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異世界の弱小クランを最強にしたい  作者: ピザチュウ
クラン入団編
8/53

ショッピングの攻防


「先ずはここね。」


 ダリルに連れられて道具屋に来たレイリーは最早観念していた。何をか、手を繋がれるのをだ。周りの人間は歳の離れた姉妹と思っているのだろうか、微笑ましい、と笑顔を向けてくる。


「それじゃあ行きましょう、レイくん。」


 そう言ってグイッと引っ張るダリルさんの足を凝視しながらついて行ってしまう。レイリーも男であった。男という冒険者だった。


(これじゃあ目の前に人参をぶら下げられたロバだよ…)


「すいませーん、マナポーション入ってますか?」


 ダリルが誰もいないカウンターに大きな声を掛けると奥からドタドタと慌てて出てくる音が聞こえ、やがて足音の主が姿を表す。


「ふぉふぉふぉ!ダリルちゃん!待っておった……………誰じゃその小僧は!!」


 ポカンとした表情から一転険しい顔で僕を睨みつけて唸るお爺さん。


( ゜д゜)←こんな顔してた。


 容姿は草臥れたシャツと汚れたオーバーオール、モノクルを着けて頭はベートーヴェンみたいに爆発していた。


「嫌だわシャス様、私怒りっぽい人怖くて…」


 身をくねらせながら煽情的な胸元に手を当て思っても無い様なことを言うダリル。


「嘘じゃよ、儂ちっちゃい子大好き。」


 そう言って手招きして飴をくれるシャス爺。この人もまた男という冒険者だったのだ。


「それで、マナポーションじゃったな?待っておれ、ダリルちゃんの為に取っといたのじゃよ。」


「まぁ!シャス様大好きですわ。」


 そう言って抱きつくダリルにだらしなく頬を緩めて「そうじゃろ、そうじゃろ」と幸せそう言うシャス爺。彼はもうダリルの掌で踊る憐れなパペットなのだろう、こうはなるまいとレイリーは密かに胸に誓った。


「ほれ、これじゃよ!少数しか製造されないと言われる一級マナポーションじゃ!これで魔力もグングン回復じゃよ!」


「あぁん、シャス様凄いですわぁ…でも、お高いのでしょう?」


「チッチッチ、本当は一本につき金貨一枚じゃが、ダリルちゃんは特別に十本で金貨三枚でいいんじゃよ?」


「まぁ本当!?シャス様大好きぃ!」


 そう言って抱き着くダリルの掌が此方に向いていた。レイリーは全てを察し大金貨を一枚乗せる。するとスルリと手を離したダリル。


「じゃあこれで十本ニセットお願いしますわ。」


 そう言ってレイリーが渡した大金貨で会計を済ませるダリル。女とは斯様に恐ろしい生き物なのかと、レイリーは臓腑の奥から湧き上がる恐怖に肩を竦め震えていた。


「ふぉふぉふぉ!毎度ありじゃよ、また来ておくれ。」


 勿論ですわ、と軽くハグして店を後にするダリル。シャス爺を見るととても幸せそうな顔で手を振っていたのでWin–Winな関係なのだろうと自分を納得させたレイリーであった。






▶︎▶︎






 店を出ると直ぐに「ハイ、どうぞ。」と言って店で買ったマナポーションとお釣りの金貨九十四枚を全て渡してくるダリル。レイリーは金額分以外受け取れませんと返そうとしたが、「子供がそんなに気を使うんじゃありません。」と唇を指で塞がれたので渋々受け取りアイテムポーチに収納する。


「大体原価はあんなものだし、まだまだ在庫はあるみたいだから気にしなくていいのよ。」


 そう言って微笑むダリルさんは魔性の女だなとレイリーは警戒を強めた。強めたものの手綱と化した手はまた握られていた。



 上機嫌のダリルと街を散策していると突風の様な速度で後方から接近してきたエリリアに拉致される。景色と共に遠ざかっていくダリルは悲しそうな顔で此方に手を伸ばしていた。


 そのままエリリアの小脇に抱えられたレイリーは呆然と流れる石畳の数を数えていた。


 石畳のカウントが大凡四千に達しようとしてた時に急停止したエリリアの小脇から放り出され尻餅をつく。


「あはは!ごめんごめん!次はアタシとショッピングしよーよ!」


 そう言ってレイリーの手を取り装備屋に足を運ぶエリリア。引き摺られる様にして連行されるレイリーは従う以外選択肢がなくなっていた。





「おう!らっしゃい…ってエリリアか。後ろの今にも吐きそうな顔してる嬢ちゃんが例の新人か?大丈夫か?」


「おー!約束通り来てやったぞー!この子はレイルっつってウチのクランのリーダーの息子だよ!ってかアタシも客だぞ!愛想良くしなよ。」


 笑顔の店員が急に真顔に変わったのが不服だったのか、エリリアがレイリーを紹介したあと地団駄を踏む。気持ち悪くて吐きそうなのを心配されたのは素直に嬉しいが、女の子と間違えられたのはショックだったレイリー。


「息子ぉ!?えらい可愛らしい顔した坊ちゃんだな…」


「言わないで下さい…気にしてるんです…」


 笑いながらスマンスマンと背を叩く青年。レイリーはもう限界を迎えていたのでカウンター横のトイレに駆け込みリバースした。


 胃の中を空にしてスッキリしたレイリーは二人の元に戻るとある程度話がついていたみたいで、青年はレイリーの採寸をしたいからと言ってメジャーを取り出し体の彼方此方を測り始めた。


 採寸が終わって「コレなら裾上げだけで良さそうだな。」と言って店の奥に消えた青年を見送ってエリリアが武器を見ようというので店の中を見て回る。


「うーん、ダイスさんから聞いたけどレイリーって魔術師なんでしょ?コレなんてどう?」


 そう言って一風変わったブレスレットとメイスを持ってきた。


「これは?」


「えっとね、こっちのブレスレットは魔力の出力を増幅させる魔流加速器で、こっちのメイスは…よっと!」


 エリリアがメイスの柄を押し込むと即座に変形して盾になった。盾といっても折り畳み傘みたいな形状になっており、骨の間に飛膜の様なものが張られていた。柄を引っ張ると元のメイスに戻った。


「な、何ですかそれ!欲しい!」


「えへへー、でっしょー?そう言うと思ったよ!はい、これキミのね!」


 そう言うと手に持っていたメイスをレイリーに手渡すエリリア。突然の事に困惑したレイリーが不思議そうな顔をして見つめるとクスクスと肩を揺らしながら笑った。


「これはオネーさんからのプレゼントだよ!大事に使えよ〜?」


 そう言ってレイリーの額をツンと突くエリリア。思わぬサプライズプレゼントに気持ちは嬉しかったが、それでも申し訳ないのでお金を幾らか払おうとした。


「セシリアにも同じ様に買ってあげたし、女に恥かかせる気なの〜?」


 そう言って頬を膨らませ、不服を顕にしてたので貰ったメイスを大事そうに胸に抱えて全力で御礼をするレイリー。


「あ、あの…すごく嬉しいです!大切にしますね!」


「えへへー、そうそう!それでいい!」


「おーい、裾上げ終わったから着てみてくれー」


 エリリアが満足そうに腕を組みうんうんと頷いているとカウンターから声が掛かる。


「お、早いねー、さっすがハンス!」


「だろー?ほら、これ着てみな。」


 そう言って机の上にサイズ合わせの終わったローブを乗せるハンス。ローブを受け取りその場で着替えようとするが、慌てて女性用の試着室に案内された。エリリアは分かるがハンスまで慌てていたのが解せないレイリー。


 そして着替え終わったレイリーは二人に感想を求める。


「え、えっと、似合ってますか?」


 黒い生地に細かく銀糸が織り込まれてキラキラ光るローブを着て二人の前に姿を表す。ショートワンピースと前が開いた外套が一つになった様な二重構造になっていて、スパッツの様なズボンと三点セットだった。


「こ、これ履いてみて。」


 そう言ってエリリアがミッ○ーマウスが履きそうな先が丸くなった靴を出してくる。唖然とする二人の前で渋々履き替えてお披露目する。


「す…」


「…す?」


(スーパー)可愛いいいい!」


 興奮した様子で頬擦りしてくるエリリアと、職人顔でサムズアップしてるハンスを見てある事に気付くレイリー。


(これ、着せ替え人形にされてる…!)


「あ、あのコレやっぱり要りません!」


「あ、それ君だけの一点モノだからもうサイズ合わせの時点で料金発生してるよ。」


「やられた…!」




 魔力増幅ブレスレットとマウスシューズ合わせて金貨七十枚だった。


 このローブ性能がかなり良く、ヘルクロウラーという魔物の糸を使用しているらしく、吹雪から火山の火口までの温度変化耐性に加えて、聖銀糸と呼ばれるホーリーゴーレム由来の鉱石を細いワイヤーにしたものを生地に織り込む事によって衝撃にも強くアンデッドやレイスにも強いらしい。因みに軽く動いてみたが動きを阻害しない機動性まで完璧に備えていた。


 これ一つで金貨六十七枚で、ブレスレットは金貨八枚だっがサービスだと言って銀貨六枚の靴とセットで金貨三枚までまけて貰った。


 貰ったメイスも含めてかなり得したが素直に喜べないレイリーだった。






▶︎▶︎






「ふんふふんふふーん♪」


 ニコニコと上機嫌に鼻歌を歌いながら歩くエリリアは周囲の知り合いに声を掛けられていた。レイリーを軽く紹介しながら行われるそれは、まるでデスパレードだった。


 女装の様な装備を着用しながら歩いているレイリー。それを見た小さい女の子が「うわぁ、可愛い〜」と言っていたのを耳にしてからは心ここに在らずだった。


 そのまま装備をお披露目すると言われてギルド事務所に戻ってきた。カッコ良い男に憧れていたレイリーは父にこの姿を見せる事になるのかと、意気消沈していた。



ガチャ




「たっだいまー!」


「おかえ、り………レイリー、大変だったね。」


 書類を色々と処理していたダイスが此方を向いて全てを察する。この時初めて父と心で繋がった気がしたレイリーは、頬を一滴の雫で濡らした。


「おー!?何すかその可愛い子!また新人ちゃんっすか?」


 アヘ顔で有名なビルが鼻の下を伸ばして近寄ってくる。正直キモい。


「アンタ何言ってんだよ、ダイスさんの息子だよ!」


「は、初めまして、レイリー・メイルティーンです。」


 自己紹介を聞いたビルが一瞬固まって「嘘でしょ?」と周囲のメンバーに聞いていたが全員首を横に振る。ビルは失礼な奴だった。


「あ、あっはは!成る程、うん!俺っちはビル・オルフェント!魔法使いだよん!」


 そう言って手を伸ばしてくるビルに笑顔で手を握り返すレイリー。彼の方が二回りほど大人だった。


「魔法使い同士仲良くしてくださいね?」


 そう言って首を傾けるレイリーを見て再び鼻の下を伸ばすビルはもう手遅れなのかもしれない。


 ギルドメンバーと談笑しているとダリルとセシリアが居ないことに気付いたレイリーは周囲を見回す。事務所には居ない事に気付いたレイリーがエリリアに聞くと「ん?ダリルの近くで置いてきたよ。」と言っていたので待っておく。




ガチャ




「ただいまぁ〜」


 ダリルが帰って来たのでメンバーの輪から顔を覗かせてみるが、セシリアの姿が見えなかった。


「あ、やだ何それ可愛いいい!エリリア、あなた中々いいセンスね。」


「でっしょー!」


 そう言って親指を立ててウインクを交換する二人。なぜセシリアが帰って来てないのか不思議に思ったレイリーはダリルに質問をする。


「あの、セシリアは一緒じゃないんですか?」


「ん?あぁ、途中まで一緒だったけど一人になりたいって言って川の方に行っちゃった。」



 その言葉に不安になったレイリーは駆け出していた。後ろで慌てて声をかけるメンバーを振り切り玄関の扉を勢いよく開け放ち飛び出す。


 レイリーはある事に気付いていた。


 エリリアが自分と会う前にセシリアに付き合って武器をプレゼントしたと言っていた。それはつまり…


(恥ずかしい格好で街中を歩かされたに違いない…!)


 一人で寂しく落ち込んでいるセシリアを想像すると居ても立っても居られなかったレイリーは全速力で川を目指す。

 やがて川に着き、セシリアの姿が見えなかったら川沿いに北上する。息が切れて、体が倦怠感に襲われてもただひたすら走った。彼女に一人では無いと伝える為に。自分も同じだよと伝える為に。






(もってくれよ…俺の足ッ!)
















 勘違いしたレイリーの爆走を止められる者などもはや居なかった。


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