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その百四十九 所司代奥平信昌

「徳川内大臣家康様より、其の方ら全員に打ち首との御沙汰が下され申した」


三成らを預かる新任の京都所司代、奥平信昌は無機質な声で三成ら三人に沙汰を言い渡した。


小西行長は瞑目して己自身に滅び行く運命を言い聞かせ、恵慶は所司代の信昌が家康本人であるかの様に睨み付けた。


三成は、 ・・・・ まるで他人事であるかの様に無関心に聞いていた。


「治部少輔殿 ・・・・ 大丈夫で御座るか」


声を掛けられた三成はふと我に返り信昌に問い掛けた。


「あいや、心配には及ばぬ。今、そこもとが所司代に任ぜられたのは如何なる理由によるところか思案しておったのでな」。


・・・・ この男はたった今死罪を言い渡されたばかりであるのに、いったい何を考えておると云うのだ ・・・・


この徳川家臣団の中に於いて、特異な位置付けを占める奥平家(・・・)の聡明なる当主は三成に強い関心を寄せずにはいられなかった。


「治部少殿には何か疑問な点がおありのご様子なので、それは後ほどごゆるりと相対させて頂くといたす。今はこれにて ・・・・ 」


夕餉はそれぞれに与えられた座敷で取ることが許された。


もちろん座敷牢とも呼べる厳重な監視下でではあるが。


特別豪華でも粗末でもないごく普通の食事が出された。


信昌の心ばかりの気遣いである。


特にすることはなし、後は休むばかりという頃合に三成の座敷牢を所司代の信昌が尋ねた。


手には心尽くしの酒と肴らしき包みが ・・・・


「お待たせいたし申した。不慣れな職務ゆえ何事も手間取りまする。

今宵はじっくりと治部殿のお相手させていただくつもりで参りました。

その後、お体の加減は如何でしょうや」


信昌は時間が幾ばくと残されてはいない三成の体を気遣った。


「お心遣い痛み入る」


「何の、実は某も治部殿にはお聞きしたきことが幾つか御座い申す。あいにく某は関ヶ原には居合わせておりませんでしたので ・・・・ 」


「さては叔父上のことで御座いましょうや」


「如何にも」


「それではやはり奥平貞治殿は ・・・・ 」


「某が秀忠様と共に大津に到着したときにはすでに荼毘に付されており申した。記録上はまだ存命(・・)とされながらも。

そして、この件に関しては正純殿よりけっして蒸し返してはならぬと厳命されておりまする。

すべて上意であると ・・・・ 

関ヶ原の趨勢を左右したと云われる小早川の軍監を務めていた叔父上が謎の死を遂げたにも関わらずそれを詮索することすら許されぬのは疑問でございます。

東軍の諸大名に真相を聞いて回る訳にも行かず、ほとんど諦めかけておりました。

敵方なれど関ヶ原の当事者であられた治部殿であれば何かお見知りではなかろうかと ・・・・ 」



信昌は初手から三成が答えにくい質問をぶつけてきた。

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