3.妹の友達と一緒に選んだプレゼント
優梨の墓参り前に、駅前にある大型ショッピングモールに立ち寄っていた。
「優梨の誕生日だってーのに、手ぶらで行くのはまずいもんな」
「お兄さんのことですから、既に準備しているものとばかり」
「どうせなら、奈々さんと一緒に選びたいと思ってさ。いいだろ?」
「自分でよかったら。……優ちゃんを知り尽くしているお兄さんの助けになるとは思えませんが」
「いやいや、優梨の友達視点から、忌憚ないアドバイスくれると助かる」
奈々さんは、優梨のことを熟知し、尽くしてきた。彼女の意見ならきっと参考になる。
「自分がお兄さんに遠慮したことなんてありますか?」
「……ないな」
「そういうことです」
なんてやりとりをしながら、オシャレなアクセサリー店に足を踏み入れた。
放課後の時間帯ということもあり、学校帰りの学生カップルで混雑している店内。
そこに混ざる俺たちも、周囲からカップルに見えたりするのだろうか?
奈々さんとは1年ともに過ごしてきたが、俺の面倒を見てくれている傍ら、全国模試で一位をもぎ取っている。それにはかなりの努力が必要だ。
俺はというと、奈々さんの優しさに浸り、なんとなーく大学に通っているだけ。
――こう比べてみると全く釣り合いが取れてないな。
「彼女さんにプレゼントですか?」
やっぱり間違われたか。ま、俺らがどういう人間かなんて、この店員が知る由もないもんな。
「自分たちのことですか?」
「周囲には、そう見えてるらしいな」
さきほど奈々さんが大学に迎えにきたときもそうだったが、カップルと間違えられるのは一度や二度のことではない。
はじめは不快な表情をされたり、罵られたりと露骨に機嫌を悪くしていた奈々さん。
「なるほど。……ありがとうございます、大丈夫ですのでお気遣いなく」
しかし、いまでは間違えられることにも慣れたのか嫌がる素振りを見せず、至って冷静に対応している。
「そうでしたか。ごゆっくりどうぞ」
そう言うと、優しい店員が俺たちのそばを後にした。
「怒らなくなったな」
「怒るとは……?」
「カップルと間違われても、怒らなくなったなってさ」
「四六時中、一緒にいれば、間違えられることもあります。彼氏面をされたら、確実に不愉快には思いますけどね」
「それをわかってるからしてないんだろ。ここに長居しても、お前の機嫌を損ねそうだし、ささっと探そうぜ」
「自分もカップルが作る、この独特な雰囲気の空間には居座りたくないので、そうしてくださると助かります」
「お、これなんてどうよ?」
ショーケースに入った、ピンクゴールドカラーのハート型ピアスを指して、意見を求む。
「その心は?」
「優梨も18歳になる。こういう装飾品を使ってもいい歳だって思ってさ」
「でも、お兄さんの趣味ではないですよね」
「ああ、好きじゃない。耳をあけるのは、清純なイメージからかけ離れるからな」
「お兄さんの理想の女の子になるために頑張っていた優ちゃんは、そのようなプレゼントをもらっても喜ばないのでは?」
「……たしかに。さすが奈々さん、優梨のことをよく理解してるな」
「自分も、優ちゃんの気持ち、よくわかりますから。それに――」
「それになんだよ」
「大人向けの商品ではありませんよ。たしかに可愛らしいデザインで優ちゃんに似合うかもしれませんが、このショーケースを見ている客層を観察すれば中高生向けなのは明らかです」
「………」
「優ちゃんとはこのお店に何度か訪れていますからね。大人向けの商品はこちらにありますよ」
奈々さんに誘導され、隣のエリアにあるショーケースに移動する。
「でも、意外だな。2人で来てるところなんて全然想像できない」
「あ、あれです……。ほら……」
恥ずかしそうに言葉を濁す奈々さん。
「あれ……?」
「黒歴史なので、極秘権を行使します」
「アクセサリーショップ……優梨と何度も来たことがある……ね」
「いえ、考えようとしなくて大丈夫です」
「あー、ギャルの奈々さ――っっ」
「変なところで感が鋭くなるんですから」
二の腕に軽い痛みが走る。
「は、恥ずかしがることないだろ……。大きな声で言えないけど、あの奈々さんも魅力て――っっ」
再び、二の腕に軽い痛みが走った。
本当に触れられたくない話題なんだな……。
ふんわりと軽やかなミディアムヘアに、サイズの合わないセーラー服を着崩しているのにどこか恥ずかしそうにしていた――ギャル風の奈々さんも可愛かったけどな。
「そんなことより、優ちゃんへのプレゼントです。お兄さんの好みの商品を選んでみてはいかがですか?」
「……俺は――これ、かな」
「ふふ、お兄さんと感性が似てきましたかね」
奈々さんも同じアクセサリーを見ていたようで、2人で顔を見合わせて笑う。
桔梗をモチーフにした、可憐なプチネックレス。上品で煌びやかに輝くパープルカラーは、18歳になる優梨にすごく似合うはずだ。
「俺たち2人で選んだプレゼントなら、優梨も喜んでくれるな」
「お兄さん1人でも、きっと喜んでくれましたよ。ただ――お兄さんと一緒に優ちゃんのプレゼント選びができてよかったです」
1年間一緒に過ごしているとこうも考えが似てくるものなのか。それとも、もっとも優梨に似合うと思ったものが偶然にも同じだったのか――。
こういうのって、なんか嬉しいよな。




