでいた……というのが、私の現代社会での人生の結末。


 そしてこれから先は、第二の人生の物語。

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