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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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皇帝は偉そうなので。③

帝都までの道程は、順調とはいかなかった。

何故か魔物が多く、何度も戦闘になったんだ。


どの魔物も飢えてるみたいで、馬上の俺達に躊躇いなく飛び掛かってくる。


ここまで無差別となると他の冒険者達も確実に襲われているはずだ。

なんだか嫌な予感がする。


数えるのすら面倒になった頃、魔物を斬り伏せたボーザックが呻いた。


「うー。何なのこれー?多すぎない??」

五感アップと反応速度アップを常に重ねて、警戒せざるを得ない。

俺もバフに神経を尖らせていたし、同じ気持ちだ。


「これじゃ収穫もままならないだろうな」

イルヴァリエもルヴァ……なんとかから下りて、剣を片手に歩いている。

周りの畑は…そういえば農作業をしている人影が全然見当たらない。

魔物が多すぎて作業出来ないのかな?


そうこうしていると、遠くから人影がこちらに向かってくるのが見えた。

数人の…冒険者だろうか。

近付くにつれて装備がはっきりと見えてくる。


彼等は徒歩で、剣と杖…各2人ずつみたいだ。


「おーい、そっちは大丈夫-?」

こんな時に役に立つのがボーザックである。

少し離れた距離から手を振って、人懐っこい犬みたいな雰囲気をぶわあーっとまき散らした。


「かなり魔物が多いーそっちはー?」

向こうも、剣を振りながら似たような雰囲気を醸し出す奴がいるらしい。


「こっちもだよー、かなり片付けたー」


段々と距離が縮まり、顔も見えるようになる。

すると。


「あれ?お前ら……もしかしてラナンクロスト出身?」

俺は思わず話し掛けた。

見たことあるんだよな…。


リーダーらしき男は、180無いくらいのぱっちり眼イケメン。

濃い茶色の髪と眼で、白い鎧を纏っている。

ロングソードは、魔物のせいかやはり抜き放たれたままだった。

「おお、お前、同級生じゃねぇか?」

グランがぽんと手を打つ。

「おお、覚えてくれてんだ!疾風のディティア!久しぶりだなー、隣のクラスだったんだよ俺達」

「わっ、そういえば見たことある」

ディティアがぱちぱちと瞬きして、笑う。


彼等は、気さくに話してくれた。


「お前ら、白薔薇だよな!……すげーな、全員同級生だとは思わなかったよ!……っと、ひとりは…王国騎士団か?見たこと無いけど…同級生?」

「ああ、いや。……私は閃光のシュヴァリエの弟、イルヴァリエと申す」

「閃光の?……そっか、確か名付けが閃光のシュヴァリエだったよな、逆鱗のハルト?」

「うぐっ……お、俺的には不本意なんだけどな」

「兄上からの2つ名に不本意などと……」

「ちょっと黙りなさい、イルヴァリエ?」

「はっ、ファルーア殿」

すっかりファルーアに従うようになったらしい。

「俺達のこと随分知ってるんだねー」

イルヴァリエをスルーしたボーザックが続けると、4人は笑った。

「当たり前だろ!疾風を颯爽とパーティーに加えたと思ったら、飛龍タイラント討伐だぜ?養成学校でも教科書に書き加えられるとかって話だぞ」

「えっ、俺達教科書に載っちゃうの?」

「ははっ、それくらいのことしたんだから当たり前だろ」


……男の名はトール。

同じ街出身で、養成学校卒業後は俺達と同様、同級生でパーティーを組んで冒険者としてやってきたようだ。


残りの3人も気さくだった。

メイジの男女と、細身のレイピアの女性。


彼等は丁度帝都からカタルーペを目指しているらしく、この先でも魔物がかなりの頻度で襲ってくると言う。

少し情報交換したけど、原因はよくわからなかった。


しばらく話したところで、トールはディティアを見る。


「えっと、あのさ……疾風、大変だったんだよな。実は俺、ナレルとは幼馴染みなんだ」

「……!!」

トールの一言に、ディティアが目を見開いた。


……ナレル。

ディティアのパーティー、リンドールの弓使いだ。

金髪のショートカットに細身の女性だったのは覚えている。


「あの、私…」


どうしていいのかわからないんだろう。

ディティアが、唇を噛み締める。


…もしトールがディティアを責めたなら、俺は怒ってたと思う。

でも、彼の表情は穏やかで、笑みを浮かべてすらいた。


「いやいや、責めてんじゃないんだ。俺さ、ずっと、もし疾風に会ったら言いたかったんだよ」

「は、はい…」


「ナレル、後悔してないと思うぞ。あんたと居られて」


ディティアが、息を呑んだ。

その双眸は、呆然とトールを見つめて、噛み締めていた唇はぽかんと開いていた。


「トールね、ずっと言いたいって言ってたのよ」

一緒にいるメイジが微笑む。


ファルーアが、ぽんとディティアの肩を叩いた。


******


思わぬ出会いがあったものの、ずっと話してるわけにもいかなくて。

俺達はまたいつかと約束して別れた。


その時に、彼等がヴァイス帝国皇帝ヴァイセンについて教えてくれる。


曰く、近々帝都で何かの催し物があるらしく、そこに皇帝も出席するそうだ。


想いを馳せているディティアの話は、後で聞いてあげよう。


俺はそう決めて、まずは帝都への道を急ぐことにする。

魔物が飢えている理由も、調べられればいいな…。



本日分の投稿です!


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