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異世界の弱小クランを最強にしたい  作者: ピザチュウ
クラン入団編
18/53

油断大敵



 修行を重ねたギルドメンバー達はある程度まで強くなっていた。しかし、それはある程度の範疇から出ていない極々一般的な範囲での話だった。


 キラーマンティスやブラッドバッドを鬼の様に狩り続けて一ヶ月が経過した頃、パラダイムシフトの面々と相談して取り敢えず五層まで降ってみようかという話になった。

 食料と寝袋をアイテムポーチに入れたパラダイムシフトの面々はマッピングされた地図を片手に一気に五層へと降りていった。



「ホェ〜…地下なのに草原があるっす…」


 どういう原理でそうなっているのかは分からないが、高い天井は擬似太陽の様なものが登っており、広大な空間には草原が広がっていた。


 簡易的なテントで休息する人々が点在しており、いずれも見張りの者が居なかった。


「ここには魔物が出現しないから中継地点として利用するんだよ。」

「まぁでも、俺達も此処まで来たのは初めてだけどな。」


 ダイスとオルタスが眩しそうに目を細めて話している。ここまで来れたのはレイリーとセシリアのお陰だと、口々に礼を口にする。


「さて、六層からは敵も強くなるみたいだから少し休憩してから行こうか。」


 ダイスから五回ごとに苛烈さを増していく階層の法則を聞かされていたので警戒を強める一同。以前揉め事を起こしたウロボロスなどは四十層までの探索を成功させているのだが、その事をレイリー達はまだ知らない。


 軽く休憩しているとふと疑問に思った事を実行に移してみる。


(神の声!…ゴッドボイス!…ステータスオープン…サモン!…クソォ!出てこいや!)



 自身が持っているはずのスキルが全く発動しない事に苛立っていると不思議な顔をしたセシリアに顔を覗く込まれる。


「どうしたの?」

「ん?うーん…今更だけどスキルを使ってみようと思って…」

「あ、以前言ってた使い方も名前も分からないスキル?」

「うん、どうすれば良いのか…この先どんどん敵も強くなっていくだろうし、使える様になった方が良いかなぁって…」

「うーん…神の声みたいなものって事は祈りを捧げないとダメなのかな?」

「それもやってみたよ。」


「では、魔法を詠唱する時に神の声と綴ってみては如何でしょうか?」


 話を聞いていたのかアルフォンスが提案してくる。それも一理あるなと思い詠唱をしてみる。


「【神の 声】」




………




「【神の声】」




………





「ダメだ、神様はニートらしい。」

「ニート?というものが何かは分かりませんが発動しない様ですね…」

「そもそもスキルって発言しなくても発動するものだからその線は無いかな…」



 結局色々試している内に休憩は終わり、いよいよ六層の攻略が始まった。






▶︎▶︎






 六層に降りると冒険者の姿も減り、周囲には溶岩が広がっていた。四層までは洞窟の様な構造、五層は草原、六層になると溶岩と、様変わりする景色に感嘆の声を漏らす一同。


「お、ダイス!お前らもとうとう六層デビューか!」


 顎髭を蓄えた山賊の頭の様な男が話しかけてきた。頭にはツノが付いた兜、武器はグレートアクスと完璧にヴァイキングだった。


「やぁボレル、パラダイムシフトは生まれ変わったんだよ。」


「そうかぁ、最近酒場に来ねえと思ったらさてはあの頃みてぇにダンジョンに籠って修行してたんだな?」

「あの頃?」


 レイリーは会話に引っかかりを覚えて首を傾げる。そう言えばダイスの過去はフィリアとの馴れ初め位しか聞いたことがなかったからだ。


「ボレル…」

「あ、あぁ、すまねぇ。じゃあ俺は持ち場に戻るわ!無理してつまんねー死に方すんなよ!」

「君もね!」


 意地悪そうな笑みを浮かべ、ボレルと呼ばれた男が自分の仲間達の元に戻っていく。

 その背中を見つめるダイスはどこか寂しそうな目をしていた。






▶︎▶︎





 六層に出てくる敵は牛頭人型の魔物、ミノタウロスと口から炎を吐く大蜥蜴のファイアリザード、ブラッドバッドとキラーマンティスも出てくる。

 ミノタウロスは大きな斧を持っており、高い攻撃力がある為、見掛けたら最優先で始末している。

 ファイアリザードは一定の距離を開けると口から火炎放射をしながら暴れまわるので極力距離が離せない厄介な魔物だった。


 レイリーが水の魔法を使おうとしたらセシリアに怒られる一幕もあった。


 水蒸気が一気に膨張して近くで戦う者が危険に陥るかも知れないと勉強が苦手なレイリーに説明していた。原理は分からないが、密閉空間で使う様な魔法では無いと怒られたので止めておこう程度に留めるレイリー。因みに周囲にいた者は常識だろ、と鼻で笑っていた。

 周囲に居た者は原理は分かっていなかった。





▶︎▶︎






 暫くは六層で修行していたパラダイムシフトの面々は余裕で処理できる様になるとそのまま七層、七層の敵が余裕で処理できる様になると八層とどんどん降っていった。


 そして四ヶ月後、事件は九層で起きた。


 いつもの様に九層で訓練をしていると、ビルが足を滑らせて魔物に襲われかけた。九層の魔物はインフェルノウルフという体を炎で包んだ狼の様な魔物が出現した。

 ビルは詠唱が終わってマナポーションを飲もうとアイテムポーチに手を入れた。

 その時潜んでいたインフェルノウルフが溶岩から飛び出してきて驚いたビルはマナポーションをその場に溢して足を滑らせた。


「う、うわぁぁ!」


 叫び声の方向を確認すると尻餅を付いたビル目掛けてインフェルノウルフが全力疾走していた。


「くそ!」


 詠唱が間に合わないと判断したレイリーはそのままインフェルノウルフの胴体に体当たりしたが、インフェルノウルフの爪がレイリーのローブに引っかかり離れなくなってしまった。


「や、やば!!」


 そのままインフェルノウルフに引き摺られる様にして溶岩の中に飛び込んでいったレイリーをビルは呆然と見つめることしかできなかった。


「あ、あぁ……ぁあぁああ゛あ゛あ゛!!」


 ビルの叫び声を聴いたメンバーが一斉に振り返ると一緒に居たはずのレイリーが居なくなっていることに気付く一同はビルを問い詰める。


「レイリー、溶岩に、俺っちを、爪が、あぁ。」


 涙を流しながら呆然とした表情でブツブツと呟くビルに嫌な予感がした全員は周囲を捜索する。


 泣きながらレイリーを探すセシリア、手が火傷しているのに岩をひっくり返しながら探すダイス、顔を青くしながら周囲を必死に捜索したメンバーだったが、周囲に居た他のクランの冒険者の証言により溶岩に飛び込んでいった事を知る。



そのままレイリーは帰って来なかった。

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