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その十九 直江状

慶長五年(1600年) 会津城



「殿、上杉が機先を制して兵を挙げれば、手筈どおり石田治部少が秀頼様を御大将に大軍勢で押し出してまいりまする」


景勝はしばらく思案の後に問うた。


「兼継、其の方の云うところの大軍勢とやらの内訳を申してみよ」


待ってましたとばかりに兼継は、(まばゆ)いばかりの大軍勢を披露した。


「副将には大老の毛利輝元様と宇喜多秀家様。毛利家からは吉川広家様、小早川秀秋様と御三家が総動員されます。

これだけで徳川本隊と五分の七万。さらに石田らはじめ奉行方で二万。太閤様の御忠臣であられた小西行長様、安国寺恵慶様、長宗我部盛親様、島津義弘様、立花宗虎様らの二万も固いところでございます」


「 ・・・・ 」


「しめて最低でも十万」


些かも興奮した様子も見せずに兼継は続けた。


「いかに西国の外様が主力とはいえ、これだけの軍勢が秀頼(・・)様のもと大坂城に集まれば、

今のところは徳川に付き従いておりまする日和見の豊臣ゆかりの大名達、加藤、福島、大谷、山之内らも先を争うてはせ参じるは必至。

もはや徳川は譜代だけの丸裸となりましょう」


兼継の話を無表情で聞く景勝であったが心中はざわめき始めていた。


景勝は家康が特別憎い訳ではなかった。


天下が欲しいのならくれてやっても良い、 ・・・・ ただ。


上杉につまらぬ言いがかりをつけて脅かすのは御免こうむりたかった。


そうでなくても、この会津に国替えとなってからは周りの伊達と最上との勢力争いに汲々としているのだ。


伊達と最上がことあらば(こぞ)って徳川に加勢するのは明白であった。


ここは大勝負に出て徳川もろとも東北を平らげ、勢いに乗って以前の領国の越後まで我が物とすれば東国は安泰となる。


これを以って豊臣政権の一大勢力として君臨できよう ・・・・


景勝の野心はここまでであった。


兼継がくすぶっていた景勝の野心を燃え上がらせた。



長い、長い黙考の末、景勝は意を決して兼継に命じた。



「兼継、人を怒らせるはそなたの得意とする処、西の丸(いえやす)への返答、其の方がしたためよ」



こうして正信と兼継の喰えぬ者同士の目論見通り、徳川と豊臣恩顧の大名との連合軍による会津征伐(・・・・)が始まろうとしていた。

 

ここまでお読みいただいてありがとうございます。


直江兼継を二重スパイとみなすのは大河ドラマを出し抜いたようで爽快です。


鎧兜の前楯に『 (あい) 』なんて掲げるのは普通に考えれて変だと思います。


裏でよっぽど悪いことをに手を染めていた裏返しだと思います。


だからこそ兼継の後半生は良い統治者であったのだろうと思います。


人は悪いことをすればするほど『 善 』に目覚め、良い人間であろうとします。


善きこと即ち悪、悪しきこと即ち善。


このことは、”夜回り組長”と”アナキン・スカイウォーカー”から教わりました。


話がそれました。


いよいよ「 関ヶ原 」前夜となりましたが、しばらく一六〇〇年を離れて、


お話の核心に入ります。


時間軸がまためまぐるしく行き来しますが、ここまで読み進めていただけた方なら


必ずおもしろくお読みいただけると思います。


奇抜過ぎると感じるか、斬新と感じていただけるかは、


あなた様の頭の柔らかさに負うところとなるでしょう。


どうぞ、もうしばらくお付き合いいただけるならば、恐悦至極にございます。

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