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神鳴る世界の転生者 -天壌無窮の英雄譚-  作者: 古葉鍵
第三章 出会いのイト
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第二十三話 目覚めと鑑定タイム


 暖かくて柔らかな感触が手を包んでいる。

 自分の手を誰かが握っているのだと気付き、目を開けた。

 最初に見えたのはベッドの天蓋。

 毎朝起きる度に目にする、見慣れた光景だ。

 その事にほっとしつつ、視界の片隅に捉えた少女の名を呟く。


「……レナ」


 ベッドの横に座り、両手で俺の左手を握っていたレナの顔がくしゃりと歪んだ。

 今にも泣きそうな笑顔で、俺の上体に覆い被さってくる。


「――イオっ!」


 勢いよく胸の上にのしかかられ、むぐ、と変な声が漏れる。

 前にもこんな事があったなぁと妙な感慨を抱きつつ、役得とばかりにレナの肌の感触と体香を堪能する。


「無事に目を覚ましてくれて、良かった……」


 俺の耳元でそう呟かれた声はやや湿っていた。

 泣きそうになるほど心配してくれていたのだろう。その事に小さくない申し訳なさを覚えた。

 しかし同時にそれだけ深く思われていると実感し、胸が熱くなる。


「……僕はレナを置いて死んだりしないよ」


 ベッドから右手を引き抜き、レナの頭を撫でる。

 彼女はわずかに身動ぎし、「……うん」と小さく呟いた。

 なんか恋人っぽいやりとりだなぁと内心で感動しつつ、甘やかな空気に身を任せる。


 数分ほどそうしてから、レナがゆっくりと身を起こした。その顔はやや気恥ずかしそうだ。

 離れてゆく温もりに名残惜しさを感じつつ、俺もまた上半身を起こす。


 ベッド脇のイスに腰をかけ直し、表情を改めたレナが口を開く。


「イオ、体は大丈夫? 痛いところとかはない?」

「うん。まったく問題ないよ」

「良かった。それを聞いて安心したわ……」


 ほぅと安堵の吐息を漏らし、微笑むレナ。


「えっと、イオが平気そうなら話したい事がたくさんあるけど……まずはイオが目を覚ました事をシャルに報告してくるわね」

「あ、うん。僕も起きて着替えておいた方がいい?」

「ううん、病み上がりなんだから、無理はしないで。横になって待ってて」

「わかった」


 了承すると、レナは軽く頷いてから立ち上がった。そしてやや足早に部屋を出て行く。

 その後姿を見送ってから、再びベッドの上で仰向けになる。


 ふぅ、とため息が思わず漏れた。

 短い間とはいえ、一人で考えを纏める時間が持てたのは幸いだ。


 この後、レナの知らせを受けて母さんが部屋にやって来る。多分だがリーンも。

 単なるお見舞いだけで済めばいいが、おそらく事情説明を求められるだろう。

 雷精の事もそうだが、両足が再生した件については必ず訊かれると見ていい。

 どのように説明すべきか、どこまで話すのか決めておかないと。


「チチッ!」


 あれこれ考えを巡らせていると、いきなりベッドの上に何かが飛び乗ってきた。

 ぼふん、と太腿のあたりに軽い衝撃。

 いったい何がと思って見れば、丸っこい灰色の毛玉。

 ペットの千鳥だ。


 そういやコイツの姿を見るのも久しぶりって気がするな。短い期間に色々あったせいか?


 上体を起こし、両手で千鳥を捕獲する。


「神様に聞いたよ。やっぱオマエ、雷皇鳥で神獣なんだってな」

「チッ?」


 千鳥は小首を傾げ、つぶらな瞳をこちらに向けてくる。可愛い。

 これがそのうちラーミ○みたいな巨鳥になるのか……人を乗せて飛んだりできるかな?


 益体のない想像をしつつ、千鳥を抱き寄せて撫でる。もふもふとした手触りが癖になる気持ち良さだ。


 千鳥に癒されながら、ふと別の事を考える。

 ザッカークを倒した……いや、殺した件についてだ。


 初めての人殺し。

 なのに、自分でも驚くほど罪悪感や生理的不快感が湧いてこない。

 犯罪者であり父の仇というバイアスがかかっているせいか?

 事後の実感としては殺人ではなく害獣退治のそれに近い。

 酷い言い草だが、実際ヤツは善良な人々に害をなす存在なのだから仕方がない。

 そんな害獣を駆逐するのも為政者の務めだろう。


 我ながら冷徹というか、染まってきたなぁと内心で苦笑する。

 まあ死んだり死にかけたりすれば考え方も多少変わるか。

 あるいは日本人的倫理観を前世に置き忘れてきたのかもしれない。


 殺伐とした思考を打ち切るため、窓の方に視線を移す。

 外は快晴のようで、青空が広がっている。

 部屋に射す光の角度からして、時間帯は正午前といったところか。


 少し気分が明るくなったところで、手元の千鳥を見る。

 千鳥は俺に撫でられるがままで大人しい。目を瞑り、心地良さそうな顔をしている。

 そんな千鳥を見つめて、俺は聖賢神アプロデウスから授かった加護《天理浄眼ディバイントゥルーゲイズ》を発動させた。


「ほう……」


 思わず感嘆の声が口から漏れた。

 加護の効果と、それによって得た千鳥の情報に驚いたためだ。


 加護《天理浄眼》で取得できた情報は、種族、名称、性別、年齢、霊格、構成強度、祝福・加護、称号、状態の九項目。

 脳裏にRPGのステータス画面みたいなものが浮かび、一瞬でその情報が記憶に刻まれた。


 なお千鳥の場合はこうだ。


 《種族》神獣・雷皇鳥

 《名称》千鳥

 《性別》♀

 《年齢》ゼロ

 《霊格》一二七一二

 《強度》十四

 《祝加》

 《称号》

 《状態》人間族・《ライオット・エトランジェ》に従属


 比較的簡素と言える情報量だが、参考情報としては十分だ。

 特に霊格、構成強度、祝福加護を把握できる点が大きい。

 相手の力量を判別する上で役に立ちそうだ。


 それにしても千鳥の霊格数値がやばい。五桁て。

 まさに神獣の名に恥じぬ破格の霊格。

 今はいいけど、成長したら俺なんかより遥かに強くなりそうだ。

 主人の威厳ががが。


 さて、今度は自分の情報を確認してみよう。

 こちらは視認する必要はなく、念じるだけで可能だ。


 《種族》人種・人間族

 《名称》ライオット・エトランジェ

 《性別》♂

 《年齢》七(+二九)

 《霊格》二五〇五(+二八三七)

 《強度》六五

 《祝福》時空神ウルディポー《時※※※※累※》

 《加護》戦冥神ルドヴァ《死命の超剋(デスティニーオーバー)

 《加護》聖賢神アプロデウス《天理浄眼》

 《称号》エトランジェの麒麟児

 《状態》契約精霊《雷精・二八三七五〇体)


 こ、これは……。

 何というか、良くも悪くもツッコミ所満載だな。


 まずは年齢。

 (+二九)となってるが、これは前世の年齢だろう。


 次に霊格。

 (+二八三七)という数値の意味するところが解らず頭を捻ったが、《状態》欄を見てピンと来た。

 これ、契約精霊による霊格補正数値なんじゃないかと。

 契約精霊数百体につき霊格一と計算すれば数値の辻褄が合う。

 人間にしては破格と言える俺の霊格数値の理由がこれで判った。

 まぁ素の霊格数値も十分規格外なんだが……って、あれ。

 霊格の合計数値、ちょっとおかしくないか?

 傭兵ギルドで計測した時は、たしか五〇〇六だったはず。

 現在数値は五三四二。

 差し引くと三百以上も上がってるな。

 なんでだ?

 ザッカーク倒したからか?

 可能性としては一番ありそうだが、上昇度合いが異常だ。

 元の霊格が高いから、上昇値も大きいとか?

 ……うーん、霊格成長の法則がわからないと何とも言えないな。そのへん、詳しそうなリーンに今度聞いてみるか。


 気を取り直して次、構成強度。

 これもかなり上がってる。傭兵ギルドで計測した時は三七だったのに、今は六五。

 上昇数値的には二八と、さほど大した事のない印象を受ける。しかし割合で見たら二倍近くに跳ね上がってるわけで。

 この異常増加の原因は、加護の項目で見つける事ができた。


 戦冥神ルドヴァの加護《死命の超剋》。

 これの効果を端的に説明すると、○豆+某野菜の戦闘民族的能力。

 具体的には戦闘で致命傷を受けた際に肉体を完全回復させ、構成強度を大きく引き上げるというトンデモ効果。

 ただしヤラセや自傷、戦闘で手を抜いて故意に傷を負うなどの場合はダメらしい。あと即死も。

 オマケに各種状態異常耐性まで付いてくる、まさしく神様チートな加護である。


 最近、俺の身体能力が著しく向上してたのは、雷皇鳥戦で死にかけ、この加護で復活したからだと納得がいった。

 そして今回、ザッカーク戦でも死にかけた。それでまた構成強度が大幅に上がったというわけだ。


 最後に祝福と加護について。

 時空神ウルディポーの加護は、名称と内容説明がほぼ伏字になっていて詳細不明。

 祝福って事は生まれた時点から持ってたわけだが、それらしき恩恵を受けたり、効果が発動したような心当たりはない。本当に謎。

 強いて言うなら最近のトラブル続きの件がそれっぽいかな……もしそうだったら祝福というより呪いだが。

 戦冥神ルドヴァの加護はさっき読んだから除外。

 聖賢神アプロデウスの加護《天理浄眼》は、端的に説明すると多機能な魔眼。そう、魔眼である!

 某十四歳病患者の誰しもが追い求める異能を、ついに俺も手に入れたのだ!

 冗談はさておき、もう少し詳しく解説すると。

 鑑定+霊視+浄化+看破+解呪+破魔+状態異常耐性、となる。

 補助的な効能ばかりだが、制限や使用条件が緩いので使い勝手が良さそうだ。

 これもまた最高神の格に恥じぬ性能のチート加護と言えるな。


 一通り情報の取得と整理を終えたところで、今度は物品に対して《天理浄眼》を使ってみる。

 使用対象は俺のベッド。

 さてどうなるか。


 《種別》家具

 《名称》天蓋付きベッド

 《品格》普遍

 《属性》

 《特殊》

 《状態》


 お、出た出た。

 ふむ、項目は六つか。

 情報量が多いとは言えないが、不足というほどでもない。

 《品格》項目がイマイチ解りにくいが、これはレアリティだ。

 このベッドは普遍級。つまりどこにでもある品って事だな。

 上から神格、伝説、国宝、貴重、普遍の五段階。

 《特殊》は付与された魔法効果などだ。

 《状態》は備考欄。破損してたり特殊な状態にある場合の情報が記載される。


 興が乗ってあれこれ鑑定してたらあっという間に時間が過ぎ、レナたちが部屋にやって来た。

 その時になってろくに考えを纏めてない事に気付いたが、後の祭りである。


天理浄眼の鑑定能力と、交商神ヘルメーラの加護による鑑定能力は中身が違います。

 対生体では天理浄眼、対物品ではヘルメーラ鑑定の方が詳細な情報を得られます。以下ヘルメーラ鑑定の項目。


 《種別》物品の種別(例:武具・剣、食品、消耗品等)

 《名称》物品名称

 《価値》適正価値(鑑定者在住地域相場)

 《耐久》現在耐久値/最大耐久値 耐久値0で全壊

 《品格》神格/伝説/国宝/貴重/普遍

 《等級》一~十二級まで 級が少ないほど高品質

 《属性》火・水・土・風・雷・木・光・闇

 《特殊》特殊効果

 《状態》備考欄。破損状態、呪われている等



 天理浄眼で、ルドヴァの加護が見えてウルディポーの祝福が見えない理由は、神格の強弱が主な理由ではありません。

 ウルディポーの力により隠蔽処置が施されているせいです。暗号化みたいなものですね。

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