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第3章 南のひとつ星 *6*


 カケルがフウリの料理を手伝うと言って出かけていった後、それを知ったハヤブサは、二人の邪魔をしようと追いかけたのだったが――。

「ハヤブサさま……どうされましたの?」

 ムッスリと不機嫌そうな表情を浮かべて訪ねてきた幼馴染(おさななじみ)のハヤブサに、寝台から起き上がったシャラは首を傾げた。

 しかしハヤブサはすぐには問いに答えず、寝台のそばに胡坐(あぐら)をかいて唸り声をあげる。

「うーん……オレ、よくわかんなくなってきたー」

「……何がですの?」

「オレ、カケル(アイツ)のことは最初から気に食わねぇと思ってたんだ。フウリはなんかよくわかんねぇけど、最初っからアイツのこと信用しちゃっててさ、オレの方はあしらわれてばっかでさ。オレの方がフウリのこと知ってるし、長い付き合いなのによぉ……」

 シャラはハヤブサの話に、わずかに肩を落とした。

 ハヤブサがフウリのことを以前から好きだったということにシャラが気がついたのは、ごく最近のことだった。それは、特にハヤブサのことを意識するようになって目で追っているうちに、彼の視線の先にはいつもフウリがいることを知ったからで――。

 ハヤブサがついカケルに当たってしまう嫉妬心もなんとなく理解できるようになったし、振り向いて欲しいとフウリに向けられた強い想いは、痛いほど感じていた。しかし同時に、フウリの心はハヤブサではなく、カケルの方へと向いていることにも気付いたのだ。

 つまり、ハヤブサの想いは報われない。そして同時に、フウリのことしか見えていないハヤブサに向けられたシャラの想いもまた。

「……ハヤブサさまは、フウリさまのどんなところが……その、お好きなのですか?」

「えーっと……いっつもオレがいじめられてた時に助けてくれて、刀がすげぇ強いとこと、乗馬がうまいとこと、身のこなしが綺麗なとこと、他の女と違って話題も合って喋りやすいとこ?」

 シャラはその答えに目を丸くした。

「まぁ、随分とたくさん好きなところがおありですのね……!」

 それも、シャラには真似できない、敵わないところばかりだ。しかし、シャラは締め付けられるような胸の痛みに泣きそうになるのをこらえて、必死に笑みを浮かべた。

「うーん、オレさぁ、刀は自分に向いてないって思ったから、得意な弓では誰よりも強くなって、フウリのことはオレが守ってやるんだって思ってたんだ。でもさ……ニタイ村に行った時、フウリはオレに守らせてくれなかった。一緒に大将を探しに行く相手として選んだのはアイツの方だったんだ……」

 村長を助けにいく役目だって重要で、村長との関係を知っていたからこそ任せてくれたのかもしれなかったけれど、悔しかった。男として負けた気がして。

 でも、ニタイ村から帰ってきた後から、二人の様子を見ていたら、今までとは少し違う感情が湧き上がってくるのも感じたのだ。

「なんか最近さ、時々アイツらの間に入り込めない空気が流れてると思わないか?」

「ええ……確かに、それはわたくしも少し感じておりましたわ。なんだか、二人一緒にいるのが自然なことのような気がしてくるのですよね……」

「そうそう、それがまた悔しいんだけどっ!」

 ハヤブサはつい先ほども、実は厨にいる二人を邪魔しに行って……親しげなその様子を見ていたら、何も言えなくなってしまったのだった。

「悔しいんだけど、フウリを守れるのはアイツなのかなって……うあーっ、オレすっげーバカみたいじゃね? この数年の努力はなんだったんだって話だよな!」

「ハヤブサさま……。あの、ハヤブサさまがすごく頑張ってらっしゃるの、わたくしは知っていますわ。全然、バカなんかではないです、すごいと思いますわ!」

 まるで告白のような言葉に、ハヤブサは弾かれたようにシャラを見つめた。途端に、今まで自分が独りごとのように話してきた内容が恥ずかしくなってくる。

「あ……ありがとな……。そういえば、シャラ、具合悪かったのにこんなくだらない話を聞いて貰っちゃって悪かったな。お前こそ、昔から頑張りすぎなところあるからさ、たまには息抜きとかしろよ?」

 それは、恋愛感情の混ざっていない言葉だったけれど、自分だけに向けられた温かな優しさを受け取ったシャラは、小さく笑みを零した。

「……はい、ありがとうございます。ハヤブサさま」

 それから、おいしい香りに誘われるようにして居間へと向かった二人は、それぞれ複雑な想いを抱えつつ、賑やかな朝餉を楽しんだのだった。


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