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異世界の弱小クランを最強にしたい  作者: ピザチュウ
クラン入団編
16/53

花火は脇役であって




 青い空、白い砂浜、眼前に広がる水平線は雄大な自然の偉大さを語るのに十分な美しさだった。


 押しては返す波が訪れた人を誘い、仕事で溜まった疲れと共に服を脱ぎ捨て開放感を与える。


 それが海。それが夏。



 かく言うパラダイムシフトの面々も例に倣って水着姿で砂浜に立っていた。ビーチパラソルやバーベキューセット、日焼け止めやオイル…万全を期して浮かれていた。



 ビーチは何処にするかと皆がクラン事務所で大陸図を広げて唸っているとアルフォンスが「私の別荘の近くにプライベートビーチが有りますので父上にお願いして使いますか?」と言ってきた。


 一同は是非もないと驚き頷いた。その時、漫画みたいな金持ちだなコイツ、とレイリーは思った。






▶︎▶︎






「さぁ、泳ごうか!」


「「「「「「「「おー!」」」」」」」



 クランメンバー達が海に向けて足跡を作りながら駆け出す。プライベートビーチと化している砂浜を自由に満喫する一同はいずれも俗世のことは忘れ楽しむ事のみを考えていた。


「ねぇ、ちょっとオイル塗ってくれない?」


「お、俺ですか!?あの…その……」


「ちょっとダリル!ハンスは今から私と泳ぐんですけどー!」



 武器屋のハンスがダリルの誘惑にたじろぎ、それを見たエリリアが頬を膨らませている。ハンスとエリリアは昔からの友達らしく、エリリアが海に行かないかと誘って連れてきた様だ。


「何よ、減るもんじゃないでしょう?」


「減るんですけど!時間は刻一刻と減っていくんですけど!」


 ダリルはエリリアを揶揄いたいだけの様で、じゃあレイリーに塗って貰おうかな…と言ってセシリアを揶揄い始める。レイリーはキッパリと断ってセシリアの手を引き海に駆け出していった。


「んもぅ、つれないわねぇ…アル。オイル塗ってくれない?」


 最早手当たり次第に誘うダリル。


「はい、私で宜しければ。」


 そう言って即座にオイルを受け取るアルフォンスを見てガルファーがつまらなそうに一人で海に歩き始めた。それを見たダリルとエリリアがアルフォンスの頭を同時に叩く。


「貴方、女心を理解してないわね。」

「今すぐ行って謝って来い!!」


 分かりやすく何で…という表情をしながら急いでガルファーの元に駆け出すアルフォンス。追い付いて謝罪をするも腕ひしぎ十字固めを決められてしまう。激痛に悲鳴を上げているが、ガルファーの色んなところに腕が当たっているので幸せそうな顔をしていたのを男性陣は見逃さなかった。




 レイリーはセシリアと水を掛け合っていた。






▶︎▶︎






 暫くするとダイスとフィリアが特大のスイカを持って来た。レイリー発案のスイカ割りをする為だ。


 他のメンバーからは何の意味があるのかと却下されそうになったが、精神を集中して周囲の指示を聴くことによって状況判断力と円滑な連携が取れる様になる、というソレっぽいこじ付けで全員を納得させる事に成功する。


 セシリアは全てを理解していた。レイリーがやりたいだけだったのを。


 スイカを誰が割るかくじ引きで決め、結局オルタスが割る事になった。


 素振り用の木剣を両手に構えて目隠しをしたオルタスが定位置に着いたので指示が飛び交う。


「右!右だよオルタス!」

「あぁ!行きすぎてるよパパ!」

「あなた!少し左よ!」

「寧ろ更に右に行って一周回るっす!」

「あははは!(スーパー)混乱してるじゃん!」



 などと周りの指示に翻弄されるオルタス。スイカとの距離をジリジリと詰めてスイカの前に到達した時、「あなた!今よ!」とセリスの一声で木剣を振り下ろすオルタス。


 すると振り下ろされた木剣がスイカのど真ん中を捉え、直撃を受けたスイカが綺麗に割れる。


「あなた!さすが私の旦那ね!」

「当たり前だろ!ガッハッハ!」


 キャッキャと喜び抱き合う二人を気まずそうな目で見るセシリアの肩を叩いて励ますレイリー。メンタルセラピーも忘れない出来る男である。






▶︎▶︎







 全員でスイカを食べていると日が暮れてきたのでバーベキューをする事になりセットを開始する。


 オルタスとセリス、セシリアが其々コンロ、金網、食器などを馬車から抱えてくる。


 因みにこの馬車も勿論アルフォンスが手配したものであった。馭者はアルフォンス専属の執事が行い、今は別荘の掃除から戻ってきて食材を持って来ている。



 役割分担を決め全員でセットしていると、配膳の為に皿を配っていたアルフォンスとガルファーの手が重なり急いで手を引く。


「あ、ごめ!」

「い、いえ…お気になさらず。」



 そう言ってお互い顔を赤くしながら配膳の続きに取り掛かった。胸がキュンキュンした一同であった。



 準備も終わりバーベキューが始まった。


 肉と野菜をバランスよく串に刺しながら並べていくレイリー、焼きあがった串を皿に盛り付けていくセシリア、その皿を全員に配膳するガルファーとアルフォンス。


 この様な雑用は新人の仕事だとレイリーが頑なに譲らなかったので、フィリアとセリス母達は渋々引き下がった。偶には羽を休めて貰いたいというレイリーとセシリアの粋な計らいに母達は、いつもより美味しいわ、と笑顔を咲かせていた。






▶︎▶︎






「【大空で 爆ぜ 彩れ 鮮やかな 無数の 火球】!」


 この日の為に編み出したレイリーのオリジナル魔法花火を全員が無駄に広い屋敷のバルコニーから眺める。


 自然とカップリングが完成しており、ダイスとフィリア、オルタスとセリス、エリリアとハンス、レイリーとセシリア、ビルとダリルとウィドラルクは三人一緒に見ている。



「わぁ、綺麗…」


「ええ、まるで夜空に咲く花ですね。」



 ガルファーが美しい花火に感嘆の声を漏らし、アルフォンスが頷く。花火に照らされて浮かんでは消えるガルファーの横顔をチラチラと見ながらアルフォンスは顔を赤くしていた。


「あの、少し涼みませんか?」


「??うん。」


 アルフォンスが二人きりになる為にガルファーを誘い二つ返事でついていく。二人がコソッと外出するのを見逃さなかった一同は顔を見合わせ頷き後を追う。


 完全な野次馬だった。






▶︎▶︎






 別荘から少し離れた丘の岩に腰掛ける二人。そこから見える海は月明かりに照らされて海の上に幻想的な光の道を作っていた。


「凄い…まるで月から招待されてるみたいだね。」


「でしょう?幼い頃父に内緒で教えて貰った場所なのです。」


「え?内緒なのに私に教えて良かったの?」


 ガルファーは首を傾げてアルフォンスを見るが、アルフォンスは真面目な顔でガルファーを見つめていた。


「父との約束で、この場所を誰かに教える時は条件があるのです。」


「何?約束って。」



「この場所を教える人は、生涯を共にする人にしなさい……と。」




「………!」



 ガルファーが両手で口を覆い目を見開く。やがて大粒の涙を流しながら俯いてしまう。



「す、すまない!嫌だった…だろうか?」


「ううん……嬉しくて…!」


 動揺して駆け寄るアルフォンスに首を振って否定するガルファー。月明かりに照らされて浮かび上がる笑顔は、今まで見たどの顔より美しいとアルフォンスは思った。






ドォォオン!ドォォオン!







「あれ?花火…?」


「おや?……なぜこんな時に?」


「あ!」



 ガルファーがアルフォンスの肩をチョンチョンと突き目線を滑らせ一点を見つめる。釣られて目線の方向に顔を向けると、少し離れた岩場に複数の人影が花火に照らされて姿を浮き上がらせていた。


「やれやれ…そういう事ですか。」


 花火の演出がレイリー達のお節介だと知って思わず笑みを零すアルフォンスとガルファー。花火を二人で見ながら暫く沈黙が流れる。



「ねぇ…」




「ん?どうしました?」




「あのね……キ(ドォォオン!)……なんてね。」









「はい?今なんて?」


「うぅ…何でもねーよ!」





 絶妙なタイミングで差し込む花火の音を恨みながら顔を背けるガルファー。あまりの恥ずかしさについつい口調が戻ってしまう。


 そっぽを向くガルファーの頬に両手を添えて無理やり自分の方に向かせたアルフォンスが唇を重ねる。



「……!」




 花火の音で消えたと思ってた想いはちゃんと伝わってたのが嬉しくなり、終わるのを惜しむように離れる唇の端を上げ、涙を流して満面の笑みを浮かべるガルファー。





「私はやっぱりそっちの口調の方があなたらしくて好きですね…」


「最初は嫌いって言ってた癖によ…」





「今は愛おしいのですよ。」






「そうかよ…馬鹿野郎。」









 笑顔で頷くガルファーともう一度唇を重ねるアルフォンス。この瞬間は花火ではなく二人が主役になっていた。
























 暫くして屋敷に帰ろうと二人が手を繋いで歩いていると、魔力枯渇で倒れているレイリーを発見して急いで助けを呼んだという。

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