最強のクラン
「おま!おままま二百階層て!どうすんのこれ!」
「…どうにか一匹だけ仕留めましょう。」
そう言ったクーリアが、息を殺して先導し始める。
それを見て、身を屈めてついて行く一同。
「…居ました。」
「ん?…え、アレ?」
レイリー達が目にしたのは、百層で出会った邪龍より一回り小さな赤い龍だった。
「ご主人様、アレなら行けそうですね。丁度一匹だけみたいですし。」
「…ちょっと待って、凄く嫌な予感がする。」
クーリアが先制攻撃を仕掛けようとするが、セシリアが急いで止める。
歩くウィキことアイリスに質問を振る。
「アイリス、アレなんて魔物?」
「アレはファフニールですね。火龍の中でも最上位の危険な魔物です。邪竜と比較しますと、大体三倍は危険ですね。」
「…倒せる可能性は?」
「全員無傷で…となると50%ですかね。」
残りの確率が意味するモノを考えたレイリーは、安全マージンを取って引き返そうとするが、上層に上がる階段が無いことに気付く。
「あれ?戻れなくない…?」
「二百階層はあの火龍一匹だけ、退路は百層と同じく塞がれているようです。」
「やるしかないね…」
勝利を確信していた一行は、突如訪れた予期せぬ展開に歯嚙みをする。
各々の武器を手に取り戦闘体制に入る。
「カルネージコフィン!」
クーリアが弾いた黒い球体が高速で龍に飛来する。
しかし、足元を前足で抉り、石飛礫を当て対消滅させるファフニール。
既に気付かれていた挙げ句、遊ばれていた事に気付いたセシリアは眉を顰める。
「ホーリーフレイム!」
セシリアから放たれた聖なる炎の奔流が、ファフニールの全身を包み込む。
しかし、意に介さないと言わんばかりに、涼しい顔で反撃の準備を整えている。
レイリーが朧で姿を消し、ファフニールの背後に回り込む。
「貰った!」
ファフニールの首元目掛けて短剣を振るうが、硬質な音を響かせるだけだった。
少々の魔物ならバターを切るように滑らかに刃先が滑るのに、ファフニールの固い鱗の前では火花を散らすだけだった。
「やばっ…!」
首を旋回させて大きな牙がレイリーに迫る。
的確にレイリーを捉えた一撃が、肩の肉に突き刺さる。
それを見たアイリスが咄嗟に駆けつけ、刺さった牙の歯茎をナイフで抉る。
堪らずレイリーを振り落とすファフニールから、レイリーを抱えて距離を取るアイリス。
セシリアが回復魔法を唱えて立て直しを図る。
「シャインヒール!」
「ご主人様…よくも!カルネージコフィン!」
淡い光がレイリーを包み込み、肩に負った傷が閉じていく。
その様子を見たクーリアが、怒りに顔を歪めて、漆黒の球体をファフニールに向けて飛ばす。
それを見たファフニールが上空に飛び立ち回避すると、治療中のレイリーとアイリスに向かって急降下する。
「【膨張しろ 際限なく 荒れ狂え 水流】」
「【収束しろ 熱を奪い 荒れ狂え 暴風】」
ファフニールに向けて、自身の持つ最大級の魔法を解き放つ。
雷神の鉄槌
雷が降り注ぎ、ファフニールの体に稲妻が突き刺さり、体内を暴れ回る。
空中で悶えるファフニールにクーリアとセシリアがトドメの一撃を放つ。
「カルネージコフィン!」
「ホーリーフレイム!」
セシリアが放った聖なる炎が熱線になり、ファフニールの片翼を焼き切る。
続け様に放たれた黒い球体が落下するファフニールの尾を消滅させる。
血飛沫を撒き散らす巨体が、勢いをそのままにレイリーに向けて落下してくる。
「アイリス、今までありがとう。」
そう言ったレイリーが、アイリスを力一杯投げとばす。
ゴシャッ
既に死に絶えたファフニールの下敷きになったレイリーが、地面に血溜まりを作る。
レイリーは、呆然とこちらを見る仲間に見守られながら、三度目の生を終えた。
▶︎▶︎
クランフェスが終わり、八ヶ月が経過した。
パラダイムシフトはクランフェスで優勝し、最強のクランの称号を与えられていた。
莫大な報酬と引き換えに、一人の仲間の命を失ったメンバーは意気消沈していたが、アイリスの言葉を聞き、元気を取り戻す。
アイリスが報酬で購入した家に、クランメンバーが集合する。
その日はアイリスが密かに身籠っていた、レイリーとの子供を出産する予定日だった。
大きな産声を上げて産まれてきた赤子を見ながらアイリスは微笑み声をかける。
「お帰りなさい、レイリー様。」
短い間でしたが、ご愛読有難うございました。
途中から、駆け足になってしまいましたが、途中に回想などの話を差し込むかもしれません。
これからも他作品を投稿しようと思いますので、暖かく見守って下さるようお願いします。




