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異世界の弱小クランを最強にしたい  作者: ピザチュウ
クラン入団編
13/53

罪には罰を


 クラン事務所から家に帰り、大事な話があると母を呼び席に着かせるレイリー。


 自分は本当は産まれ変わった転生者である事や今まで育ててくれた感謝を全て吐き出したレイリーをフィリアは優しく抱きしめた。


「苦しかったね…辛かったね…」


 そう言って頭を撫でるフィリアを見て夫婦揃って同じ事をするんだなぁ、と温もりに包まれた。自分は恵まれた両親の元に産まれて良かったと、神に感謝し、両親にこれまで以上の愛情を向ける事を決心したレイリーは、クランフェスで優勝して楽な生活を送らせてあげようと決心する。







▶︎▶︎







 クランフェス優勝を新たな目標として掲げたパラダイムシフトは翌日からダンジョンで修行に勤しむ。



 ダリルとビルはレイリーに実践魔法講座を、オルタスとエリリアはセシリアに近接戦闘指南を、ダイスはダークウルフ相手に射的練習を反復して行い、ウィドラルクはフレイルを使いこなす為にゴブリンと戦闘を繰り返していた。


「ちょ、ちょっと休憩っす…」


 そう言ってその場にへたり込むビルの目の前に岩の槍を突き刺すレイリー。


「それこの先の階層で同じ事言えんの?」


 ビルは跳ね起きてすぐ様ダークウルフ目掛けて風の刃を放出する。


 ビルとダリルは日本語の習得がどうやっても不可能らしく、手を取ってこうだよ、となぞってあげても発動しなかった事から魂の構造に関係してるのかと考察し、すぐさま違うカリキュラムを組み直し並列の四節詠唱を目標にして訓練をしている。


 ダリルは潜在魔力量が多いらしく、第三節までの詠唱を成功させていた。


「【T W B】!」


 追尾する風の刃がダークウルフをズタズタに切り裂き周囲に血煙が舞う。ややコントロールが甘いのか、地面に軌道を描いてしまうが、追尾することでどうにか撃破している。


「はぁはぁ…どう?」


「いい感じだけど、地面が抉れて軌道が読めちゃうから、移動速度のある魔物相手だと仕留める前に範囲外に逃げられるか、持続時間が続かずに魔法が消えてしまうよ。」


「成る程…はぁはぁ…分かったわ…」


「ズルいっす!俺っちも早く三節詠唱したいっす!」


 肩で息をしながら膝をつくダリルの周りをピョンピョン跳ねまわりながら抗議の声を上げるビル。


「なんだ、まだ元気じゃないか。」


 そう言うと遠くで氷の檻に捕らえているダークウルフを解き放つレイリー。慈悲は無い。




「ギャアアアアアア!」






▶︎▶︎







「ん?今何か聴こえなかったか?」


「パパ!余所見しない!」



 隣のフロアで近接戦闘の訓練をしているオルタスの耳にも断末魔が届いたのか、注意が散漫になった所をセシリアに叱責される。意識を目の前のダークウルフに引き戻しオルタスが盾を押し出し直剣を振るう。


「はぁ!」


 オルタスの振るった剣線がダークウルフの胴体をなぞり、斬りつけられたダークウルフは内臓を噴き出しながら絶命する。


「アタシもやっちゃうよ!」


 オルタスから少し離れた場所で戦闘をするエリリアは双短剣と籠手を装備してダークウルフを翻弄する。飛びかかったダークウルフが噛みつこうと口を開けば籠手を噛ませて空いた手に持った短剣で首を撫で切る。そのままもう一匹に絶命したダークウルフを投げつけ避けた所に連撃を叩き込む。


「よし…アタシ(スーパー)強くなってる!」


 元々持っていたポテンシャルが高いだけに教えれば教える程乾いたスポンジのように吸収していくオルタスとエリリア。そんな二人を見てホーネル先生もこんな気持ちだったのかな、と感慨に耽るセシリア。


「僕はもうちょっとで掴めそうだよ…!」


 そう言って矢を放つダイス。射線上には何もいないが戦闘中のダークウルフの一体がまるで誘われたように着弾点に滑り出て、そのまま放物線を描いて飛来した矢に穿たれる。


「よし…よし…!」


 ダイスは弓の腕は悪くなかったのだが、それは動かない標的を相手にした場合のみだった。動く標的を射る為に必要なのは射的の腕だけではなく状況を観察してどのように動くかを予想する事にある。


 例えば二体のダークウルフが其々誰を標的にしているか、飛来した魔法や近接攻撃をどちら側に避けるのかという予想ができれば避けた先に矢が当たるように弓を射ることが出来る。非常に高度な技術なので十回やって一回成功するかしないかのレベルだったが、それでも以前に比べ確実に腕を上げていた。


「よぉし、じゃあもう一匹誘導するよぉ!」


 そう言ってフレイルに繋がれた鉄球をダークウルフの胴体に叩き込むウィドラルク。本来近接戦闘に参加しない彼だが、必要最低限の護身とダイスの射的訓練の練習の為一対一でダークウルフと戦う。ウィドラルクの一撃を受けたダークウルフはキャインッと短い悲鳴を上げながらウィドラルクと距離を取ろうと駆け出す。


「そこだっ!」


 再び放たれた矢に太股を貫かれそのまま地面を慣性に従いながら滑ると、後から追い付いたウィドラルクに頭部を潰されて息の根を止める。


「うん!皆凄くいい感じだよ!」


「ガッハッハ!そうだろう!パパは凄いんだぞ。」

「アタシもなんだか(スーパー)いい感じだよ!」

「うん、セシリアの教え方が上手いのかな?」

「そうだねぇ、末恐ろしいねぇ。」



 レイリーとは打って変わって和やかな雰囲気のパーティーの話を後から聞いて愚痴を漏らすビルだったが、レイリーが使用した魔法に魅せられた彼はレイリーの元を離れることはなかった。




▶︎▶︎




「あ、いたよ!」


「溢れたのは任せるっす!」



 魔法使いパーティーがある程度魔法をコントロール出来るようになった頃合いを見計らって、セシリア率いる近接戦闘パーティーに混ざる。



「アタシの分残しといてよねー!」


「分かったわよ、【R F W】」


 エリリアが短剣を構えて駆け出すのを見てダリルが荒れ狂う炎の鞭をダークウルフに向けて放つ。無数の炎の鞭に体を焼かれたダークウルフが尽く倒れて生命の活動を終える。辛うじて逃れたダークウルフの背後からエリリアの短剣が容赦なく襲い掛かる。オルタスはダリルとビルの前で盾を構えて防御の姿勢をとり、ウィドラルクは三人の後方で背後の奇襲に備えつつ回復に向かえるよう待機している。


「そこだ!」


 ダイスが放った矢に次々と穿たれるダークウルル。ダリルとビルの魔法で撃ち漏らしたダークウルフをエリリアが処理し、それでも残ればダイスが射殺す。もはや魔物に逃げ場はなかった。



「うん!皆ここ一ヶ月で大分強くなったね。」

「これなら第三階層くらいまで行っても大丈夫かな?」


 皆の成長を喜ぶ二人が拍手しながら近寄る。周囲のクリアリングは既に完了しており、その数は数十体にも及ぶが涼しい顔をしていた。


「ははは、そうだね。これならいける気がするよ!」


「アタシ達にもはや敵はない!」


「おい、慢心すんなよ。油断大敵って言うからな。」


「そうだねぇ、絶対はないからねぇ。」


「まぁお二人がついてるから大丈夫っす!」


「貴方それを他力本願って言うのよ…」



 自分の成長を喜ぶクランメンバーとそんな話をしながら、今日の訓練は終わりだと告げてダンジョンから出る。






▶︎▶︎






「お、今日は早いな。」


 ダンジョンから出ると守衛に話しかけられて足を止める一行。その姿は自身に満ち溢れており、一ヶ月前に弱小ギルドと呼ばれたパラダイムシフトは徐々に名前が売れていた。


「おい、あれ見ろよ…」

「あいつら、パラダイムシフトっつー弱小ギルドだろ?」

「いや、それがよぉ、新人が二人入ってきてから毎日三桁の量のダークウルフの毛皮と魔石をギルドに持ってってるらしいぜ?」

「マジかよ!?どっかから転売してるだけなんじゃないか?」

「そんな事しても稼ぎにならないだろ!しかもこの前戦闘してるのをみたんだがアイツら中堅クランの奴らと同じ位の動きしてたぜ…」



 周囲の噂話を聴きながら鼻が高くなる一行は守衛に渡された用紙に退場時間を書き込み颯爽とその場を後にする。今日も大漁だったから素材を売りに行くのが楽しみだ、と道中明るく会話をしながらギルド庁舎に向かう。


 ギルドに着くといつもの素材売却窓口に向かい素材を売却する。魔物から剥ぎ取った毛皮や魔石を売り払い、ここ一ヶ月は一日約八金貨の稼ぎを出している。


 因みにお給料は月末にギルド庁舎に預けて貯めた報酬額を山分けする。周囲を見ると、ここでも騒めきが起こっていたが最近は、またあいつらか、と何故か納得の目で見られている。






▶︎▶︎







 そのまま今日の反省点を皆で話し合う為にギルド事務所に帰ると、騒々しい男女が居た。



 一人は知的な眼鏡をかけた男性で、もう一人は黒いスーツを着た獰猛な目つきの女性だった。



「だから何度も言わせないで下さい。知性の欠片もない話し方を直しなさいと。」


「んだとゴルァ!テメェいつから俺に指図出来るようになったんだあ゛ぁ!?」




「おお、君たち怪我治ったんだね。」


 喧嘩をする二人の間にダイスが入って仲裁する。


 クランに入団した時に聞かされた喧嘩して休暇している問題児二人とは彼等の事だろうとすぐに察したレイリーはセシリアを庇うように前に立ち警戒する。


「あぁ我がリーダー!丁度良かった、この品性の欠片もない女に躾のほどを宜しくお願いしたく。」

「あ゛ぁ!?テメェダイスさんの前で何言ってんだぶっ殺すぞ!」

「やれやれ…何故怪我が治るタイミングが重なったのか…もう少し治療を受けていれば良かったよ。」

「ほぉ…ならもっぺんブチのめして教会に逆戻りさせてやるよ!」


 そう言って取っ組み合いを始めた二人を仲裁しにセシリアが駆け出す。



「やめなさいよ!みっともないわよ!」


「おや?貴方はどちら様ですか?迷子ならギルドにお行きなさい。」

「ガキはすっこんでろや!怪我すんぞ!」



 そう言われたセシリアの顳顬に青筋が走るのが見えた。こりゃあ相当お冠やでぇ…と周囲のメンバーが震えていると取っ組み合いをしていたスーツの女性の裏拳がセシリアに当たる。


「きゃっ!」


「セシリア!」


 後ろに倒れかけるセシリアをオルタスが受け止める。






 それを見たレイリーの怒りが沸点を超えて爆発する。




 目の前でセシリアが悲鳴を上げているのにこの馬鹿どもは何をやっているんだ、と取っ組み合いを続ける二人に怒りを形にする。


「【罪人を 拘束しろ 無慈悲な 無数の 氷の 鎖】」


 六節の詠唱により瞬時に捕まる二人は何が起こったのか分からないような呆けた顔でお互いに顔を見合わせている。ギリギリと締まる鎖は手足と首に無数に巻き付いてビクともしない。




「お前ら何やってるんだ、死にたいのか?」




 そう言った少年の声に底冷えする様な恐怖を覚えた二人は締め付ける氷の鎖の冷たさや苦しさなど忘れて震えながら滝の様な汗を流す。


 一歩、また一歩と近付いてくる少年の足音がまるで死へのカウントダウンに聴こえた二人は謝罪の言葉を掛けようとするが、首に巻きついた鎖がそれを許さない。


 言葉も、四肢の自由も、命さえも目の前の少年に握られた事により眼鏡をかけた男性は歯をカチカチ鳴らし大粒の涙を流し、獰猛な顔をしていたスーツの女性は顔を青くしながら股を濡らしていた。



 周囲のメンバーも初めて見るレイリーの激昂に動揺と恐怖でその場を動けないでいた。



「レイル!もういいから!気にしてないから!」



 セシリアがそう声を掛けると二人を拘束していた鎖が雲散して、解放された二人は宙から床に放り出されてその場にへたり込む。



「せ、セシリア!大丈夫?口切ってない?」



 オロオロしながらオルタスに介抱されるセシリアの周りをぐるぐる回る少年は、先程までその場に充満する濃厚な殺気を放っていた者と同一人物とは思えない程可愛らしく、慈愛に満ち溢れた表情をしていた。



「ずみ゛ま゛ぜんでじだぁ!」

「すいません兄貴!許して下せぇ!!」



 涙と小水で床を汚しながら綺麗な土下座をする二人のクランメンバー。




 これが後に親友となる二人との初対面だった。


















主人公が怒るシーンって思いっきり倫理とか道徳とか無視した方がいいと思うんですよね。


無視してみました。

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