Ture end
結婚挨拶を終えて、優梨のご所望で屋上に足を運んだ俺たち。
「私たちの幸せ――私の幸せってきっと、たくさんの不幸と、恋に破れた女の子たちの想いと、お兄ちゃんの無数の死で築かれてるよね」
屋上から校庭を見下ろしながら、優梨は独り言のように呟いた。蚕お姉ちゃんとの対話に思うことでもあったのだろう。
「それを全部踏み潰して、幸せになるのはしんどいか?」
「ううん、それはないかな。みんなを不幸にしたぶん、お兄ちゃんを幸せにしたいって言ったでしょ?」
「なんだよ。屋上に行きたいなんて言い出すから、センチメンタルにでもなってるじゃないかって心配したぞ」
「えへへ、心配するだけ無駄だったね」
「したたかな優梨が、これくらいのことでへこたれるはずないもんな」
「そゆこと! 屋上に来たのは、許せないことがあったから」
「許せないことだぁ……?」
湿っぽい雰囲気をガラリと変えるように、
「さて、問題です。この屋上でステキなイベントが行われていましたが、それはなんでしょう」
……あ。あー、わかった。
「いやー、それは、ゲーム世界のシルヴィーアフターでのことだろ? しかも、優梨が俺とシルヴィーをくっつけるように仕向けたんだし、ノーカンじゃね?」
「しょうがないことだってわかってるけど、2人の告白を見せられたら……嫉妬するじゃん。奈々ちゃんへの告白もそうだからね!? だから、2人としたこと、全部、私と上書きっ!」
「シルヴィーと一緒に勉強したことも?」
「……」
「奈々さんと一緒に買い物に行ったことも?」
「……」
「あれ……? 俺、意外と健全な付き合いしかしてないな」
「お兄ちゃん~? シルヴィーちゃんとお風呂で抱き合ったり、添い寝したり。奈々ちゃんに着替えさせてもらったり。不健全な行為も全部上書きしてもらうからね!」
「……はい」
女の子の嫉妬は恐い。でも、誰かを殺したりするよりは、マイルドで、こうやって嫉妬してもらえるのは嬉しい。
だからって、女の子を不安にさせるのは違うけどな。
優梨の肩に手を添える。
「なあ、優梨。俺のこと好きか?」
「……愛してるよ。お兄ちゃんとして、1人の男性として」
「いや、好きって質問しただけなのに、重すぎるって」
「愛の重い妹は、いや……?」
「ばーか。俺も優梨のことを妹として、1人の女の子として愛してる」
「うん」
だから――。
「結婚しよう」
「――」
「2人で子どもを作って、幸せな家族を築いていこう」
愛おしい優梨を、引き寄せながら紡いだ想い。
この選択は――
世界の修正力に強制されたわけではない。
選択肢に選ばされたわけでもない。
例え上手くいかなかったとしても――
セーブとロードでやり直したりはしない。
死に戻って繰り返したりもしない。
ここが現実だからでない。ゲームの世界だったとしても、この選択は変わらない。
それが俺の覚悟。
優梨のいる、平凡で平和な、けど、ものすごく楽しい日常を過ごしたい――そう望んだ俺の、真の結末だから。
「言葉だけじゃなくて、誓いのキスはー?」
「へいへい。そんじゃ、いくぞ?」
「んんっ……! んぷはぁ……えへへっ」
「俺の愛を受け取って満足か?」
「んふ〜! いまは大満足! だ・け・ど、私のこと、もっともっっっと! 幸せにしてよね?」
兄のキスに、頬を赤らめて上機嫌に微笑む妹。
こんな幸せな結末を迎えた、俺たち兄妹の物語にタイトルをつけるとすれば――『妹√に分岐するはずが、ヤンデレ√に突入中です!』。
――違うな。
『俺が選択したのは、妹といちゃらぶちゅちゅっする√です』。
これにて多知川兄妹の物語は完結です!
2人が望んだ未来を迎えられてよかったです。
ここまでお付き合い頂きまして、ありがとうございます。
では、またどこかでお会いしましょう!




