死んだ人は帰っては来ない
何もない無い空間。
音も無い、光も無い、五感を全て失われた様な状態でそこに何も無いという認識だけ出来る。
あぁ、俺はまた死んだんだなぁ、と何も無い空間で魂だけが存在証明をしていた。今まで積み上げてきたものが全て無に還る感覚。空虚な心を写した様なその空間でレイリーが出来ることなどなかった。
(皆悲しんだだろうなぁ。)
(俺の死体はどうなったんだろう。)
もう帰ってこない日々を思いながら何も無い空間を漂う。何も無いという割には自分という存在が居るという認識はある。
((転生をご希望ですか?))
突如聴こえてくる声。孤独な空間で不意に聴こえたそれに縋り付くように話しかけようとするレイリー。
(生き返れるの?)
((いいえ、一度死を迎えた魂に戻る事は不可能です。))
(じゃあいいや。)
((畏まりました。))
再び訪れる沈黙。もう一度あのクランに戻って、もう一度あの家族に迎えられて、もう一度セシリアと一緒になって。
叶うはずもない希望を目の前にぶら下げて叩き落とされたレイリーは声の主が少し嫌いになった。
そもそもこの声の主は誰なんだろう?ここは死後の世界ではないのでは?いや、でもさっき転生するか、とか死後の肉体には戻れない。とか言ってたし。そんな思考が堂々巡りし続ける。
一体どの位の時が経過したか分からなくなって恐ろしくなったレイリーが心の声でもう一度話しかけてみる。
(ねぇ、声を聴かせてよ。)
((はい。お呼びでしょうか?))
声をかけると再び帰ってくる返答に安堵するレイリー。柔らかな印象の女性の声だが一体誰なんだろうかと気になり質問を重ねていく。
(君の名前は?)
((私の個体名はGA-R1です。))
(君は人間なの?)
((いいえ。))
薄々予想はしていたが、神様か何かなのだろうか。レイリーは目的の分からない声に困惑する。
(なんの目的でここに居るの?)
((レイリー様を教え導く為です。))
(どういう事?どう導いてくれるの?)
((転生可能先リストを表示しますか?))
(一応お願い。)
謎の声が転生先リストを表示していく。
・アストン・クラウネル
・アマルティア・ウィンスレット
・インセル・カウファール
…
…
・ワトソン・グースリー
・ワルド・ブーゲンビリア
・ワン・ティルクレル
((転生先の詳細を表示しますか?))
(あ、そんな事できるの?)
((可能です。転生先の詳細を表示しますか?))
全ての転生先を表示させた謎の声が村人Aみたいな会話をし始めたので、取り敢えず詳細を表示してもらう。
すると等間隔に空けられた名前の間のスペースに出生年月日、年齢、性別、家族構成などが表示される。
(年齢が十三歳とかあるけど、これってどういう事?)
((自殺などを行った方の肉体をお借りして転生を行います。))
(え!?そんな事も出来るの!?)
((可能です。自殺をした直後に魂を交換し肉体を修復します。元の肉体の持ち主はそのまま魂となり転生を果たします。尚、その際元の魂の持ち主は記憶を失い転生しますのでご安心下さい。))
(な、成る程…それだったら良いのかな…?)
((レイリー様の主観的観測で良ければ宜しいかと。))
だったらまたあのクランに入る事とか出来るのかな、また皆と一緒にダンジョンを攻略できるのかなと、レイリーの期待は高まる一方だった。
(取り敢えず候補を十三歳の男で絞れるかな?)
((畏まりました。候補はこの五名です。))
・グレン・ウォーカー
・セシル・レイフィールド
・ネイリア・マイル
・フェリクス・オットマン
・レイリー・フィリクス
ズラリと並んでいた名前の欄が一気に消失してコンパクトになった。レイリーは自分と同じ名前の者が気になった。
(このレイリーって人の詳細を表示して。)
((畏まりました。))
・レイリー・フィリクス
EC1407.5.26、男性、13歳、家族なし
(出生年月日と年齢を見ると丁度俺が死んだ後の世界だな…一応全身とか見れる?)
((畏まりました。))
表示されたのはスラッとした長身、黒髪のショートヘアーで金眼のイケメンだった。何故自殺をするに至ったかは分からないが、是非もないと思うレイリー。
彼はこの世界に何らかの理由で嫌気がさし、死を選んだのだから、と免罪符を心の中で唱え続ける。
(じゃあこの人でお願い。)
((畏まりました。同期開始します。相換転移展開、構成物質解析…完了。損傷箇所修復…完了。適合率100パーセント。相換転移開始。))
謎の声が途切れたと同時に何かに引っ張られる感覚に、身体中を支配されると同時に、レイリーの意識が途切れた。




