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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅢ アイシャ

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847/847

発症を促すのは①

******


〈爆呪〉に聞いた薬の保管室は――俺たち〔白薔薇〕にとって思い入れのある部屋だった。


 あれは災厄の黒龍アドラノードが目覚め、炎の華を咲かせて倒したあとのこと。


 魔力を消費して意識を失ったファルーアが寝かされていた……その部屋だ。


 部屋の周辺ならば勝手知ったる場所でもあって、迷うことはないはず。


 グランもそう思ったのか、張り詰めた冷静な声音で言った。


「〈爆呪〉、〈爆突〉。(わり)ぃがデミーグは任せる。その後は〈閃光のシュヴァリエ〉のところに向かってくれねぇか。伝説の〈爆〉に頼むってぇのはどうかと思うが――現状の報告をしてもらいたい」


「構いませんよ」

「いいぜ。敵がいたら倒しちまうからな? お前らも早く片付けろよ?」


 二人はすんなり受け入れて、アイザックに向けて「任せろ」とばかりに頷いてくれる。


 グランもアイザックを行かせてやれないことに思うところがあるんだろう。


「……すまねぇな〈祝福〉」


 と肩越しに小さく顎を引いた。


 アイザックはそんなグランに笑ってみせ、トゲトゲしい厳つい杖で床を鳴らす。


「今更だろ。ここでお前ら放ってシュヴァリエのところに戻ってみろ。〔グロリアス〕をクビにされちまうさ。それに城内なら俺がいれば迷わないぜ」


「あー、それ嬉しいかもー」 


 応えたボーザックに思わず笑って、俺はアイザックの肩にガツンと拳を入れた。


「頼りにしてるぞアイザック!」


「いや……おい〈逆鱗〉。普通に痛い……お前らいつもこの力で(たわむ)れてんのか? ヒーラーとしては許容できない範囲だぞ。まったく……俺は〔白薔薇〕のノリには付き合わないからな」


「え、えぇ……?」


 いやいや、ここは互いの絆とかそういうのを強固にする場面だろ?


 思い切り顔を顰めるとファルーアが呆れた顔をした。


「〔白薔薇〕のノリじゃないわ。少なくとも私とティアは違うわよ?」


「ははは。俺をあっち側と一緒にするな〈光炎〉」


 ファルーアがスパッと切り捨てると〈爆風〉が笑う。


 そこで白煙の中からデミーグを引っ張り出してきた〈爆突〉が話をぶった斬った。


「とりあえず俺たちは行っていいよな? よぉッし、行くぞ〈爆呪〉! デミーグだったな、お前もだ!」


「私は妨害しかしませんからね、手荒なことは勝手にやってください」


「わ、わかった、かな」


 俺は「あはは……」とこぼすディティアに肩を竦めてみせ、〈爆呪〉と〈爆突〉に『五感アップ』『魔力感知』『精神安定』を重ね、デミーグには『精神安定』だけをかけて見送る。


 時折の爆音は『五感アップ』で大音量として鼓膜を震わせるが、気配を探るのを優先させることにしたんだ。


 それを切っ掛けに、皆は自然と気合を入れたらしい。


 グランの空気がいつもと違うから、俺もふーっと息を吐いて腹に力を込める。


 絶対にアルミラさんを助けよう。


「いくぞ。いい加減に決着をつけねぇとな」


****** 


 城の奥まった場所に向かっているからか、耳が慣れたからか。爆音は少し小さくなったような気がする。


 自分たちのバフも掛け直し細い廊下を駆け抜けて進むあいだ、俺は考えを巡らせていた。


 アルミラさんがセウォルと接近したであろう事態は今回が初めてじゃない。


 鍛冶士の町ニブルカルブでアルミラさんがタトアルを問い詰めていた……そのときもセウォルは自分に従ずる者――つまり眷属にした冒険者たちを操ったからだ。


 そのとき彼女に問題はなかったはず。


 そもそも彼女は最初昏睡状態に陥ったわけで、操られてしまうほど強くなかった――つまり古代の魔力をそこまで持っていなかったことになる。


 だから、前回鍛冶士の町で操られなかったのは何故なのか、いまの状況になってアルミラさんが操られたのは何故なのか、俺にはわからなかった。


 デミーグは『再発』って言ったよな。


 何かがアルミラさんの血を――セウォルが操れる古代の魔力を増幅させたのかも。でも、何が?


 考えても仕方ないけれど言い知れない重石のような不安が胸の奥にずんと鎮座していて落ち着かない。


 俺が大きく息を吐き出したとき、ディティアが双剣を構えた。


「グランさん。アルミラさんがいたら捕まえて気絶させればいいんですよね?」


「ああ、頼む」 


 応えたグランは……少しだけ間を置いて付け足した。


「セウォルは俺がぶん殴る。援護してくれ」


「ええ勿論よ。ついでに私も殴ろうかしら」


「いいね。俺もそうさせてもらおうかなー」


「ははは。楽しめ若者。俺が押さえてやろう」


 ファルーアが、ボーザックが、〈爆風〉が応えると……アイザックが苦笑する。


「あー、その、なんだ。程々にな……?」


 その時には俺にもはっきり気配が感じられていた。


 薬を保管しているはずの部屋。そこに…………四つだ。


 ……ん? 四つ?


「……アルミラさんとセウォルでふたつとして……あとは?」


 俺が聞くとグランは一度瞼をゆるりと下ろし、ぱっと開いた。


「確信があるわけじゃねぇんだが――両親だろうよ。俺と姉貴(・・・・)のな」


皆様おはようございます。

寒くなってきたので暖かくしてご自愛をばー!

何卒よろしくお願いします!

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