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2.大切な人を守れる男

「わからないところを教えてくれてありがとな」


「いいのっ。いいのっ。また何かあったら、私を頼ってよね!」


「抜け駆けズルじゃん。ウチも、優也くんが呼んでくれたら、いつでも迎えに行くから!」


「あ、はは…ありがとう。そのときはよろしく」


 乾いた笑いが漏れる。


 奈々さんの言うようやな内面を見ずに外見だけで判断する人間は、彼女たちのような人間を指すのだろう。

 毎日違う種類のブランド服を着ていけば、金持ちだと勘違いしてしまうのも仕方のないことかもしれない。それでも、こうもわかりやすく、金に目が眩んだ人間が近寄ってくるとは。


「優也先輩、お迎えにあがりました」


「お、奈々さん。待たせちまったかな」


「いいえ、いま到着したのでお気になさらず」


 校門を出ると、高級車が出迎える。車の窓から学校帰りの奈々さんが顔を出していた。


「えっと……優也くん、その子は……?」


「もしかしてだけど、カノジョだったりー?」


「あー、そんな感じかな。同棲してるし」


「同棲!?」


「申し遅れました。美崎奈々です。優也先輩がお世話になっております。これからも彼のことをよろしくお願いします」


「ご、ご丁寧にどうも……」


「りょ、了解デェス……」


「んじゃ、また新学期にな」


 奈々さんの登場に度肝を抜かれて、ボケーっと佇む学友。

 そんな2人を尻目に車に乗り込む。


「彼女いたんだ……」


「カノジョ持ちなら、早く言ってくんなきゃ……」


 彼女たちの言葉を置きざりにして、車が発進した。


「邪魔してしまいましたか?」


 リクライニングに身を委ねていると奈々さんが聞いてきた。申し訳なさは一切なく、形式だけの質問のようだ。


「え?」


「女性に囲まれてニヤついていらしたので、お楽しみの邪魔をしてしまったのかなと」


「してないしてない。むしろ、奈々さんが介入してくれなかったら、遊びに誘われてたろうから助かる」


「はぁ……自分は心配です」


「な、何が?」


「これまでは優ちゃんが――いいえ。お兄さんが高校在学中は自分が抑止力となって、悪い虫がつくことはありませんでしたけど」


「そういう心配か」


「決して、彼女たちをそういう人間と揶揄しているわけではないので勘違いなさらず」


「それはわかってる」


 優梨と、優梨が死んでからは奈々さんが代わりとなって、俺を外敵から守ってくれていた。それが2人の手を離れ、1人で大学に通っている。

 事件に巻き込まれないか、騙されたりしないか――奈々さんの懸念してしまうのもよくわかる。とくに女性関係に関しては、心配の種が尽きないことだろう。


「いや、その……俺も奈々さんがそばにいてくれないのは不安だけど。高校を卒業した以上は、いつまでもおんぶに抱っこってわけにはいかないだろ」


「自分は不要と……?」


「そうじゃない。守られてばっかじゃなくて、優梨を――奈々さんを守れる男になりたいんだよ」


「……ふふ、自分たちを守るなんて大きく出ましたね」


「本当だよ、これだから才と権力があるやつは。だからまあ、1人でいるときくらいは自分の身を守れるようにってのはある」


「大学に入学してからの4ヶ月はそれができましたか?」


「できてなかったろうか。明らかに誰かの手回しがあったし」


「どなたでしょうね」


 なんてすっとぼける奈々さん。

 誰か、とは言ったが、十中八九、奈々さん以外にいない。


「これからも困ったときには相談させてもらったり、助けてもらったりするかもしれんけど――」


「優ちゃんの代わりに、あなたの手となり足となるのが自分の役目ですから、大丈夫ですよ」


「ありがとう。さすが奈々さんだな」


「でも、優ちゃんを守れる男になると宣言したお兄さんはとても格好よかったです」


「――」


 奈々さんの物言いにたじろぐ。

 普段、毒舌な彼女がストレートに褒めてくると、こうも破壊力があるとは。


「誰も傷つけず、優ちゃんを守れる男になってくださいね」


「……ああ」


 奈々さんは、優梨と自身を別に考えているようだが、


 優梨の代わりをしてくれている以上、奈々さんも守るべき対象だ。

 だから、俺は奈々さんを守りたい――。

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