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3.イチャイチャずる休み

「家にいてもすることないね、意外に退屈ぅ。たーいーくーつー」


「休みたいって提案した張本人がよく言えたな」


 リビングのソファにうつ伏せになって、脚をジタバタさせている優梨。セーラー服の、丈の短いスカートがひらりと舞い上がり、豊満に育ったお尻とそれを包み込む白いフリルがあしらわれたパンツが垣間見えた。

 見えただけで、決して見たかったわけではない。ここ大事。


「ねえねえ、お兄ちゃん」


「なんだ」


「あの雑誌とってー。たぶん本棚にあるから」


「あの雑誌って何の雑誌だよ。ton-to(トント)か? いちごクラブか? ゼクスゥーか? ってなんでうちに育児と結婚の情報誌があんだよ?!」


「アダル――お兄ちゃんのいやらしい本は、お兄ちゃんの部屋の机の引き出しに、教科書のカバーを被せて隠されてるから、取りに行くのめんどくさいよね……。そうだなーんー……ton-toでいいや」


「どうして俺のエロ本のありかをを知ってるんですかね……。定期的に処分して、可愛い妹の写真集とすり替えた犯人はお前だな!? どれどれ……4月号でいいのか? ほいよ」


 本棚から指定されたファッション誌を取って、妹に手渡した。


「お兄ちゃんのいやらしい本のことは、ひ・み・つ。そう、これこれ、ありがと。ついでに頭を私の太ももに乗せて、ソファに寝転がって」


 ぽんぽんと自分の膝を叩いて指示を出す優梨。不敵な笑みを浮かべて、俺を待ち構えている。


「頭を太もも、ソファに寝転がる……ってそれ膝枕じゃねえか!」


「ちぇ……バレちゃったかー。さすがお兄ちゃん」


「お兄ちゃん要素は、全くもって関係ないからな。考えれば、誰でも気づくって」


「ぶーぶーお兄ちゃんのイケズっ!」


 指示通りに動いていた途中で、その意図に勘づいた俺はソファに腰を下ろすだけにとどまる。

 優梨はかなり落ち込んでいるけど。


「素直に膝枕したいって言えよ」


「言ってもさせてくれないでしょー。私わかってるもん。何年お兄ちゃんの妹をやってあげてると思ってるの?」


「16年と5ヶ月……てか、勝手に決めつけんなよ。ほれ、これでいいだろ」


 はっきりとした曲線を描く瑞々しい太ももにそっと頭を乗せた。

 白く艶やかで、健康的な肉感が頭を包む。優梨の太ももは、とにかく柔らかくて温かい。発育途中の上半身が嘘かのように下半身は成熟し、大人の妖艶な色気を醸し出している。

 それに白い肌のさらさらとした感触とニーソのなめらかな肌触りが相まって、脳がとろけるような感覚がして、妹の太ももに溺れてしまいそうだ。


 見上げて視界に入る優梨の顔も熱気を帯びていて、妹はこの状況にドキドキとしているのかもしれない。

 俺もドキドキしている……。


「どうかな、私の膝枕。久しぶり……だよね?」


「俺が高校に進学する前以来……だっけか? 妹にこんなことされるのに羞恥心が芽生え始めてからは、優梨にせがまれても逃げるようになってたな……」


「羞恥心なんて全然感じる必要ないし、恥ずかしがることないのに。私はお兄ちゃんが甘えてくれることが、すごく嬉しいもん。朝のときみたいにね?」


「またその話を蒸し返すのか!? 朝のことは忘れろ忘れろ、あれは寝起きで気が動転してたんだって」


「んふー焦ってるお兄ちゃん可愛いっ」


 優梨は俺の髪を梳く。

 頭を優しく撫でるられているようで、すごく気持ちがいい。


 この状況じゃあ、どっちが兄で妹かわかったもんじゃないな。


「ほ、ほかの話をしようぜ……。これ以上俺を弄り続けるんなら、この膝枕は終わりだからな」


「はーい。じゃあ……ねえねえ、どの服が私に似合う?」


 さきほど俺が取ってやった雑誌を開く優梨。春のコーディネートを着こなした20代の女性モデルがたくさん写ったページを見せてきた。


「どれがいいかなーどの服がいいと思う? あ、モデルの好みは聞いてないからね」


「聞かれても答えないし、こんなかにはいないわ! なんで俺がそんなアホみたいな勘違いをすると思ったんだ、この妹は」


「だって、熱心に見てたから、可愛い人、綺麗な人でもいたのかなって」


「頭の中で優梨に着せてみてたんだよ。決して、モデルたちに見惚れてたわけじゃねえやい」


「そうなんだ、真剣に考えてくれてるみたいで嬉しいなっ。でーもー想像の中の私に変なことしないでね。やるならリアルの私、いい? でもでも、着せ替え人形で満足されちゃうのも不服かも……想像の中でも少しくらいは手を出してあげて……?」


「おうおう、優梨が大きくなったら、現実でも想像でも手を出してやるから、少し待ってろ。どの服がいいか、わりとマジで悩んでんだから」


「はやくっ、はやくーっ」


 急かす優梨のせいで、考えがまとまらない。

 そもそも彼女いない歴=年齢の俺が、妹――女の子の服を選ぶことがおかしい。


「ん……全部似合いはするんだが……。まだ肌寒い季節なのにリア充はこんな薄着で出かけるのかってレベルで露出度が高過ぎて、兄としてはこんな服装で外を歩かせたくない」


「んふー無防備な私はお兄ちゃんにしか見せないから、心配しなくていいのに。露出がすごい服がお兄ちゃんの好みなら、お兄ちゃんの前でだけで着るから」


「……そうかい。どっちにしろ露出の高い服はなしだ」


「お兄ちゃんの好みは、可愛い感じの清楚系コーデだもん」


「なんで兄の好みが妹に露呈してるんですかね……。いまにして思えば、お前の持ってる服のほとんどが俺の好みのものだよな。下着も清楚な白系が多いし……。俺のためなのか?」


「そゆこと。お兄ちゃんに好きになってもらうためだったら、お兄ちゃんの好みに合わせるのは当然のことだもん。はい、次のページ次のページーっと」


 雑誌をめくる。


「そう、これ! この服とかお前に似合いそうだな。スカートも短くないし、清楚で可憐な優梨にぴったりハマるんじゃないか」


「私も可愛いって思った! じゃあ、週末に買いにいこ? でねでね、この服を着て、お兄ちゃんとデートしたいっ!」


「それなら、俺がこの服をプレゼントしてやるよ。日頃の感謝を口以外でも示したいしな」


「お兄ちゃんのお世話は、私の役目――お兄ちゃんと一緒にいたくて、勝手にやってるだけだから。気にしなくていいんだよ?」


「せっかく申し出てやったんだから、遠慮すんなって。俺は物でしかお前に恩返しできないんだからさ」


「私のほうが、自分のすべてを捧げても返しきれないものをもらってるのに……」


「んなら、お互いに返していこうぜ。俺はプレゼント、優梨は……今日の美味しい夕飯な。その代わりに昼飯はテキトーに済ませてくれていいから」


「手抜きな料理は作らないし、美味しい料理をお兄ちゃんに提供するのは当たり前のことだから、交換条件が成り立ってないんだけどなあ。でも、お兄ちゃんがどうしてもプレゼントしたいって聞かないから、今回はそれで妥協してあげる」


「サンキュー優梨」


「感謝しなくちゃいけないのは、服を買ってもらえる私なんだけどー」


 約束する。未来に夢を託すために――約束が叶うのは、4月9日を越えたとき。

 それまでは――いいや、優梨と一緒の時間を過ごすために俺はもう選択を誤らない。

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