皇帝は偉そうなので。④
毎日更新しています。
が、体調不良もあって、今日かなり遅れております…
読んでくれる方、本当にすみません。
体調が治れば、また更新時間戻せると思います。
いつもありがとうございます!
ヴァイス帝国帝都。
数々の魔物を屠り、やっとの思いで辿り着いた。
平原の真っ只中、川の傍に築かれた巨大な都は、何故か人の出入りを感じない。
ぐるりと街を囲む城壁に備え付けられた巨大な門で、門番がぼーっと突っ立っている。
「入国証を」
門番が俺達に気が付いて姿勢を正し、提示を求めてくる。
小さな札を出しながら、グランが聞いた。
「なあ、かなりの数の魔物が飢えて襲いかかってきたんだが、何か理由があるのか?人通りも少ないようだが」
門番は顔をしかめる。
「……またその話か。お前ら冒険者だろう?ギルドで聞いてくれ」
「……また?そんなに多いのね……何が起こっているのか、貴方は知らないのかしら」
ファルーアが憂鬱げに手を頬に当てる。
門番はちょっと眉を下ろすと、頷いた。
これが男女の違いである。
「多いどころじゃない……街の奴らはもうこっちからは出ないくらいだ。通行するのは冒険者と…怪しい集団くらいだな。噂では近隣の魔物の餌になっていた魔物が激減してるらしい」
「怪しい集団?」
ファルーアが首を傾げると、門番は言い淀んだ。
「ん、うむ……悪い、それ以上はギルドで聞いてくれ。話すかはわからんが」
「……ありがとう、親切な門番さん」
俺達は、帝都へと踏み入った。
******
馬を返却し、イルヴァリエの愛馬だけを預けて、俺達はギルドに急いだ。
ここのギルドはそれなりに大きい。
全て煉瓦造りで統一された街の景観は中々洗練されている。
街の彼方此方に巨大な塔が立っていて、鐘が付いているみたいだ。
ギルドの中は……珍しい造り。
入ってすぐが依頼掲示板で、左右にずらりと並んだ板の前で冒険者が物色している。
その奥はカード持ち専用の依頼掲示板、そして、待合室のような広間で、奥に入口がひとつ。
入口の前では番号札が配布されていて、番号順に呼ばれているらしい。
「まずは宿、それから情報交換だな。……ここにはギルド長がいるといいんだが」
グランは、番号札を配るギルド員に声をかける。
細身の女性は、にこやかに応えた。
「依頼受注、依頼報告、お部屋のレンタル、パーティー募集、その他ご相談。目的はどちらでしょうか?」
「ギルド長に会いたい」
「えっ?はっ?ギルド長ですか……?」
「……」
名誉勲章を引っ張り出して見せると、彼女は驚いて、中に引っ込んだ。
「おっ、お待ちください!!」
通された部屋には8人掛けのテーブルと椅子。
俺達は思い思いに座って、少し待った。
フェンはボーザックの足元で大人しく寝そべっている。
しばらくすると、どたどたと音がして、ばーんっと扉が開く。
木で造られた扉は縁を金属の板で補強してあるが、ぎしぎしと軋んだ。
「はあ、はあ、待っていたぞ白薔薇!!」
入ってきたのは、すげーくたびれた爺ちゃんだった。
「ま、待ってた……?」
ボーザックが首を傾げると、足元のフェンが首をもたげた。
骨と皮かと思うほど細身の爺ちゃんは、はげかけた頭を思い切り振って、肩で息をする。
「お前さん達、魔力結晶の件を伝えにここにきたんだろう!?」
「えっ?…そ、そうだけど……うぉあっ!?」
ドタァーン!
詰め寄られて、あまりの気迫に椅子ごとひっくり返った。
「い、いてて……」
「大丈夫?ハルト君…」
ディティアが助け起こしてくれる。
爺ちゃんはくわっと顔をしかめ、必死に話し始めた。
******
ヴァイス帝国、帝都。
皇帝ヴァイセンと3人の息子達が、最近魔物狩りにはまっているそうだ。
武勲皇帝と呼ばれているらしい強い皇帝だから、さぞや凄まじい狩りをしてるのかと思いきや、帝都近辺の弱い魔物を狩っているらしい。
ところが、生態系が崩れる程の狩りっぷりときたら、鬼気迫るものがある。
ギルドでも何かおかしいと思い始めたところに、魔物達が飢えて襲ってくるなんて噂が蔓延し始めた。
……しかも、噂ではなく、事実だったことがわかる。
その対処に奔走している間、魔力結晶についての秘密を知るというパーティーが4国をまわる情報が届き、こんな時にと邪魔に思っていたのだが……。
「事情が変わった、これからの話は、今はどこにも洩らしてはならん」
ギルド長……なんだよな、たぶん、この爺ちゃん。
明らかに焦りを感じる忙しなさで、爺ちゃんは声を潜めて捲し立てた。
「皇帝は、近隣の魔物達を使って魔力結晶を造っている」
………!?
イルヴァリエを除く、全員が固まった。
何だって?
「いや、ちょっと待て…その魔物は…何なんだ?」
グランの声が乾いている。
爺ちゃんはまだ息を切らせながら、テーブルを叩いた。
「カーロッソと呼ばれるネズミをデカくしたような奴でな。この辺じゃ畑荒らしするくらいで、異常繁殖した時のみ討伐依頼が出るような雑魚だ」
「そんな…」
ボーザックが絞り出したような掠れた声で言う。
「……でも、魔力結晶が増やせたとして、そんなに焦っているのは何故?」
冷静に。
ファルーアが質問を投げる。
そうだ、確かに……他の人達は知らないはずだ。
魔力結晶が「血」の結晶だってこと。
人が死んだ時にレイス化させて、その血を使ってたなんてこと。
「変だからだ!皇帝とその息子が、明らかにおかしい。お前達、何か知っているんだろう!?」
また詰め寄られて、俺は困ってしまった。
知っている……俺が、俺達が知っているのは、全く違う内容だ。
「そもそも……まずは、皇帝がどう変なのか知りたいのだが…?」
イルヴァリエがそう言ってくれたことで、何とか我に返る、
「そうだな……それに、魔力結晶を造ってるって、何でわかったんだ?とりあえず、ゆっくりで良いから教えてくれ」
漸く言葉を絞り出してみると、爺ちゃんは少し落ち着きを取り戻した。
「それも…そうだな。……よし、とりあえず話そう」
俺達はテーブルを囲んで、現状を確認することになった。
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