新たな仲間と過去
部屋に通されたエルフの少女。
その少女は他のエルフと違い、褐色の肌に、丸い耳。
日焼けした人間の少女とさほど変わらない容姿に、違和感を覚える。
「あれ、この子…人間でござるよ。」
「マルスさん、これは一体…」
驚く一同を見て、スッと真面目な表情になったマルスが、重い口を開く。
「その子は、ダークエルフと人間の間に産まれたハーフエルフです。そして、私の孫です。」
「レイリー様、早い話、彼女を引き取って頂きたいみたいです。」
そう言ってマルスを見つめるアイリス。
全てを見透かすような彼女の瞳に、参った、と両手を挙げて降伏するマルス。
「貴方が何者かまでは分かりませんが、まさかそこまで知られているとは…もう小細工など必要ありませんね。私の孫…エリスを貴方達に引き取って頂きたい。」
「えっと、はじめまして、エリスです。」
「ご主人様…これは……」
困惑するクーリアが、表情に影を落としながら、レイリーに向き直る。
当のレイリーは、軽く頷いていた。
「うん、いいよ。」
レイリーの言葉を聞き、カエデとクーリアは目を見開き、アイリスは満足そうに微笑む。
マルスは未来を見ていたのか、ホッと胸を撫で下ろして頭を下げていた。
「事情はわからないけど、ダークエルフってことが問題なのかな?とか思って。」
「さすがの慧眼、恐れ入ります。」
そう言って下げた頭を上げて、レイリーに柔和な笑みを向けるマルス。
実は詳しい理由は分かってなかったが、神像貸してくれたし、飯奢ってくれたから、という理由で少女を引き取ろうとしていた。
「まだ理解されてないお二方の為に説明しますと、昔、私の娘が里の外で木の実を収穫していると、迷子になっていた少年と出会ってしまいました。
村の掟では、人間に姿を見られたら、速やかに殺さなければならなかったのですが、優しい娘は少年を里に案内して、皆に見つからぬようコッソリと囲いました。
数ヶ月後、未来を見た私は、娘が人間の子供を産んでいる光景を見ました。
急いで娘を問い詰めると、既に娘は少年と体を重ねていたみたいで、お腹に子を身篭って居ました。
私は怒り、娘を誑かした人間を探し出し、公開処刑をしました。
それを見た娘は怒り狂い私を殺そうと、剣を持って襲いかかって来たのですが、里の狩人に止められ未遂に終わりました。
その時何人かの狩人が、狂った娘の犠牲となり、同族を殺した娘はダークエルフへと堕ちてしまいました。
その後、娘はダークエルフとして産まれてきた娘を見て、絶望に身を焼かれ、自らの舌を噛み千切り、命を絶ちました。
私は娘を失った時に、なんて愚かなことをしてしまったんだと後悔をして、せめてもの贖罪に、この子だけは健やかに育てようとしました。
しかし、里の者達は、鬼の子だ、忌子だと、この子を受け入れてはくれなかった。
この子はどこにも居場所がないまま今の歳まで育って、一生懸命耐えてきたんだ。
この子に居場所を与えてあげたい…仲間というものを教えてやりたい…
そんな時私は貴方達がこの里にやってくる未来を見ました。
これは神が与えた好機だと思い、エリスに聞いてみました。
ここで一生を終えるのと、外の世界へ飛び出すのと、どっちがいいんだい?って。
そしたらこの子は言ったんです。
外の世界へ行ってみたい、と。
そして私は里の者の目を盗んで、神の像へとエリスを連れて行き、スキルを取得させました。
少しでも貴方達に気に入ってもらえるようにと。
まぁそんなものは杞憂だったみたいですがね。」
そう言って話を終えるマルスは慈愛に溢れた顔で、エリスを見ていた。
話を聞いたエリスは涙を流していた。
レイリーとカエデとクーリアも、鼻水を垂れ流しながら、嗚咽交じりの泣き声を部屋に響かせていた。
その様子に若干引いたアイリスが、エリスの元に歩いて行き、ハンカチでエリスの涙を拭う。
「こんな方々ですが、着いてきますか?」
目線の高さを合わせてアイリスが優しく語りかけると、真っ直ぐな瞳で返答する。
「もち!!」
「軽いなオイ…」
こうしてレイリー達に新たな仲間が出来た。
「そう言えばエリスちゃんって幾つなの?」
「36歳だよ。」
ガッツリ歳上だった。




