不幸な事故は異世界へのゲート
広島県某所に住まう学生、有村 春人 (18)は異世界転生モノのアニメや漫画にハマっていた。
寝る間も惜しんで没頭するあまり、幼馴染に起こして貰うという失態を犯すほどに。
「また寝てる…起きろー!」
「うわぁっ!」
急速に浮上した意識に動悸を起こしながら掠れた視界をクリアにしていく。目覚まし時計が鳴らなかったのかと一瞬思ったが、自分で止めたのを思い出し後悔をして頭を掻く。
両手を腰に置き眉を顰めている幼馴染は、そのまま春人の腰まで掛かる布団を乱暴に剥ぎ取り、人差し指を春人の眉間に突き付け「何時だと思ってんの!」とだらしない生活態度を叱責する。
「悪いって…今何時?」
「もう7時30分だよこのアホー!」
間の抜けた質問に幼馴染の真北 楓が大きな声を出し、堪らず春人は指で耳に栓をする。容赦のない幼馴染のモーニングコールに、感謝より先に倦怠感を抱きながら、就寝の続きを訴える体を無理やり動かし支度を始める。
「ごめんって…毎日ありがとなぁ…」
「わ、分かればいいのよ!」
礼を言うと幼馴染は、頬を赤くし誇らしげに腕を組み鼻を鳴らす。彼女とは本当に腐れ縁で、お隣さんだった事もありずっと一緒に育ってきた。小学生の頃死んだ母と仲が良く、母が死ぬ間際に言った「春人おっちょこちょいだから楓ちゃんが見ていてあげてね」という約束を今でも律儀に守り続けている。
閑話休題
支度を済ませた俺達は急いで通学路を疾走していた。また遅刻?というご近所さんに一回もした事ないよ!と告げると「誰のお陰かな!」と隣を並走する楓に怒られるのはいつもの事だ。
ただ一ついつもと違う所が有るとするならその日は一回捕まると長い横断歩道に引っ掛かったという事か。国道を横断する事になるその交差点は押しボタン式信号機で、ボタンが壊れているという致命的な故障をしている魔の時間泥棒だった。
「あーもう!春人が寝坊するからぁ!」
「ごめんって…ん?」
お冠になっている楓を宥めていると反対側の横断歩道の信号が点滅していた。もう少しで渡れるなぁとぼんやり見つめていたら小学生の女の子がこちらに慌てて走って来ている。
(異世界アニメとかだったら轢かれそうになるなぁ…)
連日連夜のアニメ漬けのせいかそんな事を考えていたら、国道の向かい側の車線を走る車が速度を落とさずウインカーを出してるのが見えた。
「あ、あれまずくないか…」
「え?」
きっとそんな筈は無いだろうけど心配になった春人は小学生に向かって駆け出していた。何故か焦燥感に駆られて体が勝手に動いていたのはきっと、ここ最近異世界というサブカルチャーに染まっていたからだろう。
「春人ッ!!」
後方から悲鳴の様な声がしたので反射的に横を向くと携帯を見ながら左折してくる運転手が目に入った。
(この子だけでも…!)
そう思い咄嗟に子供に覆いかぶさる様にして車に背を向けると、何かが肩を掴む感触がした後に激しく車と衝突したであろう衝撃が全身を突き抜けた。
ドンッという鈍い打撃音と共に景色が目紛しく変化しやがて完全に静止した。抱えていた子供は無事か、と周囲を見渡そうとするが体は言う事を聞かず、頬に熱いものが伝う感触がした。唯一動く首を捻り横を見ると大声で泣き噦る女の子と焦った様子で車を降りてくる男性
そして頭から血を流して倒れる楓の姿が目に入った
(なんで…?俺のせいで…)
混乱する情報を整理する事も許さないかの様に、春人の意識は深い闇の中に沈んでいき、二度と目覚める事はなかった。
その後交差点には女の子の泣き声と通行人の悲鳴とサイレンの音が煩く響いていた。
3作目になります
大切に書いていきたいと思ってます
宜しくお願いします




