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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅢ アイシャ

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842/847

決別を選ぶのは②

******


「なんだあれ……煙? いや……まさか、そんな……嘘だろ」


 王都の空を覆う黒い靄が龍の群れだとわかった瞬間、俺は心底戦慄した。


 夜明け前の薄暗い時間帯だったのもあって視認しづらいけれど、『五感アップ』は広げてあったから皆にも見えているはずだ。


 一頭の大きさはそれほどでもない。飛龍タイラントに比べたら天と地ほどの差がある。


 俺たち人間よりは巨大で屈強だけど倒せないわけじゃない。それもわかってる。


 だけど――なんだよ、あの数は。湿地のときよりずっと多いぞ。


 アルミラさんを眠らせたセウォル、ディティアに噛み付いたシェイディが使役していた龍のような蛇のような魔物とは訳が違う。


 指先に力が入らないほど身が竦んだけれど、俺は歯を食い縛って己を奮い立たせることで堪える。


 怯むな、臆するな! 俺たちならやれる、絶対に!


「クソッ間に合わなかったか……! 王都が堕ちてない(・・・・・)ことを祈れ〈逆鱗〉!」


 そんな俺の隣で吐き捨てた〈爆突のラウンダ〉は、風将軍(ヤールウィンド)の背から身を乗り出し前方を見据えた。


 なるようにしかならないと言っていたわりに〈爆突〉も気を揉んでいたんだな。


 俺はしっかりと頷いて〈爆突〉と同じように身を乗り出す。


 王都が陥落していたら――そう考えるだけで心臓がバクバクするけど、俺たちがやることは変わらない。


 始祖人を止めること。それが目的……やるべきことだ。


 それなら少しでも情報を集めて少しでも早く動かないと。


 俺は唸る風のなかで目を凝らした。


「湿地で戦った龍だよな、あれが全部」


「ああ、間違いないぜ。あの龍が操られた奴等を運んでいたなら猶予はないと思え。すぐ援護に――」


 続けて言いかけた〈爆突〉は、前を見たままギュッと眉をひそめる。


「〈逆鱗〉。お前、あれが見えるか?」


「え?」


「あれだ。城の上」


 言われるがまま目線を動かした俺は気付く。


 蒼白い光を全体に灯した巨大ななにか(・・・)。無骨な鉄塊を適当に積み上げた(いびつ)な――そう、尖塔のような。それが城のバルコニーに聳えている。


 あんなの前はなかったぞ。なんだ?


 すると〈爆突〉が弾かれたように肩を跳ねさせた。


「……ッ! おい怪鳥! 城に近づくな! すぐ仲間も止めろ!」


 彼の声と同時に体中のうぶ毛が逆立つ感覚が頭の先から足の先へと伝播して、俺は四肢を強張らせた。


 これ……魔法の気配か⁉


『クルルルッ!』


 俺たちの乗る風将軍(ヤールウィンド)も言われるがまま警戒音らしき鳴き声を発し――。




 ――空が、斬り裂かれた。




 塔らしきものに灯っていた蒼白い光が放たれ、屈折し、枝分かれしながら空を駆け抜けたのだ。


 ゴゴゴオォッ……ゴガアアァァンッ!


 瞬き――文字通り一瞬で光は溶け消えたけれど、僅かに遅れて腹の底をズンと震わせるほどの轟音が響き渡り、肌がビリビリする。


 膨れ上がって奔る光は強烈な眩しさで直視できなかったけど――はっきり認識できたんだ。


「かッ……雷の、魔法……ッ⁉」


 放たれたのは稲妻。例えるなら光の矢。


 夜闇を斬り裂き、真っ昼間に迫るほどの白さを纏った凄まじい威力の矢だ。


 空を埋めていた黒い龍の一部が煙を噴き上げ落下していく様が闇のなかでもよくわかる。


「あれがお前らの言ってた魔力結晶の兵器か?」

 

「え、あ……ああ!」


 そこで〈爆突〉に言われた俺は我に返り、ごくりと生唾を呑み込んで眉を寄せた。


 そうか、そうだった。


 隣の大陸(トールシャ)のアルヴィア帝国が有する血結晶を動力とした武器。


 ラナンクロスト王都にはそれが『運ばれている』はずなのだ。


「だとしたら……」


 王都は堕ちてない。戦っている。


「――このままできるだけ低空飛行でまずはギルドに向かおう! そこからは徒歩で城に向かうことになりそうだ。皆にも伝える! 『知識付与』ッ!」


 俺はすぐにバフを広げて〈爆突〉に頷いてみせた。

 


こんばんは!

本日もよろしくお願いします。

少し短めですがこのあとの切りが悪く、一度こちらで投稿です。

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