前編:悲観、戻れない朝の日
あらすじでもう散々言ったので前書きは短く…
天啓のごとく降りかかった作品ですので文章は色々ひどいですが温かい目で見てやってください。
--------時間は朝の4時半。
-----日付は9月の…何日だろうか。
嬉しくもない目覚めの中で、俺は何とも言えない心持ちに座っていた。
何時間も眠れなかった。そもそも寝た時間も覚えてなんかない。ずっと、ずっと。眠れない世界の中で狼狽えていた。
心の中では何度も、こんなに怠惰な男の体を潰し続けているのに。コイツはどうにもちっとも起きやしない。起きないというのはあくまでも比喩というか、ある程度の言い換えなのだが。
一先ず。一先ずは、また諦める前に体だけ起こして目を見開く。広がるのは弱々しい俺の体に、布団と窓。まだ夜明けほどではない故に、外は街灯の薄明かりが闇に負けないようにと光り続けている。
「……ッフ」うっすらと俺は笑っていた。これはどうにも微妙なこの朝と夜の境界が好きなもんでの笑いなのか。その割には、気分は最悪の方向へ一直線なのだ。
布団を片付け、次にすることを思い浮かべていた。
朝飯?早すぎる。まぁ白米主義者としては、どんな時でも食べる米は旨い。だから、別に食べても良いのだが…腹が空いてないからダメそうだな。
風呂…は流石にやめとくか。飯もそうだが、こんな時間にすることかと浅はかな理性が邪魔をする。運が良いことに汗も出てないわけだしな、もっと後からでもよいだろう。
「…………」ふと。クローゼットの、目に見えるそこに掛けられていたジャージを見る。それは、普通の赤と白のジャージだ。
そのジャージを見るたびに、苦虫が口の中に入り込み続け、嫌でも噛み続けなければ今にも苦しみで暴れだしそうな、この面倒で鬱陶しい感情と戦いながらそのジャージを見続ける。それは、俺にとって嫌なものに間違いない。だが、それでも見続けなければいけない使命感と、今でもその場所に残り続けていることの意味と重みが染みついているからこそ、こうしていなければいけなかった。
やり場なきこの現状を打破するために、隣のもう一つのジャージに手を伸ばした。もう一つは真逆の青と黒で構成されていた、変わりはしない奴だ。
一般人からすれば、どの二つも唯の衣服に変わりない。だが、前者のジャージが『苦痛』と表現するならば、後者のこっちは『安息と逃げ場所』と言える。
「……どうしたって、変わりはしねぇよな。」
本音がどうだろうと、今は逃げ場所に居なきゃ逃げ切れない。青と黒のジャージに着替えて、なけなしの小銭と携帯。家のカギを携えて、俺は外に出ることにした。
--------家から4km。
--------時間は日の出る5:47
近くの河川敷から川を沿い続けて、日の出によって綺麗に暑く染められていく石段に腰かけていた。
相変わらずこの時期の太陽はなんてひどい奴だ(まぁ太陽は良い奴だが)…と思いながら川と先にある街の風景を見続けていた。どうしてか、今日はこの風景が色褪せる美しさと生き生きと躍動する生命らしさを上手に同居させていて自然と心地よかった。
もし、この景色を…そう、たとえば彼女とかと過ごしてみたいものだ。この背景の中で、二人で落ち着いてられたら…これまた良いものがあるな。
なんて思い至っていたら、「セーンパイ?相も変わらず何してるんですか。」…なんか彼女候補にもならなさそうな、深めのパーカーとメガネにでかいヘッドフォンをした女の子が居た。
「お前こそ何やってんだよ…。今の時間にこんなところ歩いてるんじゃないよ。」
「それ、同じことをセンパイに言い返しておきまっすね。」
「やかましいわ。俺は朝日の美しさを考察しているんだよ。」
「だったらアタシは、この風景を良い題材に出来ないか模索していますね。」
…此奴はまったくどうして聞き分けがないのか。うんざりしてきてしまう。
「大体今のセンパイの気持ち分かりますよ。『アアァ。コノフウケイカノジョサントイッショニタノシミタイナー。』とか思ってるんでs」
「分かったから捏造するなぶっ飛ばすぞ。」
「はぁぁ…?絶対にそう思ってたですね。それなら、出血大サービスで私が代りになりましょうか?」
「やめてくれ俺の夢を壊すんじゃない…ハッ!?」
「ほぉらやっぱり。もう何年一緒だと思ってるんすかねこの木偶の坊は…」
「…分かったから。もう降参だ。」
「おお!それではなんでもひとつ言うこと聞いてくれますk」
「その代わりだ。お前のここにいる理由を聞かせてもらおうか。」
「あぁん。いけずなセンパイですねぇ…」
「別に。今日は朝早く起きたのでそのついでです。センパイもちょうどいるわけですしね。」と、後輩であるユズは真顔と低いトーンの間で言ってきた。
「正直その言葉の中に幾つが嘘なのか探してみたいな。」
「なんで嘘あるのが前提なのですか…」
お前ならやりかねないんだよ…と呆れる。ユズは見た目こそ女止めてはいるが、性格は普通だ…表はな。もう6年とちょっとの仲になるが、何度も似た様な理由で至る所先回りされてるのでこっちとしては嘘交じりだと断定している。ストーカーだと決めつけたいが、逃げ足も得意なのでこれが油断ならない。
「…まぁほら。センパイ一人で黄昏ていると気持ち悪いんで彼女的身代わりです。」
「うっせぇ。女一人が朝方に歩いてる方がもっと危険度高いっての。」
このやり取りも五度目な気がすると、虚しさを感じながら俺は家に帰ろうと帰路に向かおうとした。
が、何故だかユズは俺の腕にガッツリ掴まり、
「いいから。このままそそくさとお互い帰るのもアレなのでどこか行きません?」
「なんでお前とまた…」
「だってセンパイ一人だと…ねぇ。」
「そんなに俺ヤバいか…?」
しかし、その実ユズの目が本気で訴えてるのを見るに…よほど危ないんだなぁと思ってきた。
だが、「俺は子供じゃないんだから。いいからお前も帰れ。」とにかく俺は追っ払おうとする。こんな腐れ縁に心配されたくはないしな。
「だって…今のセンパイは…」
「何だよ。」
「…今もまだ苦しんでるんでしょ。怪我のこと…アイカ先輩のことも。」
その言葉の刹那。俺は自分の力任せで振り払った。力が強かっただろう、小さな悲鳴と伴に後ろへ下がる。
「…お前には関係ないんだよ。俺のことぐらい、自分の力でなんとかなるよ。」
「迷惑かけたな。この埋め合わせは来週くらいにでも返すよ…だから今は、変な目に遭う前に帰っとけ。」
「……センパイ」
俺は振り返る前に、兎に角諸々のしがらみから逃げるように走り出した。
右足が痛む。逃げ切れない真実のように痛む。それすらも捨て去るように走り続けた。
それは、今の俺には善いような行いでありながらも、最悪の手段だった。
「…結局。」
「…まだ抜け出せてないじゃん…。」
『お前は期待の星だよ!』
やめろ。
『うちの学校の看板しっかり背負って頑張れよ!』
いい加減にしろ。
『…お前にはまた。先を越されてしまったな。』
お前の方が、凄いじゃねぇかよ。
『行けよ!エース!』
違う。
『ケッ。才能だけの雑魚が』
だからいい加減にしろ。
『私。君の姿が好きなの…』
いまさら何を…。
『…失望したよ』
何がだよ。
『もう…以前のようには走れません。』
だろうな。
『いまさらキャプテン気取ってんじゃねぇよ!』
…
『無理をするな…まだ終わったわけではないんだぞ。』
俺に構ってないで自分の道進めよバカ野郎…
『愛しのあの子はお前なんかより俺様をお望みだってよ!』
…やめろ…!!!!
『………
…ごめんね』
ウァァァッァァァァァァァァァァアァァァァァァアァァァァッァァアァァァァァァァァァァァァッァァァァァアァッァァッァァァァ
ウァァァッァァァァァァァァァァアァァァァァァアァァァァッァァアァァァァァァァァァァァァッァァァァァアァッァァッァァァァ
ウァァァッァァァァァァァァァァアァァァァァァアァァァァッァァアァァァァァァァァァァァァッァァァァァアァッァァッァァァァ…
天から地に落とされた俺は、何のために戦えばよい?
これ以上、何を失って行けば良いと?
もう2か月。まだ2ヶ月。どうやっても戻らない過去に俺は何をし行けばよいんだと…
もう、どうしようできない。
「…大丈夫か?」
一応現状の設定
主人公(仮名:ハルト):高2の元陸上部員。神童とも称されるほどの圧倒的な能力で日本1+大会新記録を出すほどだったが、二か月前の怪我により引退を余儀なくされる。
元カノあり(というか大体見てる人分かると思いますが)腐れ縁の後輩あり
ライバルアリの平凡なイケメン主人公。ぶっちゃけ頭も良いぞ。しかしそれゆえに敵も多い。
ユズ:ネットで人気のイラストレーターな後輩。ほぼ女を捨てているが、案外乙女という脳内設定
主人公には片思いしてるけどこの縁のせいで告白ならず…
ライバル(仮名:イツキ):主人公とは高校からのライバル。元は剣道の名家だったが、短距離の才能から陸上も兼部。地道な努力家で礼儀も良いので、モテるし来年生徒会長ポジよ
アイカ:主人公の元カノ。一目惚れのようなものでの付き合いだったが、その実イケメンであれば何でも良い主義のため、怪我により引退した主人公をバッサリ切り捨ててほかの男に鞍替え(なお主人公は知らない)
トキヒト:イツキの剣道流派の師範。常に厳格な性格で、妥協を許さない鬼のような漢…だが身内に割と甘かったり、ロリコンだったり駄目なタイプである。