拒絶
目を覚ますと、こちらの顔を心配そうに覗き込む、いつもの旅の面々がそこにいた。
「あれ?ここは…」
レイリーはボンヤリとした意識を徐々に覚醒させ、周囲を見回す。
手に何か温かい感触を感じたので、スッと視線を下げると、全員から大事そうに手を握られていた。
「良かったでござる……心配したでござるよ…」
「ご主人様、肝を冷やしましたよ。」
「レイル、もう勝手にどこかに行かないで!」
よく見ると、皆が涙を流しているのがわかった。
泣き腫らした目で、レイリーを大事そうに見る一同。
レイリーはそのままその手を握り返して、謝罪の言葉を吐き出す。
「ごめん……ごめん……!」
コンコン
ガチャ
「邪魔するぜ…」
「邪魔した後に言うものではないですよ。」
部屋の入り口が開き、見知った顔が覗く。
ガルファーと、アルフォンスだった。
「アル、ガルファー…」
「おや?私の略称まで真似るとは、中々の徹底ぶりですね。」
「な、何言ってんだよ…俺だよ…レイリーだよ。」
「かっ!こりゃあスゲェ!ダイスの旦那が言ってた通りの糞野郎だ!」
「へ…?」
もしかしたら自分を心配して来てくれたのかもしれない、そんな微かな希望さえ打ち砕かれたレイリーは、力なく返事を返す。
「そりゃあお前、一年前に死んだ大事な人の名前を出されりゃ誰だって怒るだろ。あ゛ぁ?」
眉間に皺を寄せ、怒りを顕にするガルファーの前に、カエデが立ち塞がる。
「ちょ、ちょっと!師匠はまだ体調が悪いでござるよ!ご退室願うでござる!」
「ご主人様に弓引く者は何人たりとも容赦しませんよ。」
お互い臨戦態勢に入り、一触即発ムードの中、アルフォンスが深い溜息をつく。
「こちらは忠告に来たのです。もう我々の前に姿を現さないでいただきたい、と。」
「そ、そんな!レイルはこれまで皆に会うために頑張ってきたんだよ!そんなのあんまりだよ!!」
アルフォンスの口から出た心無い言葉に激昂するエリス。
まだ短い付き合いだが、自分を救ってくれた恩人に対する馬事雑言は、承服しかねるものだった。
「ならよぉ、証拠はあんのかよ?」
「私が証拠です。私はレイリー様のスキルで、神の声、と呼ばれたスキルです。」
アイリスがガルファーの前に躍り出る。
「かぁー!スゲェなお前!意味不明だぜ!いいからすっこんでろや!」
そう言ってガルファーの振った腕がアイリスの頬に当たる。
そのまま倒れそうになるのをクーリアが慌てて支える。
「お前ら、死にたいのか?」
突如レイリーから放たれる濃密な殺気。
その様子を見て、唖然とする一同を尻目に、レイリーは以前と同じように詠唱を始める。
「【罪人を 拘束しろ 無慈悲な 無数の 氷の 鎖】」
一瞬で拘束されたガルファーとアルフォンスは、激しい既視感に襲われる。
自分達が犯した過去最大の過ち。
パラダイムシフトでセシリアに拳を当ててしまった時、今は亡きレイリーが発動した拘束魔法。
寸分違わず再現されたその鎖に唖然としていた、その時。
「私の仲間に何するの。」
ガルファーとアルフォンスを拘束していた鎖が、一瞬で断ち切られる。
そこに姿を現したのは、セシリアだった。
「中々帰ってこないと思ったら、やっぱりこの人に会いに来てたのね。」
「姉御…これにゃ訳があって…」
言い訳を始めるガルファーと、咳き込むアルフォンスを無視してレイリーの前まで歩み出るセシリア。
「ねぇ、私の前でレイリーの真似止めてもらえるかな?反吐が出るんだけど。」
「ち、ちが!違う!俺は本物だ!春人だよ!」
「どこで調べたのそれ?気持ち悪い…もういいわ、話にならない。行きましょう。」
レイリーの話を途中で遮り、ガルファーとアルフォンスに声を掛けて退室するセシリア。
ガルファーとアルフォンスは、そのままセシリアの後を追って退室した。
扉を閉める瞬間、ガルファーがこちらを見ていたような気がしたレイリーだったが、決定的な決別に、再び気分が悪くなる。
「お、ぉが……ゴプッ!」
ビシャビャビャ!
胃液を吐き出し、再び意識を失ったレイリーを泣きながら抱きしめるアイリスは、何かを決心したような顔をしていた。




