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異世界の弱小クランを最強にしたい  作者: ピザチュウ
中央大陸帰還編
37/53

木と空間の交渉人



 野営を繰り返しながら着実に森を進んでいた一行は、大樹の街サルマトリアに到着した。


 筈なのだが、そこには何もなかった。


「アイリスさんや?」


「はい。」


「ここにゃーなんにもありゃせんよ?」


「いえ、サルマトリアがあります。」


 呆然と立ち尽くすレイリー達に、アイリスがきっぱりと言い放つのだが、目の前にあるのは、普通の森の木々だった。


 開けた空間がある訳でもなければ、家らしい家など一切ない。

 アイリスが珍しく迷子になったのでは、と一同は猜疑心を深めるばかりだった。


「でも、街なんて何処にもないよ?」


「私の歩いた道程をそのままなぞるようについて来てください。」


 そう言ったアイリスが歩き始める。

 レイリー達はお互いの顔を見合わせ、置いて行かれないようにアイリスの背中を追う。

 木々の隙間を蛇行しながら先行するアイリスが、地面から隆起した木の根をくぐる。

 それを追うレイリー達は驚きの光景を目にする。


 先程まで普通の森だった場所に、突如集落が姿を現した。


 美しい湖、生い茂る草花、自然と融和した幻想的な建築物は、まるでエルフの里、というような様相だった。

 ただ一つ想像と違うのは、外を歩く人が、一人もいないという事だった。



「ここはエルフの里です。外敵からの侵入を防ぐ為に複雑な入場経路を設けてあるので、人間は愚か魔物も入れません。こちらでクーリアのスキルを取得しようと思います。」


 エルフの里だった。

 スキルを取得するという事は神の像があって、宣誓を出来る環境があるということだろう。

 スキルを取得する前に人間に捕まったと、道中で話したクーリアは、目を輝かせていた。教会騎士が駐在する神殿で、スキルを取得する必要が無くなったからだ。


 この街に寄ったのは、神殿にいい思い出がないクーリアを気遣ったアイリスの粋な計らいだった。




「拙者、その『えるふ』とやらが何なのか、よく分からないでござる。」


「『えるふ』、とは妖精か何かでしょうか?」


 カエデとクーリアも初めて聞く単語のようで戸惑っていたが、レイリーは既に前世である程度の知識を得ていた。


「確か、森の中で暮らす一族で、自然と調和のとれた生活を営んでいる、排他的な種族じゃない?」


「はい。大凡レイリー様の予想通りの種族かと。」


「じゃあ俺達がここに居るのまずいんじゃないかな…?」

 

 いきなり弓を構えたエルフに囲まれては目も当てられない。

 今まで誰も存在を確認できてないという事は、相当徹底して人を避けてきた筈だ、とレイリーは警戒を顕にする。


「問題ありません。既に我々は来客として扱われています。」


 そう言ってアイリスが指を向けた方向に視線を滑らせると、花が案内をするように、一つの建物に向かって道を作っていた。


 一同は、顔を見合わせ頷くと、花が案内する建物へと歩みを進めた。





▶︎▶︎





「ようこそ、大樹の客人よ。何の用でこちらへ?」


 建物の中へと入ると、青年が目の前に立っていた。

 耳は尖って髪の毛からはみ出し、目の前の青年含め、周囲に居るエルフも皆、若々しい姿だった。

 集落にエルフの姿が見えなかったのは、皆家の中に隠れていたからなのかな、とレイリーは苦笑いを浮かべる。


「神の像に祈りを捧げに参りました。突然の訪問をお許し下さい。」


 そう言って優雅に一礼するアイリスに合わせて頭を下げるレイリー達。

 それを見た青年がポンと手を叩き礼を返す。


「成る程、これは失礼しました。私はマルス。この里の長を務めさせていただいてます。」


「え!?そんなに若いのに凄いでござる!」


 里の長と聞きカエデが驚きの声を上げるが、マルスは柔和な笑みを浮かべて、礼をする。


「いやはや、若いと言われたのは何百年振りでしょうか。」


「もしかして私のように外見は歳をとらないのでしょうか?」


 クーリアが小首を傾げ推察する。周囲のエルフ数人も、マルスと同じ位の年齢にしか見えなかったからだろう。


「そうですね、里を任されるようになってかれこれ百年は経過していますね。」


「「ひゃ、百年!?」」


 カエデとクーリアが大きく仰け反って驚きを全身で表現する。

 アイリスとレイリーは大方予想が付いていたので無関心だったが、それを見たマルスが逆に驚く。


「おや、エルフは人間と接触した事がないので、もっと驚かれるかと思いましたが…」


「それはお互い様でしょ。」


 レイリーが言葉を返すと、マルスは人差し指を立て、ちっちっち、と左右に振った。古いな。


「我々は大樹の泉より、常に人間の営みを監視していました。我々の里に人間が来るのは予想外でしたが、人間自体は認識していました。貴方達は我々を見るのも、存在を知るのも初めての筈ですが。」


 そう言ってこちらの様子を伺うマルスに、同じ様に人差し指を左右に振り、訂正する。


「俺はエルフという存在をある世界で認識していたし、こっちのアイリスはこの世界の事はほぼ把握しているんで。」


 そう言うと楽しそうに肩を揺らすマルス。

 カエデはエルフ達の耳が尖っている事に、今更気付いて驚いていた。


「ふふふ、つい興が乗ってしまい話が逸れました、神の像は大樹の中にあります。どうぞこちらへ。」


 そう言って屋敷を出て歩き始めたマルス。

 周囲の家々から顔を覗かせるエルフ。

 好奇の視線に晒されながら後を追って暫く歩くと、一際大きな大樹の麓に辿り着いた。


「この中に神の像があります。祈りを捧げ終わりましたら、食事を我が屋敷で摂られて下さい。」


 優雅に一礼して去るマルスの姿が見えなくなるのを確認してクーリアが口を開く。


「待遇が良過ぎではないでしょうか?」


「俺も思った。どういうことなの?」


 徹底して他種族との接触を禁じていたエルフにしては、やけにあっさりした対応だった事に疑問を抱くレイリー達は、一斉にアイリスの顔を覗き込み質問する。


「この里の長は、大樹の泉を介してある程度の未来が見えるものが就任するのです。なので我々が来ることも、危害を加えるような存在ではない事も理解してます。さっきの問答は、暇を持て余したエルフの戯れですね。」


 アイリスの劣化版のようなスキルかな?とレイリー達は納得して、クーリアのスキルを貰うために大樹の中に入る。



 中に入ると大きな空洞の中に、巨大な神の像が祀られていた。

 神の像は木で造られており、よく見ると以前見た神様と別人の様だった。


「神よ、我々の前に顕現したまえ。」


 アイリスが神の像に触れながら呟くと、突如眩しい光が辺りを包む。

 咄嗟に細めた目をゆっくりと開けると、目の前に神々しい光を纏う女性が、宙を浮いていた。


 その光景に唖然としていると、重力を感じさせないように、ふわり、と地面に足をつけると、ゆっくりと瞼を開き言葉を紡ぐ。








「私を呼んだのは貴方ですか、R2D2。」

「GAR1です。今はレイリー様よりアイリスと言う名を授かってます。」





「…私を呼んだのは貴方ですか、アイリス。」




 舞台が異世界から宇宙になるのを防いだアイリス。

 呼び出したのは、少しおっちょこちょいな神様だった。


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