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その百二十二 覚悟

毛利を売って徳川の家臣として出直すなら命を助けるという提案を受けた三成は、正則と幸長(よしなが)が途中から同席を許された理由が読みどおりであったと確信した。


家康が三成に対して助命のための選択肢を与えたことが彼らから北政所に伝わるようにと目論でいるのだ。


三成が到底呑めるはずもない条件を出して ・・・・


この様子を目の当たりとした正則は、たとえどのような生き恥を晒そうとも三成生き延びるべしと思った。


己が領国を守ることだけに汲々とする大老などたとえ豊臣に何人残ろうと、老獪な家康の防波堤にはならぬ。


・・・・ 貴様を裏切って徳川と手打ちをした毛利など、内府に売り渡してでも生き延びろ! ・・・・


本当はそう言ってやりたかった。



「うぉほんっ ・・・・ 」



ひとつ咳払いをして正則が三成に向かって問いかけた。


治部少(じぶのしょう)、そもそも此度の騒乱の首謀者が其の方であったというのは事実と違うのでは御座らぬか」


正則の言葉に家康が真顔になった。


「何を今更申される、福島殿。治部少が諸国の大名達に上様の告発状を送りつけたは承知しておろう」


正信が制した。


「あいやお待ち下され。京から漏れ伝わるところによると西軍で一番早く決起したのは宇喜多であったそうな。

上杉が挙兵し、宇喜多も決起の知らせを聞いた大谷(・・)は、我が清洲を目前としながらも佐和山に取って返し、そなたにも決起致せと迫ったのが真相では御座らぬか。

そなたの戦下手は賤ヶ岳や小田原攻めの頃より、誰よりもよう知っておる。

関ヶ原での完璧な布陣といい、戦い振りといい、とても其の方の差配とは思えぬ。

本当のところ、あれは宇喜多と大谷が仕掛けた戦であったので御座ろう。

そうでなくては大谷だけ(・・)が合戦の中で腹を切り、宇喜多が雲隠れをして出て来ぬことに説明がつかぬではないか」


正信と家康は顔を見合わせてうんざりといった顔をした。


これでは福島正則をこの場に呼んだことが薮蛇となってしまう。


三成は余計な詮索が正則の立場を悪くすることを案じた。


正則の存在は今後の秀頼と豊臣にとって大切であった。


「かつてあれほど某のことを憎んでおられた其の方がそこまで気遣って下されただけでこの三成、感謝にたえぬ。

これからも秀頼様の御為、豊臣家に御忠臣下され」


三成は正則の指摘には一切答えず家康に返答した。


「内府殿の身に余る御温情は有難きことなれど毛利中納言殿はお気の進まぬまま名目上の総大将に担がれたまで。

それは関ヶ原での毛利勢の振る舞いが如実に表していると申せましょう。

それを我が身助かりたさに偽りを申して毛利こそ首謀者だなどとは武士の面目に掛けて申せませぬ。

御期待に沿えず申し訳ありませぬがすでに覚悟はきまっておりますればこの辺りでご勘弁を ・・・・ 」


三成は家康の期待通りの返答を返すしかなかった ・・・・

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