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その二十一 血脈

「佐吉よ、我が右の手を何と心得る」


秀吉は上掛けの中から枯れ枝のように細った右腕をを出して三成に見せた。


医者でなくとも、もうたいして先が長くないことが窺い知れるような痩せ衰え様だった。


太閤の右手には、菜ばし程度の太さの指が六本(・・)、見て取れた。


誰もが知っていたが秀吉が関白となってより、そのことを言うものはいなくなった。


「別段めずしいものではございませぬゆえ気にしたことなどございまませぬ」


三成の取り繕った答えを聞いた秀吉は、


「確かにそれほど珍しきものではあるまい。二、三十万石の領内なら、年に一人や二人生まれてこよう。

しかし、この手のままで成人するものとなると、更に輪をかけて稀となろう」


三成は今度は有りていに答えた。


「太閤殿下は貧しいお生まれであったからだと存じ上げます」


「正直でよいぞ佐吉。だがな、いくら貧しかろうと小刀一本あれば切り取ることはできよう。

幼子のうちなら跡もほとんど残さず切り取れるはずじゃ。

現にたいがいの親は、我が子不憫とみなそうしておる。

だからどんなに貧しい生まれであろうとも、大人で指が六本あるは不自然であろう」


三成は建前で受け答えするのをやめ、正直に思うところを述べた。


「それは、太閤殿下の御血筋に関わることにござりましょうか」


いつもの聡明な三成に戻ったのを見て、秀吉は満足そうに微笑み話を続けた。

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