ザリフ森林
意識が徐々に浮上してくる。重たい瞼を開けると知らない天井が前髪のフィルター越しにボンヤリと見える。
寝返りを打って身体をうつ伏せにして起き上がろうとすると何かが視界の端にチラリと映る。
「おはようございますレイリー様。」
「……………誰?」
部屋の隅に立つ少女に声をかけるとスカートの端を両手で摘み優雅に膝を折り一礼する。
「私の個体名はGA-R1です。」
「……………何してんの?」
「近くに同一種族の遺体が有りましたので修復して再利用させていただきました。」
黒い髪に金眼、スラリとした肢体に陶器のような白い肌。端正な顔立ちはアイドルも真っ青な美人だった。それでいて何故かメイド服だった。
「修復って、それ…もしかしてこの人のお姉さんか何かじゃないの…?」
「この個体は全くの他人ですが、レイリー様の補助をさせて頂くのに肉体が必要でしたのでお借りしました。容姿は修復の際にレイリー様と姉妹に見えるよう改良したものです。何か不自然でしょうか?」
「補助……あ…いや、とても可愛いです。」
「ありがとう御座います。」
無表情で一礼をする彼女を見ながらレイリーはまず状況確認に努めようとする。
まずボロボロの山小屋の様な所に雑魚寝していた事からこの部屋で死んだみたいだが、レイリーが転生した事によってそのまま起き上がり今に至る、という事だろう。
「ここは一体…」
「惑星エムフェルト、エルカルト大陸の最南端、モース国領、ザリフ森林です。盗賊に拠点として扱われていたこの小屋で、攫われた恋人を助けようとしたレイリー・フィリクスは、単身乗り込み山賊達を皆殺しにし、この部屋で死体となった恋人を発見し自分の心臓を突き刺し死亡しました。」
「へ、へぇ…そこまで分かるんだね。」
「お褒めに預かり恐縮です。」
そう言って再びスカートの端を両手で摘み優雅に膝を折り一礼する。一体彼女が何者なのか分からないがコレからお世話になるのだから、製品番号の様な名前で呼ぶのはマズイだろうとレイリーは示唆した。
「あのさ、呼びにくいし、周囲の目もあるだろうからさ…名前つけていい?」
「ご自由にどうぞ。」
「えっと、じゃあアイリスで。」
「………認証登録変更完了。今から私の個体名はアイリスです。」
「宜しく、アイリス。」
そう言って手を差し出すレイリーを真顔で見つめるアイリス。
「あ、あの…」
「御用でしょうか。」
「いや、あの…握手……しようかなと。」
「畏まりました。」
そう言って手を握り返してくるアイリスに一抹の不安を覚えながら取り敢えず元の国に戻る算段を頭の中で立てるレイリー。
「もしかして、元の国に帰りたいって言ったら何かいい案が出てきたり…とか。」
チラリとアイリスを一瞥すると近くの机上に置いてあった白紙の紙にフリーハンドとは思えない精度で地図を書き込んでいく。
「この港町に立ち寄り船に乗り大陸に渡りましょう。」
そう言ってアイリスが指差した先に目線を滑らせると丸い印がいつの間にか書かれていた。詳しい話をアイリスから聞くと何でもスラスラと答えてくれる。その万能っぷりは、まるでド○えもんや○ーグル先生を彷彿とさせる。
目的地も決まったし、この小屋を軽く調べて何か旅に役立つ物を見つけておこうと、レイリーは周囲を散策し始める。
するとある程度の食料と装備が入ったアイテムポーチを発見する。
「四日…いや、三日分ってところかな…」
その後も何か使えるものは無いかと探したが、あるのは結構な金と、山賊の死体だけだった。
もう此処には用はないと見切りをつけたレイリーは、アイリスと共にザリフ森林を抜ける為に小屋を離れた。




