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異世界の弱小クランを最強にしたい  作者: ピザチュウ
幼少期
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転生して魔法を使って

 何も無い空間。


 音も無い、光も無い、五感を全て失われた様な状態で、そこに何も無いという認識だけ出来る。



 自分が死んでしまった事に徐々に気付いていく春人は、無いはずの胸が苦しく締め付けられる様な感覚に襲われた。



(ああ、俺は死んだんだな…)



 ただ一つ機能する思考で、この空間に永遠に漂うのか、と思うと、恐怖と絶望の感情が春人を支配した。



(楓も俺のせいでこんな苦痛を味わってるのかな)



 そう思うと今度は、悲哀と憤怒の感情が、ふと湧き上がる。混濁した感情がどんどん堆積していく中、時間だけは、無情に過ぎていく感覚があった。


 ふとこの空間に疑問を持った春人は、周りに何か無いか探し始める。


 目もない、鼻もない、手もなければ足もない、そんな状況で動こうとする春人に


ストンッ


と何かに入り込んだ感覚が襲う。



 苦しい。



 なかった筈の五感を取り戻し、突如体がどこか狭いトンネルに押し込まれている様な感触が全身を襲い、圧迫された体を解放する様に、力が掛かる方向へ身を委ねる。


 やがて何やら音が聞こえてくる。僅かな時間なのに、永遠にも思えた停滞からの解放に、魂が歓喜するのが分かった春人は、音の方向を我武者羅に目指す。


 やがて瞼の裏に赤い光が差し込む。


 春人は肺に溜まった空気を吐き出す様に、周りに自分の居場所を知らせる様に、大声で叫ぶ。




「おぎゃあ!おぎゃあ!」




 あれ?なんか違う。




 春人は予想とは違ったシャウトに、動揺が隠せないでいたが、直ぐに周囲が騒がしくなった事と、自分が何者かに大切に抱えられてるという安心感に意識を手放していく。




 春人が剣と魔法の世界"エムフェルト"に誕生した瞬間だった。













▶︎▶︎












 その後数ヶ月を過ごし分かった事が多々ある。


 先ずは春人は、生まれ変わったという事だ。


 産まれて暫くは、混乱する情報を整理するのに時間が掛かったが、動く手足とぼんやりと見える目、そして何より自分の発した声が、明らかに乳幼児のものだった。


 何より周囲から聞こえる言語が、明らかに地球のものではない独特のもので、この世界が異世界ではないかという期待を抱いてしまうものだった。


 そこから大体の雰囲気で、異世界転生を果たしたと確信を得た。


 数ヶ月経った今では、凡そ周りの風景や人の顔を見る事が出来る様になったが、どうやらこの世界の住人は、日本人とはかけ離れた容姿だった。


 髪の毛も黒髪から茶髪、金髪、青、赤、緑、果ては銀髪までいた。


 髪の色素からして、もう地球では有り得ないのだが、更に異世界を決定付けるのが、魔法の存在だった。



 春人が寝かされているベビーベッドにお漏らしをしてしまった時に、母が濡れた布巾で、レイリーの体を拭いたあと、風魔法で股間を乾かしていた。指先が輝き、宙に文字を綴ると、小規模な風が局所で吹き撫でた。


 他にも料理を作る時も同じ様な動作の後竃に火をかけたり、木の桶に水を貯めたりしていた。


 春人も真似して魔法を使おうとするが、指が思う様に動かないし、そもそもどうやってるのか分からなかった。


 取り敢えず当面の目標は魔法を使える様になる事と喋れる様になる事、あとは歩ける様になる事だなと春人は未来への展望が開けた。










▶︎▶︎










 産まれてから三年の月日が経った。




 目はハッキリと見える様になり、文字も簡単な童話なら読める程になっていたし、周囲の会話を聞き取れる様になった春人は会話をしてみようかと思ったが難易度が高く上手く喋れなかった。


 初めて喋った時は一歳の時で、母に「ママ〜」と言ったら「まぁ!喋ったわ!」と嬉しそうに春人を抱えていた。


 春人の母はフィリア・メイルティーン。


 優しそうな人で、腰まで伸びる光沢のある金髪のロングヘアーに青い目、白い肌の綺麗な人だった。授乳の際に慈しむ様に頭を撫でてくれるのが好きだった。


 父はダイス・メイルティーン。


 少し頼りなさそうな茶髪のショートヘア、目は金色で無精髭を生やしている人だ。毎朝弓を下げて何処かに出掛けるのを母と見送っている。


 今は少し喋れる様になっているのでこの世界や町の事など様々な情報を手に入れる事ができた。


 春人が生まれた世界はエムフェルトという惑星で産まれた国はアリアンテス、ここはウィールズという街で父は見た目に反してあるクランのリーダーを務めているらしい。


 このクランと言うのが世界の謎と言われているダンジョンという迷宮を攻略する冒険者の集まりで、ギルドに登録して設立する事が出来るらしい。


 ダンジョンには色んな宝が眠っているらしく父曰く「ダンジョンは男のロマンなんだ」という事らしい。正直ワクワクしたし、目を輝かせて話を聞いてる春人を母フィリアが見て「あなたに似たのね」と笑っていたのはいい思い出だ。


 三歳を迎えた春人は父が留守の間母に魔法を教えてもらえる様に頼んでみた。



「ママー、まほーおしえて」


「まぁ、魔法に興味があるの?」


 そう言われて春人は目一杯首を縦に振り肯定の意思表示をする。



「そうねぇ、簡単なものからね」



 そう言って魔法の使い方を教えてくれた。



 魔法とは体内に眠る魔力を循環させて体の任意の場所に任意の量を放出させるものらしい。この過程で魔力に指向性を持たせて種類、形を形成するものが詠唱と呼ばれる文字らしい。


 中には文字を省略させたり、書かずに発動させられる人も居るらしいがスキルと呼ばれるものの恩恵らしい。一応無詠唱魔法はスキルを持たずして発動自体は出来る。

 その際、単純な出力は同じなのだが、魔法として顕現する時の精度が変わるらしい。


 詠唱したファイアアローはハッキリとした火の矢が真っ直ぐ飛んでいき、省略したら火の棒が放物線を描きながら飛んでいき、無詠唱だと炎が目の前に噴射されるといった具合だ。使う者のイメージが魔力を循環させる段階で具体的ならばちゃんと火の矢が真っ直ぐ飛んでいくらしいが、そうなるには反復練習で感覚を掴むしかないらしい。


「じゃあ先ずはウインドね」


 そう言ってフィリアは宙に指を滑らせウインドを発動し窓際のカーテンを揺らす。


「おおー!ママしゅごい!」


「ふふ、ありがと」


 素直な感嘆の声を漏らすとフィリアは誇らしそうに笑顔を見せ「やってごらん」と春人に魔法の使用を促す。


 宙に書かれた文字が【W】と酷似していたので同じ様に指を滑らせるが、全く発動しない。何度も挑戦して上手くいかない様子をみたフィリアが「指先に意識を集中させるんじゃなくて、全身を巡る魔力に意識を集中させてごらん」とアドバイスをくれたので言う通りにしてみる。


(全身の血管を巡ってるイメージか…?)


 春人は全身に何か温かいものが流れているのを感じてそれを指先に収束させてみると指先が輝き始めたので【W】と指先を滑らせる。



ビュオッ



(出来た…!)



 春人は初めて魔法の発動に成功した。横で見ていた母が「飲み込みが早いわね、天才かも知れないわ!」と喜んでいるのを見てもっと練習してもっと喜ばせてあげたいという気持ちに駆られた。


 春人はその日初めて魔法の発動に成功し、初めて魔力枯渇で失神してしまった。

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