不器用な道化
レイリー達は皆一斉に見知らぬ部屋に飛ばされていた。
巨大な木の中にいるような、不思議な場所に。
「せ、拙者の不注意ですまないでござる…」
「いいっていいって、あんなの普通分かんないって。」
「そうだねー。強制的に飛ばされちゃったもんねー。」
一同に焦った様子はなかった。
何故なら今いる場所をアイリスが既に解析済みだった。
アイリスのスキルの力を持ってすれば、危険の接近を事前に察知するのは朝飯前だし、戦力面で言えば、最強のパーティーと言っても過言ではないメンバーが集まっている。
憂いなどなかった。
「そういえば、アイリス。あの転移トラップって事前に分からなかったの?」
「いえ、分かってましたが敢えて放置しました。」
「なんで?」
「私の心の中に、怒り、というものが芽生えてしまいまして。あの愚か者共を少し心配させてやろうと思いました。」
「ああ…そうなんだ……まぁ程々にね。」
そう言うと優雅に礼をするアイリス。
レイリーの扱いなどに、少なからず腹が立っていたのだろう、彼女の大胆な意趣返しであった。
「良いでござるな!拙者も我慢の限界だったでござるよ!」
「ですね、ご主人様の命で、直接痛めつけてやれないのが残念でしたし。」
「いい気味だね!」
皆が怒りを顕にしているのは正直嬉しかったが、これじゃ労力使うだけじゃん。とレイリーは密かに思ったが、口が裂けても言えなかった。
「ところでここが七十二層なら上に上がっていけば直ぐに皆とは出会えるかな。」
「もう一度先程の転移トラップで上層に登れますが、どうしますか?」
「え、あれって転移先決まってるの?」
「いえ、ですがタイミングを合わせれば任意の階層へと飛ぶことが可能です。」
「え…それって……」
乱数調整では、とレイリーは思った。
「どうせだから素材集めながら上層に上がろうよー!」
エリスの提案に全員が頷く。
一同はアイリス先導の元、真っ直ぐ上層へ上がる階段へと歩を進めた。
▶︎▶︎
「おりゃ!」
「カルネージコフィン!」
「ニノ矢、驟雨!」
レイリー達は順調に歩みを進め五十七階層へと到達していた。
道中出てくる魔物はどんどん弱くなっていったが、まだ油断出来る程ではない。
現在戦っている魔物も、レッサーデーモンという悪魔のような魔物だが、巧みに魔法と近接格闘術を駆使して攻めてくる、中々トリッキーな魔物だった。
しかし、カエデ達の波状攻撃の前では悉く素材製造機と化していた。
「レイリー様、もうそろそろセシリア達と合流になります。」
「マジか!?オロオロしとくから皆守ってるフリ宜しくね。」
「畏まりました。」
「任せるでござる!」
「オッケー!」
暫くすると奥の通路からセシリアとシャルト、アルフォンスとガルファーが歩いてくるのが見えた。
「……!!いた!あそこよ!」
セシリア達が急いで駆け寄ってくるのが見えたので、蹲って震えるレイリー。
「はわわわわ…助けて下さいぃ…」
あまりに臭い芝居に一同が吹き出しそうになるが、堪えてレイリーを鼓舞する演技を始める。
「ここまで来て諦めるのですか、ほら見てください!セシリア達が救援に来てくれましたよ!」
「なんだって!うわぁやった!助かったぞーわーい!!」
抱き合って喜びを表現するレイリー達とは対照的に、セシリア達は何故か、微妙な雰囲気に包まれていた。
「あ、あの…フィリクスくん……ちょっと魔法使ってみてくれない?」
セシリアの言葉を受けて、はて?という表情で取り敢えず魔法を発動させるレイリー。
「【R F W】」
すると荒れ狂う炎の鞭が何も無い場所で暴れまわり、スッと消えた。
「これがどうかしましたか…?」
「何でだよ!そんなんじゃなかったじゃねぇか!兄貴!」
日本語で文字を綴らないレイリーを見て、苛立ちを顕にするガルファー。
もはやファリクスが、レイリーだという事に確信を持っている様子だった。
「……はぁ、もういいよ。ガルファーも止めて。こんな女の子に守られてるような人がレイリーなわけ無いじゃない。」
「でも……くそ、分かったよ。」
「???取り敢えず助かりましたよ!俺達を助けに来てくれたんですよね?」
そう言って笑顔を向けると、苦虫を噛み潰したような顔で踵を返すガルファーとアルフォンス。
セシリアは軽く頷くと、レイリーの手を取って立ち上がらせる。
「さぁ、さっさと出ましょう。」
「はい!」
レイリーの救出劇が終わり、一同は数日かけてダンジョンから脱出した。




