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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅢ アイシャ

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835/847

実験が示すのは④

******


 石板と資料を皆のところに持ち帰った頃には、日は既に傾いていた。


 町中を駆け回り、十数匹集まってきた羽虫はすべて〈爆風〉によって狩られたあとだ。


 ――これで全部と思いたい。


 長く伸びているはずの影は背の高い草にすっかり遮られ、俺たちが身を潜める場所は少し肌寒かった。


 ディティアたちはまだ合流してないし町に始祖人は見当たらなかったので、ギルドに移動しようと提案する。


「その前に、まずはこいつで状況を王都に報せるぞ」


 言いながら〈爆風〉が差し出したのは伝達龍だ。


 俺と〈爆風〉は羽虫を集めながらギルドに寄り、残っていたこいつを保護したのである。


 このときにギルドで寝泊まりできそうなことも確認済みってわけ。


「こいつは王都に飛べるのか? 伝達できる場所には限りがあるはずだぞ」


 アイザックが聞いてきたので、俺は頷いてみせた。


「王都からの手紙を持ってたんだ。内容は近況を心配するものだった。皆が昏睡状態になってから来たんだろうな」


「それなら間違いないわね」


 ファルーアはそう言うと立ち上がって土を払う。


「アイザックから送って頂戴。王都に報せることができるなら、ティアたちを待つあいだにちゃんと食事を摂るべきよ。資料もすぐ確認しましょう」


「そうだな。アイザック、すぐ書けるか?」


 グランが問い掛けると、既にアイザックは自分の荷物から紙とペンを取り出していた。


「歩きながらでも書ける。風将軍(ヤールウィンド)も一緒だろ? さっさと行こう。今後のことも再度考えないとな」


******


 ギルドは広場に面していたので、風将軍(ヤールウィンド)たちもそこで休んでもらう。


 俺たちはそれぞれ役割を分担して行動に移った。


 まず資料を読むのは〈爆風〉とアイザック、ファルーア。


 俺と〈爆突〉で周辺の見張り。


 グランが飯の準備だ。


 ちなみに、見張りついでに外で昏睡状態になっているひとを屋内に移動させるのも忘れない。


〈爆風〉と羽虫を集めているときも結構な数を移動させたし、これで終わりだといいんだけど。


 そうしてしばらく経った頃、俺は暗くなった空を振り仰ぐ。


 こっちに向かってくる気配を感じたからだ。


 ああ――よかった。


 胸がギュッとして安堵の吐息がこぼれたとき、自分がかなり張り詰めた状態だったんだと気付く。


 広場で休む緑色の怪鳥たちが『クルックルッ』と合図を送っているのに交ざり、俺は大きく手を振った。


 やがて空を滑るように着地した怪鳥の背から、ふたりと一匹がひらりと降りてくる。


「ハルト君! 町はどうなってるの⁉」


 開口一番そう言って、ディティアが不安そうにあたりを見回す。


 薄暗い町に音はなく、家畜たちもいまは静かだ。


 俺は軽く首を振って答えた。


「昏睡状態のひとしか残ってなかった」


「じゃあ始祖人も操られたひともいなかったってことー? 全然戦闘の痕がないけど……どういう状況?」


 ボーザックが困惑した視線を寄越す。


 ふたりの様子からするに、ギルドとはうまく連絡が取れたんだろう。


 そろそろ夕飯もできる頃合いだ。


「詳しい話はギルドの中でしよう。皆も待ってるし」


 俺がギルドのほうに向き直ると黙って見守ってくれていた〈爆突〉がひらりと右手を振った。


「俺は見張りをしとくぜ。銀狼、お前も一緒にどうだ? 特製の乾し肉があるぞー」


『がう!』


 おとなしく座っていたフェンが弾むような足取りで立ち上がり、大きな尾がパタパタ揺れる。


〈爆突〉も犬っぽいし気が合うのかな――なんて失礼なことを思ったけど、とりあえずこっちは任せてよさそうだ。


 念のためにと『精神安定』をひとりと一匹に投げ、俺たちはギルドへと入った。


「ティア! おかえりなさい。怪我はないかしら?」


「ひゃあ! ただいまファルーア。大丈夫だよ!」


「わあお、俺の心配はー?」


 途端にディティアに飛び付いたのはファルーアで、ボーザックが大袈裟に肩を竦めてアイザックや〈爆風〉に片手を挙げてみせる。


 すぐにグランが鍋を持ってやってきて、俺たちはギルドの机を囲み現状の報告へと移った。


 ちなみに夕飯は肉。煮込んだ肉だ。


 なにせこの町は畜産業をやっているわけで、肉の蓄えがしっかりあったのである。


 おっと、当然ジールはちゃんと払ったけどな。


 新鮮な乳もアイザックがほいほいと搾ってきてくれて、それはスープに仕立てたらしい。


 めちゃくちゃ美味い。温まるし。


「私たちは問題なくギルドに報告できました。冒険者たちが何人か村に駐留していたので彼らに任せてあります。ひとりバフが使えるメイジがいて……」


「え? バフ? ……ッ痛」


 ディティアの手短な報告に食い付いた俺をファルーアの杖が襲う。


 おとなしく両手を上げるとディティアが「とにかく、上手く進めてくれるみたいです。私たちの報告はこれでおしまい!」とはにかんだ。


 可愛いなぁ……。


 羽虫ばっかり相手にしていたから、小動物感に癒やされるというものである。


 とはいえ、研究員がひとり亡くなっている。操られたひとたちも始祖人も見当たらないっていうのも決して楽観視できない。


「それじゃ、こちらの報告よ」


 続いてファルーアがこの町の状況と羽虫の資料について説明し始めた。


本年もよろしくお願いします!

今年はお仕事でよい報告ができるかなと思いつつ、

ハルトももっと書いていきたいです。

いつもありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
おめでとーございます!! 今年もよろしくお願いいたしますm(_ _)m ディティア、羽虫の説明聞いてぞわそわってなってないといいんですが。 虫、大っ嫌いだもんね・・・ 頑張れディティア!! ハルトくん…
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