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1.恋人としての初デート! 妹とプラネタリウムへ

 多知川(たちかわ) 優也(ゆうや)多知川(たちかわ) 優梨(ゆうり)が、兄妹でありながら恋人同士として付き合い始めて、4週間が経った。


「もうそろか。やっと本当の意味でデートができるんだな」


 5月5日午前10時。最寄り駅前の広場にある時計台下で、俺は妹を待っていた。


 そこへ――天使が舞い降りる。


「……優梨?」


 水色のチェックワンピースにベビーピンクのカーディガンを使ったコーディネートの、この世の存在とは思えない可愛さを放つ女の子。

 艶やかな黒髪を一房に束ねて、淡い茶色の大きな瞳は俺を真っ直ぐに見つめていた。白い肌はみるみると赤みがかり、赤く濡れて色づいた唇は微かに震えている。


「おにい、ちゃん……」


「……」


 何かを待っているように見えるが――。

 しかし、俺は彼女のあまりの可愛らしさに口を開けたまま硬直してしまう。


 そう彼女こそが俺の妹であり、恋人でもある女の子――多知川 優梨だ。


「うぅもう……! な、なにか言うことあるよね、お兄ちゃんっ」


「お、おう……。その、可愛いな。普段も可愛いんだが、今日は一段と可愛いなってさ」


「えへへ」


「その服をプレゼントしてよかった。兄として、恋人として、こんな美少女とデートさせてもらえるのは、光栄の至りだよ」


「へへ、へへへー。すぐにそうやって褒めてくれたら、好感度が急上昇だったのにね。残念でした」


「はいはい、俺への好感度はもうカンストしてんだろ? 急上昇とかテキトーなことを言うな」


「それはまあ……カンストしてなかったら、お兄ちゃんとお付き合いしてないし?」


「だろうな。俺も優梨への好感度が振り切ってるから告白したわけだし」


「でも、すぐに褒めてくれたほうが、言葉を飾ってないっていうか、自然に出てきたものだって思うじゃん……?」


「なる、ほど。……その、俺が間を置いちまったのは、褒め言葉を考えてたんじゃなくてだな……」


「言い訳ー?」


「ちゃうわ! だから、その……デート着で待ち合わせ場所にきた妹――恋人に見惚れてたってか……んま、そんな感じだよ! って、恥ずかしいこと言わせんな!」


「んふー。いつもそれくらい素直になってくれたら、わかりやすいのになー。ねー、お兄ちゃんはどう思う?」


「う、うるせえ」


 優梨を女の子として意識し始めてから、とても緊張することが多くなった。彼女への対応にも余裕がなくなりつつある。

 それくらい俺の妹が可愛いってことだろうけど。


 現に駅へ向かう通行人のほとんどが足を止めて、俺たち兄妹(主に優梨)を遠巻きに見ている。

 そんな奴らに、このめちゃくちゃに可愛い女の子は俺の妹で恋人なんだぜ、って自慢してやりたいぜ。


「ふふんっ……口にしてくれなくたって、お兄ちゃんの気持ちは手に取るようにわかるから、いまのままでもいいけどね」


「いや、いやいやいや。心の中を読むのは無理だろ。お前は超能力者か、って」


「伊達にお兄ちゃんの妹してないもんっ。余裕だよん」


「はいはい、さすが俺の妹」


 天才の優梨からすれば、表情や仕草から他人の感情を読み取るのは造作もないのだろう。俺のことであれば、なおさらだ。


「……てか、同じ家に住んでんのに、なんで外で待ち合わせすんだよ。時間ズラして出かけるのも面倒だったんじゃないか?」


「んーん、そんなことないよ。だって、待ち合わせしたほうがデートっぽいでしょ?」


「デートっぽい……? どうゆうことだ」


「デートのスタートは、待ち合わせからじゃん」


「は? はぁ……」


「ぶー……お兄ちゃんには恋する妹心がわからないよーだっ。さあ、いこっ?」


「お、おう……」


 優梨が俺の腕に腕を絡めてきて、くいくいと引っ張ってくる。控えめながらもふにっとして柔らかい胸がよく密着している。

 とてつもなく気持ちがいいな……。


 そんな感じでイチャイチャしながら、前に放課後デートでも利用した、駅前にある大型ショッピングモールに向かった。


「そういえば、今日はどこを回るとかって決めてるの?」


「おうとも。デートプランをちゃんと立てて、優梨をエスコートするって約束してたからな」


「おおう……! それは期待しちゃうよ、私!」


「とりあえずは――」


「うわあぁ……星がすごい! すごくよく見えるよ、お兄ちゃん! きれいだなあぁ……」


「だなぁ……」


 大型ショッピングモール内にあるプラネタリウムの施設。

 ドーム全天に映し出された夜空に満点の星々が煌めいて、まるで宇宙空間に飛び出したかのような感覚にさせてくれる。誰もが魅了されるであろう美しい星空。星の色や瞬きまでを完全に再現し、鮮明な映像を投影していると謳っているだけはある。


「お兄ちゃんは、プラネタリウム好きなの?」


「いや、全然。どこがいいか調べてたら、ここが出てきて、優梨も楽しんでくれるんじゃないかって思ってよ」


「うん、すごく楽しいよっ! お兄ちゃんは?」


「俺は……星空より、星空をキラキラした瞳で見上げる優梨を見てるほうが楽しいな」


「え……?」


「表情がコロコロ変わるから飽きることがなくて、つい見惚れちまうんだ……お前が俺にとっての星空なのかもな」


「……それさ、この展開に備えてあらかじめ準備してたセリフでしょー? 俺にとっての星空って意味がわからないもん」


「う、それは……なんでわかったんだよ!?」


「ほら、やっぱりー。もう……。でも、私のために考えてプランを立ててくれてすごく嬉しいよ。次も期待しちゃうね」


「おう、任せとけい!」


 優梨の期待を背に、次はゲームセンターに足を運んだ。

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