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異世界の弱小クランを最強にしたい  作者: ピザチュウ
クラン入団編
14/53

更生授業




 ギルド事務所に居た二人のクランメンバーと初顔合わせを仕切り直すレイリー。



「初めまして、レイリー・メイルティーンです。さっき見せた通り魔法使いだから、一応後方支援担当です。宜しくね。」


「セシリア・アーデンルクスです。近接戦闘と聖魔法で回復と後方支援もするから、これといった役割は決まってません。臨機応変に対応するから、これから宜しくね。」




 正座で自己紹介を聞く二人は、「「はい!」」と声を合わせて元気に返事をした。二人とも歳はそんなに離れてないらしく、眼鏡が十三、スーツが十四らしい。体が既に大人と変わらないくらい大きいので少し驚いたレイリーとセシリア。



「私はアルフォンス・ブーゲンビリア、魔術による後方支援も槍による近接戦闘もどちらもいけます。先程はお見苦しい所をお見せして誠に申し訳御座いませんでした…」


 そう言って深々と土下座をする眼鏡の男は、黒髪の七三分け、切れ長の一重の瞳にスッと通る鼻筋は気品を感じさせる。一つ一つの所作からも優雅さを感じるが、貴族の息子か何かだろうか?だとしたらなんでこんな所に居るんだろうか?謎は深まるばかりである。槍の腕前はそこそこ良いらしいので、レイリー達が入る前は即戦力だったらしい。



「俺はガルファー・アルデヒルトっす。バリバリの近接戦闘特化で得物はナックルっす。姉御にゃこれからお世話になります!」




 そう言って太股に手を置き深々と頭を下げるのは鋭い三白眼のスーツの女性。燃える様な赤髪と瞳、比較的がっしりとした肉体は女性アスリートを連想させる。スーツはここ一番の場面で着る一張羅らしく、普段は鉄の胸当てとレギンス、ガントレットとナックルを装備しているらしい。


 ガルファーも近接戦闘においてはレイリー達が入るまでクラン一強かったらしく、おそらく今まではこの二人を御せる人間が居なかったから暴走していたのだろうと考察するレイリーとセシリアだった。



「あぁ、そういえばさっきはごめんね?カッとしちゃった…」


「いえ、我々が愚かなだけでしたのでレイリー様は何も非がありません。」


「俺もセシリアの姉貴にはワリィと思ってる…情けねぇとこ見せちまった…」


「ううん、いいよ!二人共これからは仲間なんだし仲良くしよっ!ね?」


 そう言ってそれぞれ熱い握手を交わす。何故かレイリーと握手する時に、アルフォンスは顔を赤らめていた。勘違いする前に察したレイリーは釘を打っておく。


「あ、俺男だからね。」


「「!!?」」


 二人が驚愕に目を剥く。そんなに男らしくないだろうかとレイリーか落ち込むとセシリアが頭を撫でてくる。それが原因の一端ではと思ったレイリーだったが気持ちよかったので口には出さない。



 翌日から新しいメンバーを加えて三層を目指すことになったパラダイムシフトは、陣形の確認とパーティーの再編成を全員で話し合い纏めた。


ダイス班


・ダイス

・オルタス

・ビル

・ウィドラルク



セシリア班


・セシリア

・エリリア

・ダリル



レイリー班


・レイリー

・ガルファー

・アルフォンス




 となった。


 レイリーの班には問題児が配属されたが、現状二人を任せられるのがレイリーしかいないとの事でこれを快諾する。初めて自分のパーティーを持ったセシリアとレイリーは若干浮ついていたが、ダンジョンでは皆の命を預かるのだから気を引き締めなければ、と良い刺激になっていた。


 翌日から三層を攻略すると話すと驚いていたアルフォンスとガルファーだったが、レイリーの実力なら余裕だろうと納得した。





▶︎▶︎






「あ、兄貴ぃぃいい!助けてくれえええ!」


「レイリー様ァ!これは多過ぎますぅ!!」



 レイリー班の問題児二人が大声を張り上げながらレイリーに助けを求める。


 翌日から二人の実力を図ろうと三層に潜り、ダイス班、セシリア班とは別のフロアで訓練していた。


 三層からはブラッドバッドという大きな吸血蝙蝠と、キラーマンティスという人間程の大きさの蟷螂が出現する様になったので、問題児二人に戦わせてみる。


 すると、アルフォンスは無遠慮に魔法をガルファーの近くに向かって放ち、槍で戦うアルフォンスの近くで戦い動きを邪魔するガルファー。


 連携が全くなってない二人を呼び戻し話を聞くと驚きの答えが返ってきた。


「この愚か者が魔法の着弾点に入ろうとするのが悪いのです。」

「このクソ眼鏡が邪魔なとこに突っ立ってるんすよぉ!」


 と、全く反省の色が見られなかった為に、フロア外の魔物を全て捕らえてレイリー班が居るフロアで全て解き放った。勿論他の冒険者が居ないことは確認済みである。


「協力して倒してごらんよ、二人なら出来るはずだよー。」


「「む、無茶だぁぁあああ!」」



 泣き叫びながら逃げ惑う二人を笑顔で見守るレイリー。実際協力すれば倒せない相手ではないし、本当に危険な時は手助けをする気だが今は極限まで追い込んで甘えを捨てさせようと思うレイリーだった。


「協調性を身につけなさーい。」


「くそぉぉお!やってやんよ!!」



 アルフォンスと仲良く逃げていたガルファーが急反転してキラーマンティスの複眼に回し蹴りを放つ。


 バキィッと首が嫌な音を立てて地面に倒れると、後方から迫っていたキラーマンティスが足を取られて停滞する。


「今がチャンスだ!【R F W】!」


 荒れ狂う炎の鞭で飛んでくるブラッドバッドとキラーマンティスを纏めて焼き払うアルフォンスはそのままガルファーの元に駆け寄り槍で援護をし、一対一で戦える状況を作り出してあげていた。


(へぇ…いい判断だけど…)



 最初こそは順調に思えたが、すぐに後続のキラーマンティスが次々に追いつきブラッドバッドが四方八方から襲い掛かる。


「だぁぁあああ!やっぱりダメじゃねーかぁ!」

「一時撤退ですよぉぉおお!!」


 と二人はまた仲良く逃げ出した。


 結局体感時間で三時間ほど掛けて全ての魔物を殲滅した二人は肩を揺らしながら、荒い呼吸と怠い体を落ち着ける為にその場にへたり込んだ。


「や、やりましたぁ…はぁはぁ…」

「死ぬかと…はぁはぁ…思ったぜ…」



「誰が休んでいいって言ったかな?」


 声が聞こえた方向を振り返るとレイリーが先程やっとの思いで倒したのと同等の数の魔物を氷の檻で捕獲して連れてきていた。車輪付きの檻だった。


「いやーいい汗かいた…っと!」


 額の汗を拭いながら氷の檻を解除するレイリー。アルフォンスとガルファーは涙目で逃げ出したが別のフロアに向かう出口を土の壁で防がれてしまう。


 その日問題児二人は自分の力で立てなくなるほどレイリーにしごかれた。




▶︎▶︎




 その日は休憩を挟みながら十時間に及ぶ継続戦闘を繰り返した。へとへとになった二人を土の台車に乗せて出口に戻る道中二人と話してみようと思うレイリー。


「ねえ、二人はどうしてこのクランに入ろうと思ったの?」



 その質問に呼吸が先に整ったガルファーが返答をする。


「俺、ダイスさんに出会う前はストリートチルドレンだったんすよ。」



 予想以上に重たい話だったのでレイリーは息を飲んで頷く。


「小せえ頃に両親なくして身寄りもなくて、所謂親無し子ってやつでして…悪ぃ事しないと生きてけねぇ人生を恨んだりしたっすよ…


ある日ギルド庁舎の周辺でスリをして巡回兵に捕まったんすよ。以前から目をつけられてたみたいで、こりゃあ腕でも切り落とされるかなぁとか思ってたんすよ。


そしたら金をスられたおっさんがそれは僕が渡したお金です、放してあげてくださいって言うんすよ。


それが当時のダイスでさぁ。


そのおっさんはその後宿屋を用意してくれてあったけぇ飯も食わせてくれた。その男気に惚れ込んだ俺はどうやったらこの恩を返せるか聞いた。


そしたらそのおっさんは笑顔で大きくなったらウチのクランにおいでっつって俺に大金貨二枚をくれたんだ。


こんなに受け取れねえっつったら初期投資だっつって突っ撥ねられたんすよ。


そっから二年後、このままじゃいけねぇって思って死に物狂いで荷物持ちでもなんでもやって、成人してから直ぐにダイスさんのクランに入ったって訳でさぁ…


つまんねぇ話っすよ。あん時のあったけぇ飯が忘れらんねぇ小娘のつまんねぇ話っす…」



 そう言ったガルファーは少し恥ずかしそうに鼻の下を指で擦っていた。感動的な話を聞いた後に不謹慎だが古いな、とレイリーは思った。



「そっか…じゃあ頑張らなきゃね!」


「うっす!」


「先ずはアルと仲良くするところからだね。」


「う…頑張るっす……」


 アルというのはアルフォンスの愛称でレイリーが付けた。因みにこれが初使用だが反応はどうだろうとドキドキしながらアルフォンスをみる。


 すると今の話を聴いていて何か思うところがあったのだろうか、真剣な顔で何かを考え込んでいる。


「では、次は私からお話しましょう。」


「あ、うん。どうぞ。」


「私は幼い頃から何一つ不自由なく育った貴族の三男でして、家を継ぐ必要もない、これといった才能もない所謂穀潰しという存在でした。」


「ケッ、飯が食えるだけ良いじゃねーか。」


 ガルファーが挑発的な発言をするがアルフォンスはそれを聞き流していた。軽く目でガルファーを咎めると「すまねぇ…」と謝って話の続きを促す。


「そんな私は何をするのも自由でしたが、家を継ぐのは兄さんだし、次男は商店を出すんだって張り切っていましたね…私は、何も思い浮かびませんでした。


そのまま何も思い浮かばないまま十歳の誕生日を迎えたある日でした。父から金貨を貰い好きなものを買ってこいと言われた私は反抗してみようと思い至り街の酒場に入ってみたのです。


するとそこには心から楽しそうに冒険の話をする冒険者が溢れかえっていました。


生き生きとしたその姿にフラフラと光に誘われる羽虫のように近付いていくと、ここは子供のくるところじゃねぇ!とある冒険者が怒鳴ってきました。


怖いしもう帰ろうかなと思ったその時に君も話がしたいのかい?と優しく話しかけてくれたのがダイスさんでした。


ダイスさんは色んな話を聞かせてくれました。周囲の人間はまた始まったとか法螺吹き野郎とか言ってましたが当時の僕には何より魅力的な話でした。


その後縁があったらまた会おうねというダイスさんに一礼して家に帰り、酒場で聞いた話を繰り返し思い出しては胸を躍らせました。


そのままズルズルと成人を迎えた時神から魔槍術というスキルを賜りました。


私はこれを運命と思いました。神が冒険者になれと言っているのだと。あの時きっかけをくれたダイスさんのクランに入る事を決めたのです。


私のこのスキルで少しでも役立てるように。あの日の酒場の様に楽しく冒険の話をする事を夢見ながら。



…以上です。」



 二人共割とヘビーな理由だったものだからか、その場に沈黙が流れる。


「まぁ、なんだ。明日も気張れや。」


「言われずともそうする。」



 沈黙を破りそう言った二人は少し距離が縮まっている気がしたレイリーだった。




2017.4.22日

コメントで、ガルファーが兄貴と言ってるのに後で驚いているのがおかしい、とご指摘いただいた点を修正しました。

非常に助かりました!

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