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異世界の弱小クランを最強にしたい  作者: ピザチュウ
再出発編
45/53

過去との決別



ガチャ



「ん?…お前は…」


「あ!偽レイリー!何のつもり!?フィリアさんにあんな事言って、許されると思ってんの!?」


 決意を固めたレイリーは、パラダイムシフトのクラン事務所へと、足を運んでいた。


 以前より風当たりが強くなっているメンバーに、逃げ出したい気持ちを抱きながら、一欠片の勇気を振り絞る。


「す、すいませんでした!セシリアさんのファンだからといって、少しやり過ぎました!」


 そう言って土下座をするレイリーを見て、顔を見合わせる一同。


「はぁ、やっぱりそうゆう事だったのね…全く。」

「レディを落とすテクニックとしては下の下だよぉ?」

「ははは、まぁ取り敢えず話を聞いてあげようか。」


 ダリルとウィドラルクが呆れた表情で咎め、ダイスが苦笑いを浮かべながらフォローする。


 このクランを最強にしたい。


 当初の目的を忘れて、居場所を失ったショックで塞ぎこんでしまったレイリーだが、アイリス達の存在を、勘定に入れてなかった自分を責めた。


 今では立派な居場所だったのに、目を向けられなかった自分の軽薄さを。


 自分を想い慕ってくれていた者の気持ちに気付かなかった鈍感を。


 今は自分を支えてくれる彼女達と、このクランを最強にする為に、行動を起こす。


 それが自分のお嫁さんになるのが夢だと語った少女への、最大の贖罪と信じて。


「はい、自分でも何であんな事を言ったのか、思い出すだけでも恥ずかしさがこみ上げて来ます…」


 喋ると吐き出しそうになる胃液を飲み込みながら、演技を続ける。

 理解されなくてもいい、嫌われてもいい。

 宿で自分の帰りを待っている仲間達の為に、道化を演じきると決めたレイリー。


「心を入れ替えて荷物持ちでも何でもします。ですからこのクランの末席に加えて頂けないでしょうか…!」


 額を地面に擦り付ける。

 かつての父親の前で、仲間の前で、友の前で。

 そして恋人の前で。


「あ、姉御…俺は許してやっても良いかなぁ…なんて思ってます。」


「私も…まぁ、水に流しましょう。」


 何故か目を合わせようとしない二人からの思わぬ助け船に、思わず頬を綻ばせそうになる。


「ガルファーさん、アルフォンスさん…」


「はぁ、まあ男がここまでやってんだ、許してやろうや、な?」


 オルタスが、レイリーを憐れみ、同情する。


「二度とすんなよな!」

「まぁ、戦力としては期待出来るからねぇ?」

「そうね、まぁダイスさんが良ければ、だけど。」


 エリリアが指を突きつけて最後通告をする。

 ウィドラルクがしょうがない、と妥協をしたように両肩を上げ、ダリルが目線を滑らせダイスを見つめる。


「まぁ、今は決定権は僕にはないからね。」


 ダイスはそう言うと、セシリアの方に視線を流す。

 その場に居る全員が釣られてセシリアに注目する。


「……はぁ、もういいわよ。好きにして。」


「はは、運が良かったね。おめでとう。」


 セシリアが手を挙げて降参の意を示すと、シャルトがケタケタと笑いながらレイリーの背中を叩く。

 どういう事だ?クランリーダーはダイスの筈なのに、とレイリーは一瞬怪訝そうな表情を浮かべるが、直ぐに意識を切り替える。


「あ、ありがとうございます!粉骨砕身頑張っていきます!レイリー・フィリクスです。宜しくお願いします。」


「宜しくね、フィリクスくん?」


 そう言って手を差し出してくるシャルトに、身体中の血液が沸騰しそうになる。

 お前はレイリーではない、と言わんばかりにファーストネームを口にする彼の捻じ曲がった性格を、叩き直してやりたかった。


 だが、理由は全く判らないが、セシリアの彼氏になっている彼と事を構える訳にはいかない。


 アイリス達の顔を思い浮かべ、怒りを腹の底に沈めて笑顔を無理やり作る。


「はい!シャルトさん!」


 こうしてレイリーの、第三の人生が本当の意味で幕を上げた。





▶︎▶︎





ガチャ


「ただいま…」


「ご、ご主人様!」

「師匠!」

「レイル!」


「うぉっ!とと。」


 クランで荷物持ちから、という条件で加入を許してもらったレイリーが宿に帰ると、クーリア、カエデ、エリスが胸に飛び込んでくる。

 いきなりの事でたたらを踏むが、しっかりと受け止めて気持ちを伝える。


「皆、ただいま…心配かけたね……迷惑かけたね……ごめん。」


「御主人様に忠誠を誓った身です。迷惑などとは思っていません。」


「だね、心配はしたけどねー。」


「師匠は立ち直ると信じてたでござる!」


「私も、レイリー様はやれば出来ると信じておりました。」


 見失っていた居場所を確かに感じて幸せに胸が満たされる。

 レイリーは、しがみつく三人を落ち着かせて、離れた後、アイリスの前に跪く。


「アイリス、過去と決別してきたよ…今日から俺は、レイリー・ファリクスだ。」


「はい。」


「今まで気持ちに気付けなくてごめんね。」


「はい。」


「これからも俺と一緒に歩んでくれるかな?」


「はい。」


「馬鹿でおっちょこちょいで、残念な男だけど、俺と付き合って下さい。」


「…はい。」


 そう言ってアイリスの手を取り、指輪を嵌めるレイリー。

 アイリスは薬指に嵌められた指輪を惚けた顔で見て、頬を涙で濡らす。


「幸せです…」


「これからもっと幸せにしてみせるさ。」


 アイリスは涙を流しながら、花が咲いたような笑顔で頷いた。








「「「えええええええ!?」」」


 他の三人は唖然とした表情でやり取りを見た後、同時に叫び声を上げた。


 暫く騒がしくなりそうだ、とレイリーはアイリスと顔を見合わせて笑った。


 

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