仲良くやろう!
翌日、エリスを連れて大樹の街サルマトリアを出ると、跡形もなく姿を消した。
里を出る時に、過保護なマルスが大量に旅の道具や大樹の雫やらを持たせていた。
常に泉から見守っているよ、というマルスに、エリスが笑顔を咲かせて屋敷を出ると、里の者達がエリスを迎えた。
「元気でやるんだよ!」
「外はきっと楽しいぞ!」
「人間達と末長く幸せに暮らせよ!」
それを聞いたエリスは笑顔でありがとう!と返事を返していたが、レイリー達は浮かない表情だった。
里のエルフ達は、エリスを祝福してたのではなく、やっと厄介者がいなくなる。もう帰ってくるなよ。というような意味合いで言葉を掛けていたのに気付いていたからだった。
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「どうしたの?元気ないよ?」
そう言って小首を傾げ顔を覗き込んでくるエリスに、真実を伝えるのは居た堪れなかったので、里での事は黙っておくことにした。
知る必要のない事だから。
「ううん、ちょっとトイレに行きたいなぁって思って。」
「えっ!?ここら辺おトイレないよ?」
「師匠、あの木の窪みが良い感じでござるよ。」
「ご主人様、こちらに乾いた葉を用意しております。」
「レイリー様、ちゃんと土を被せてくださいね。」
レイリーの冗談に同調した三人は、空気の読める女だった。エリスはレイリー達のやり取りを見て楽しそうに笑う。
「実は拙者もお腹が…うう。」
カエデはガチだった。
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道中帰り道を確認しながら歩いていると、日が傾いて来たので、野営をする事にした一同は準備に取り掛かる。
アイリスとエリスにコテージの設置を頼み、レイリー達は燃えそうな枝や、食べれそうな実を探しに出かける。
コテージの設置をしながらエリスは、アイリスに皆のことを詳しく知りたい、とお願いする。
「皆の事、ですか。私達が一緒に旅をしているきっかけなどで宜しいのですか?」
「うん、皆ともっと仲良くなりたいの!」
「畏まりました、では私とレイリー様の出会いからお話しましょう。」
そう言ってアイリスはアイテムポーチから取り出した白紙に、とんでもない速度と精度で、即席紙芝居を作り出した。
エリスを近くの倒木に座らせて、絵本の読み聞かせをするように、語り始めるアイリス。
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「ーーそして、私達はエリスを救う為に、サルマトリアへと足を運びました。という訳です。」
「うう、なんて良い話なの…」
脚色モリモリの経緯を聴かされたエリスは、涙で頬を濡らしていた。
「ただいまー、ってあれ?なんで泣いてるの?」
「レイル…辛かったね…」
そう言ってレイリーを頭を引き寄せて抱き、優しく頭を撫でるエリス。
よく分からないが、その上から覆いかぶさるように二人を抱きしめるアイリス。
更に、なんか抱きしめなきゃいけない流れなのかな、と思ったカエデが三人を優しく包み込む。
クーリアは隙だらけのレイリーの首筋に歯を立て喉を潤す。
訳がわからないレイリーは、取り敢えず四方八方から感じる弾力を楽しんでいた。
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「で、俺達の事をアイリスから聞いて、感極まったんだね。」
「えへへ、泣いちゃった…」
「師匠の絵本、凄い出来だったでござる。売れるでござるよコレ。」
落ち着いた一同は、焚き火を囲み食事を摂っていた。
「そういえば、エリスのスキルってなに?」
「ワタシ?ワタシのスキルは魔弾の射手っていう魔力の矢を放てるスキルだよ!」
「へぇ!見せて見せて!」
「いーよ!」
エリスは弓を構えて弦を引き絞る。
すると左手と右手の間に光の線が走る。
「一ノ矢、疾風!」
弦を離し、矢を放つと、遠くの木を目掛け、一直線に飛んでいく。
一切の下降をしない弾丸の様な矢は、そのまま木を貫通して森の中に消えていった。
「今のが威力重視の一撃で、他には広範囲に矢を降らせるニノ矢、驟雨と、敵を追尾する三ノ矢、餓狼があるよ!」
「あ、ああ…そうなんだ…」
明らかに自分より強いスキルに、少し嫉妬するレイリーだか、顔には出さない様に努める。
「ご主人様、私もスキルを試してみても良いですか?」
「あ、そういえばクーリアもスキル得たんだよね!うん、見せてよ。」
クーリアもスキルを得た事を思い出したレイリーは、現実逃避する様に、クーリアにスキルの使用を促す。
「畏まりました。カルネージコフィン!」
クーリアの目の前に、ビー玉程の小さな黒い球体が現れて、指で弾くと、エリスが穿った木に高速で飛来する。
着弾の瞬間、黒い球体は一気に膨張し、木を丸ごと吞み込むほど巨大になると、ゆっくりと収縮していく。
やがて消滅した黒い球体があった場所には、特大のクレーターが残っているだけだった。
「あ、あれ?木は?」
「あの黒い球体に触れた物や、生物は消滅します。他には影から影へと移動できるシャドウムーブなどが使えます。」
「へ、へぇ…凄いね。」
「お褒めに預かり光栄です。」
若干ドヤ顔のクーリアを撫でてやると嬉しそうに眼を細める。
レイリーは自分の立場が危うくなっているのを感じ、唯一の癒しであるカエデに視線を送る。
「ん?なんでござるか?」
間抜けな顔を向けるカエデに安心したレイリーは自分の皿に盛られた肉を、一切れカエデの皿に乗せる。
「え?いいんでござるか!?わーい!」
変わらないでいてくれ、と願いを込めた肉を、美味しそうに頬張るカエデだった。




