人外と少女。
…ぐす。ぐすん…ぐす…
………どうかしたのかい?
……ぐす………わたし、いらないこ、なんだって…
………。
…………ぱぱも、ままも、おにいちゃんも、わたしがはやくきえてほしいんだって……
………。
…………きえたら、みんなまた、わらってくれるのかなぁ…?
………。
…………おにーさんは、きえるほうほうしってる?
………いたくて、とってもこわいものだよ。
…………いいの。ぱぱとままとおにいちゃんの、さいごにみたかおが、いちばんいたくて、こわかったもの。
………。
…………いまは、まっくらだけど、おにーさんはいいひとだってなんとなくわかるよ。
………ぼくは、いいヒトなんかじゃないさ。
…………でも、こえがとってもあたたかいもの。
………。
…………おにーさん、て、にぎってもいい?
………ほら。
…………とっても、あったかい。
………こんな醜い鱗と傷だらけの手が温かいなんて、君は感覚まで狂ってるのかい。
…………ううん。こんなに、あんしんして、こころがあったかくなるて。すてきな、まほうのてよ。
………。
…………ありがとう、おにーさん。…だから、なかないで。
………おまえ、消えたいんだろう。じゃあ、ぼくがたべてやろう。痛くて泣いて絶望して、助けを求めても、誰も聞きはしない。それでもいいのか。
…………それでも、おにーさんが、そばにいてくれるなら、こわくないきがするの。
………。
…………だからおにーさん、わたしのことのこらずけしてね。
………わかった。
これが、おにーさんと、わたしのはじまり。
わたしはなぜか、まだ、おにーさんのいばしょで、おにーさんのそばにいる。
おにーさんは、たべごろがよくなったらたべてくれるらしい。
それまで、おにーさんのそばにいれるとおもうと、こころがあったかくなる。
これも、おにーさんの、まほうなんだろうか。